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「物流と競争2016:グローバル経済の中の貿易・物流」

2016年6月28日


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Walvis Bay on the Atlantic Ocean is the main port in Namibia and home to many fishing companies, fishing is one of the main contributors to the Namibian economy. Cadilu is a Spanish owned company and has its processing factory on the waterside in Walvis Bay. Dock side, a fishing ship is loaded with clean containers for its next trip. 

Photo: © John Hogg/World Bank

要点
  • 「物流と競争」の2016年版は、物流をめぐる各国の効率性をランク付けし、様々な基準(ベンチマーク)を提供している。今回は、ドイツが2年連続でトップを占め、シリアが最下位であった。上位を占める国々は所得水準が高く、下位を占める国々は所得水準が低いという傾向が見られる。
  • その国の物流の効率性は、インフラ、規制、政策、地理的条件、政治経済など多くの要因により左右される。
  • 同報告書に掲載される「物流パフォーマンス指標(LPI)」は、国際サプライチェーンの効率性を測定している。世界各地の1,000を超える物流事業者を対象とするアンケート調査から得られた多面的な評価結果に基づき、世界160カ国をランク付けしている。

ワシントン、2016年6月28日―あなたは知っていますか?世界の物流事業者の質に関する基準に照らすと、ドイツ向け輸入品の基準合格率は94%であるのに対し、ボリビア向け輸入品の合格率はわずか40%であることを。また、グルジア向け輸入品の通関業務は一元化しているのに対し、マダガスカル向け輸入品は10以上の手続きを経る必要があることを。

こうした問題は、「物流」という幅広いカテゴリの中で捉えられています。物流は、国境をまたいだ物資の移動方法や手続きのことですが、その国の物流の効率性を定義するには、インフラ、通関手続き、規制、地理的特性、さらには政治経済といった課題が全て関係します。

国際貿易は物流なくしては成り立たず、各国が輸出入品をいかに効率的に扱うかが、世界経済の中でいかに成長し競争していくかの決め手となります。物流の効率性の高い国は、信頼のおけるサプライチェーンを通じて、企業を内外の市場と容易に結びつけることができます。他方で効率性の低い国は、国際貿易とグローバル・サプライチェーンで時間と費用の両面でコスト高となり、国際的競争力が大幅に損なわれかねないのです。

「物流と貿易は切っても切れない関係にあります。物流の未整備は貿易の成果に影響します。」と、国際貨物輸送業者協会連合会(FIATA)のHuxiang Zhao会長は指摘しています。 「物流の効率性は、サプライチェーン全体で様々な要因をいかに統合するかにかかっています。」

一つの国の物流には多くの要因が関わり合っており、各国間の比較対照は容易いことではありません。世界銀行では2年に一度、「物流と競争2016:グローバル経済の中の貿易・物流(仮題)」を発表し、複雑な国際貿易に関する情報を網羅した「物流パフォーマンス指標(LPI)」を掲載しています。LPIは、税関の効率性、インフラの質、輸送の適時性といった、物流パフォーマンスにかかる重要な基準に着目して各国をランク付けしたものですが、今年はドイツが2年連続でトップとなった一方、シリアが最下位でした。

「以前から我々はLPIを通じて、物流が所得水準を問わず全ての国に如何に重要であるかを政策担当者に示してきました。」と、同報告書の共同執筆者であり世界銀行グループの貿易・競争力担当リードスペシャリストであるジャン-フランソワ・アーヴィスは述べています。「今日、物流には、グリーンな物流(環境にやさしい物流サービス)や、雇用、都市流通といった分野も組み込まれており、その内容はいっそう複雑さを増しています。」

LPIは、二つの情報に基づいてランク付けを行っています。一つは、物流事業者(例:国際貨物輸送業者や運送事業者)を対象とした各国(自国と貿易相手国)における経験についての質問形式の国際アンケート調査、もう一つは、時間、コスト、輸出入品に関する諸手続きなど、サプライチェーンの主要な要素の効率性に関する定量的データです。

「LPIは、政策担当者が、物資の移動やグローバル・サプライチェーンとの連結といった面で、自国の効率性を他国と比較する際に役立ちます。」と、世界銀行グループ貿易・競争力グローバル・プラクティスのホセ・グイエルメ・レイス貿易担当プラクティス・マネージャーは述べています。「LPIは政策担当者に、改善すべき分野と、円滑なサプライチェーンの重要性を示唆するものです。」


" 物流パフォーマンス指標は、政策担当者が、物資の移動やグローバル・サプライチェーンとの連結といった面で、自国の効率性を他国と比較する際に役立つ。 "
José Guilherme Reis

世界銀行グループ貿易・競争力グローバル・プラクティスホセ・グイエルメ・レイス貿易担当プラクティス・マネージャー


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報告書の概要:

  • 物流の効率性の高い国は2010年以降、比較的安定して推移: 上位を占める15カ国は、2010年以降ほとんど入れ替えがなく、ドイツ、オランダ、シンガポールなど、サプライチェーン業界の大手プレイヤーで占められている。2016年版では、ドイツが1位を占め、シリアが最下位であった。下位を占める国々はいずれも、紛争や自然災害、政治不安に見舞われたか、あるいは地理的制約を有する脆弱国である。

  • 先進国と途上国の間になおも残る「物流格差」: 高所得国のLPIスコアは平均して低所得国より45%高い。前回の報告書では下位の国々の効率性が改善したかに見えたが、この傾向は2016年に逆転し、上位国と下位を占める国の格差が拡大した。

  • サプライチェーンの信頼性確保が引き続き、貿易・物流事業者間の主要関心事: LPIの上位30カ国では、これら上位国の質の基準に見合わなかった出荷の割合は10件につきわずか1件であったが、下位30カ国では、その3倍に近い出荷件数が質の基準に見合っていない。

  • 所得水準だけが各国の効率性の決定要因ではない: 改革を進め、良い慣行や政策を実施しようという積極的な姿勢があれば、国境を超えた物資の円滑な移動に直接的な影響を及ぼすことができる。例えば、東アフリカ連合(EAC)で税関業務の一本化を進めた国(Single Customs Territory)では、域内の貿易回廊における通関所要時間の大幅削減が実現した。政策変更がサプライチェーンの効率性に大きなプラスの影響を与えた好例と言える。 

  • インフラは多くの途上国にとって引き続き、基本的輸送網の整備や主要市場へのアクセス確保に重要な役割を果たす: アンケート調査では、インフラが全ての所得水準の国で改善しているという回答が主流を占めた。しかし、LIPスコアで下位を占める国々では、上位国に比べ改善のペースははるかに遅い。さらに物流事業者は、所得水準に関わらず、情報通信技術(ICT)関連のインフラ整備に最も満足している一方、鉄道のインフラ整備には大きな不満を感じていると回答している。 

  •  国境での物流管理改革は深刻な課題: 下位を占める国々は依然として、書類処理に手間取り、対応時間に大きな遅れを出している。こうした傾向は、内陸国のような地理的制約の多い低所得国で特に顕著である。

「LPIは、意識の向上に重要な役割を果たすだけでなく、政策対話のきっかけとなる場合が多い」と、同報告書の共同執筆者であるダニエル・サスラブスキー貿易担当専門家は述べている。「LPIや他のツールを提供することにより世界銀行は、引き続き変貌する改革プロセスへの支援を行っていく。」

 



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