世界銀行が進めている取組み
世界銀行は、動物およびヒトの保健制度強化、ならびに両者の関係強化により、パンデミックを防止できるよう各国を支援しています。世界銀行はIDA第19次増資(IDA19)で、少なくとも25カ国がパンデミック準備計画を実施できるよう支援すると明言するなど、パンデミック準備態勢を含む危機への強靭性強化を優先対象としました。またIDA第18次増資(IDA18)では、25カ国による準備計画策定を支援すると確約しましたが、これまでに目標を上回る46カ国が国家健康危機行動計画(NAPHS)または類似のパンデミック準備計画を策定済みです。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、公衆衛生上の深刻な課題となり、世界全体での協調行動と透明性の維持が求められています。世界銀行は現在、疾病監視、食の安全、危機対応、国際社会として過去に類似の危機に対応した経験の共有、更には今回の感染拡大が世界経済に与える影響の分析を集中的に支援しています。中期的には、公衆衛生上の緊急事態への強靭性強化、今回の緊急事態からの教訓確保、得られた教訓の世界各国との共有に中心に取り組んでいきます。
こうした世界規模の混乱で最も大きな打撃を被るのは、往々にして所得水準の特に低い国や特に脆弱な人々です。世界銀行グループは、各国が今回の公衆衛生上の世界的緊急事態を乗り越えられるよう国際社会による支援を加速するため、パートナー機関や加盟国と緊密に調整を進めています。
世界銀行によるCOVID-19関連の各国への支援についてはこちらをご覧ください。
地域疾病サーベイランス強化(REDISSE)
2014年と2015年に西アフリカで発生したエボラ出血熱による壊滅的な危機を受け、世界銀行は地域レベルで準備態勢を強化するため、地域疾病サーベイランス強化(REDISSE)プログラムに対するIDA支援を拡大しました。同イニシアティブは、西部・中部アフリカの16カ国における総合的な疾病の管理・対応に向けて国・地域レベルでセクター横断的な機能強化を図る一連のプロジェクトで構成されています。
同プログラムには以下の2つの目標があります。
(i) 疾病の監視・対応のためのセクターや国境を越えた効果的な協力を妨げる、人と動物の保健制度全体の弱点を解消する
(ii) 条件を満たした緊急事態の場合、当該の事態に迅速かつ効果的な対応を行う
REDISSEの資金調達と援助受け入れ国等の詳細情報は成果のセクションをご覧ください。
薬物耐性
抗菌薬とは、抗生物質など、疾病を引き起こす病原菌を殺すまたは抑制する薬剤のことです。薬剤耐性(AMR)とは、病原菌が変異または適応して抗菌薬が効かなくなることで、そうなると抗菌薬による治療の効力が失われます。AMRの発現は、抗生物質など抗菌薬のヒトや動物への過剰投与や誤用によって劇的に加速されます。
世界銀行は、2019年に発表した「スーパー耐性菌の死滅に向けた取組み」の中で、AMRにより既に年間70万人が死亡していると指摘しました。対策を取らないでいると、AMRによる犠牲者の数はさらに増加して、2050年までに年間1,000万人に達しかねません。低・中所得国や、脆弱・紛争・暴力の影響下にある地域に暮らす最貧困層が特に危険な状態にあります。
AMRに歯止めをかけなければ、2030年を期限とする持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた前進が阻まれ、各国に打撃を与え、人的資源に悪影響を及ぼすことになるでしょう。各国がAMRの増加を食い止めるための行動を起こさない場合、経済への影響は2030年以降、年間1兆ドル以上に膨らむとみられています。
そうした事態を防ぐために、世界銀行は途上国における保健分野の投資にAMR対策を含めようとしています。その 一例として、先に述べたREDISSEプログラムが、公衆衛生と獣医学研究を進める機関の機能を高め協力態勢の強化を図っています。また、東アフリカ公衆衛生研究機関ネットワーキング・プロジェクトが、ブルンジ、ケニア、ルワンダ、タンザニア、ウガンダで薬剤耐性結核菌対策を進めています。3つ目の例であるサヘル地域牧畜支援プロジェクトにも、AMRの封じ込め対策が含まれています。
アフリカ疾病対策・予防センターによる域内投資資金調達プロジェクト
世界銀行が進める「アフリカ疾病対策・予防センターによる域内投資資金調達プロジェクト」(2億5,000万ドル)は、エチオピア、ザンビア、アフリカ連合(AU)によるエピデミック対策と公衆衛生上の最優先課題の促進を支援しています。同プロジェクトは、既存の公衆衛生機関の協力と国の保健当局の機能集約に加え、研究所設置、国境を越えた疾病監視ネットワークや緊急対応メカニズムの構築等、地域や大陸規模で疾病を管理するため、公衆衛生分野の整備を進めていきます。
同プロジェクトの活動と目標は、アフリカ疾病対策・予防センターの5つの戦略的ピラー、ならびに2063年までにアフリカ大陸におけるすべての感染症を抑え込むというAUのアジェンダ2063に沿ったものです。