イベント
建築規制を活用した防災 災害に強い都市づくり
第8回防災セミナー「災害に強い都市づくり:建築規制を活用した防災」
2016年3月17日東京


防災セミナーシリーズ:世界銀行東京事務所、世界銀行東京防災ハブ 共催

地震や津波といった自然災害は建物の倒壊を引き起こし、人的・経済的被害を甚大にしています。特に低・中所得国では、いまだ建築基準法および建築規制が十分に整備されていないために、このようなリスクが高くなっていると考えられます。

日本をはじめとする高所得国は、過去100年にわたり、災害復興の度に建築基準法や法律の実施制度を改善し、災害に強い建築環境を整備しています。特に日本は、1960-1980年代の高度経済成長期の住宅需要の増加に伴い、建築基準法の改定と遵守メカニズムを大きく改善し、建物の構造性能や安全性を向上させ、強靭な都市づくりを進めてきました。その結果、日本は世界の中でも最も堅固な建築規制の仕組みを確立した国の一つとなっています。

世界銀行、防災グローバル・ファシリティ (GFDRR) は、堅固かつ効果的な建築規制がもたらす効果について検証した報告書「建築規制を活用した防災:災害に強い都市づくり」を今年4月に発表します。本発表に先駆け、世界銀行東京事務所東京防災ハブは主執筆者トーマス・ムーリエを迎え、建築規制が防災に果たした役割と、途上国における災害リスク低減に向けた提言をご説明するセミナーを開催いたします。また、東京防災ハブが実施予定の、日本の取り組みから途上国への教訓をとりまとめるプロジェクトについても紹介します。

 

プログラム

開会挨拶

塚越 保祐
世界銀行グループ 駐日特別代表

講演

トーマス・ムーリエ
世界銀行 防災グローバル・ファシリティ 上級基準開発専門官
「建築規制を活用した防災:災害に強い都市づくり」PDF

パネリスト

亀村 幸泰
国土交通省 住宅局建築指導課 建築国際関係分析官
「日本における耐震建築物に関する歴史的手法」PDF

小林 正宏
住宅金融支援機構 調査部 海外調査担当部長・経営企画部 国際対応担当部長
「資金支援を通した地震に強い住宅の質の向上:日本の経験から学ぶ」PDF

北山 恒
横浜国立大学大学院 教授、Y-GSA (Yokohama Graduate School of Architecture) 校長
「脆弱市街地研究」PDF

閉会挨拶

土谷 晃浩
財務省 国際局 開発機関課長

モデレーター

金田 恵子
世界銀行 防災グローバル・ファシリティ 東京防災ハブ 防災専門官

(敬称略)

❖ このセミナーは公開用に録画されます。

スピーカー紹介

セミナー報告

 

Image塚越 保祐
世界銀行グループ 駐日特別代表

2013年8月現職に就任。日本の政府、CSO、企業、研究機関等と世界銀行との協力関係強化を使命とする。就任以来、世界銀行東京事務所内に設置された東京防災ハブの設立にも参画。現職就任前、2008-2011年には米州開発銀行理事として同行の融資案件の審議と政策決定に関与。1988-1991年にはアフリカ開発銀行理事としてコートジボワールに駐在。また、1994-1998年には国際金融情報センター・ワシントン事務所長として米国の政策決定過程等につき調査。1980年4月大蔵省 (現:財務省) に入省。

 

Imageトーマス・ムーリエ
世界銀行 防災グローバル・ファシリティ 上級基準開発専門官

政策および規制改革の専門家。20年にわたり、各国政府や民間セクターに対し、規制遵守によるコスト削減、健康と安全水準の向上、規制のベストプラクティスの推進、行政の透明性や説明責任の質の向上を目指したプログラムを通し、組織能力強化のための助言を行っている。2015年、「建築規制を活用した防災」報告書を共同で執筆。世界銀行、防災グローバル・ファシリティ (GFDRR) において、世界規模での新たなプログラム的アプローチを開始。この「建築規制を活用した防災のための取り組み」は、災害リスク軽減のための機能的な建築規制や統治体制を整え、協調的国際投資を支援するものである。フランス出身。パリのソルボンヌ-アサス大学大学院にて商法および国際法修士号取得。

 

Image亀村 幸泰
国土交通省 住宅局 建築指導課 建築国際関係分析官

建築・建設分野の専門家として知られ、日本および世界各地の建築の調査、法律の施行を支援する建築基準の策定、建て替え改修、復興等多方面の活動、ならびに多くのプロジェクト実施の実績を持つ。東北大学大学院工学研究科卒。1981年、建設省 (現:国土交通省) 入省。2002年、国土交通省国土技術政策総合研究所住宅研究部住宅計画研究室長として就任。2004年より約3年間、国土技術研究センターにおける研究第一部長を務める。2007年、国土交通省住宅局市街地建築課高度利用調整官、ならびにインドネシア国公共事業省JICA派遣長期専門家として「建築物耐震性向上のための建築行政執行能力向上プロジェクト」、「中部ジャワ復興支援とJICA耐震性向上プロジェクト」等、多数のプロジェクトを取りまとめる。2011年、日本建築センター国際部長兼認証部長に就任。2012年、復興庁岩手復興局復興推進官に就任、岩手県沿岸地域における震災後復興事業を推進。2015年より現職に就任。

 

Image小林 正宏
住宅金融支援機構 調査部海外調査担当部長 (併任) 経営企画部国際対応担当部長

2014年4月より現職に就任。現職就任前は、同機構 住宅総合調査室主席研究員として海外市場を担当する。サブプライム問題、GSE問題、欧州のカバードボンド市場、欧米の金融規制動向や、住宅金融市場の専門家として知られる。1988年 東京大学法学部卒、住宅金融公庫入庫。1996年から1999年にかけて海外経済協力基金 (現:国際協力機構 JICA) に出向、マニラ事務所に駐在。その後、2000年まで国際協力銀行フィリピン・大洋州担当副参事役を務める。2002年、米国連邦抵当公社 (ファニーメイ) の特別研修生として派遣され、米国における住宅ローン証券化の実務を修得。住宅金融支援機構での業務の他、アジア・太平洋住宅金融連合の諮問委員会のメンバーとして、米国やアジア・大洋州地域における豊富な経験を活かして活躍。また、中央大学経済研究所客員研究員、早稲田大学大学院ファイナンス研究科非常勤講師を務める。公益社団法人日本不動産学会正会員。2012年、日本不動産学会賞 (論説賞) 受賞。著書に『通貨の品格』(中央公論新社、2012年)、『通貨で読み解く世界経済』(共著、中央公論新社、2010年) など9冊。うち2冊は海外で訳書が出版されている。

 

Image北山 恒
横浜国立大学大学院 教授 / Y-GSA (Yokohama Graduate School of Architecture) 校長

横浜国立大学大学院教授、Y-GSA (Yokohama Graduate School of Architecture) 校長。日本を代表する建築家の一人として知られる北山教授は、現在、横浜市都心臨海部・インナーハーバー整備構想や、横浜駅周辺地区大改造計画に参画している。1978年、大学院在学中に建築ユニット「ワークショップ」設立・共同主宰、1995年、「architecture WORKSHOP」 設立・主宰。数多くの大学で講師を務め、また日本建築学会、国際交流基金ヴェネチアビエンナーレ国際建築展他、多数の学会・コンクールの委員として活躍。横浜国立大学工学部建築学科卒業、横浜国立大学大学院工学研究科建築学修士課程修了。

 

Image土谷 晃浩
財務省 国際局 開発機関課長

 

 

 

Image金田 恵子
世界銀行 防災グローバル・ファシリティ 東京防災ハブ 防災専門官

防災専門官として、2014年より世界銀行東京防災ハブに勤務。「日本-世界銀行防災共同プログラム」を通し、国・地域別の技術支援プログラム、および日本の防災の知見を活用し開発途上国と共有するプログラムの形成や管理を行う。途上国において防災を主流化するため、世界銀行の地域ごとの防災チームとともに、多様なセクターとの連携案件形成を支援する。過去の災害復興事業従事の経験を踏まえ、2015年に壊滅的被害を被ったネパールやバヌアツにおける被害調査ならびに世界銀行による復興プロジェクト形成に従事。世界銀行入行前は、国連開発計画事務局 (UNDP) および国連人間居住計画 (UN Habitat) インドネシア事務所、国連難民高等弁務官事務所 (UNHCR) 南スーダン事務所、国際協力機構 (JICA) モンゴル事務所にて、約10年間にわたり、住宅再建を中心とした自然災害・紛争後の復興事業、事前対策、気候変動適応、都市開発などに携わる。京都工芸繊維大学大学院修士課程修了、工学修士。現在、京都大学大学院 工学研究科 建築学専攻にて、博士後期課程履修中。

 

(講演順、敬称略)

セミナー概要

セミナー報告

 

世界銀行東京防災ハブは日本の関係機関と協力し、日本の知見を世界で共有するためのプログラム「知見共有プログラム」を実施しています。その中で、建築規制を活用した災害に強い都市づくりに関する日本の経験と途上国への教訓を取りまとめており、今回のセミナーは本プログラムの一環として開催されました。

セミナーでは、世界銀行が2016年4月に発表予定の報告書「建築規制を活用した防災:災害に強い都市づくり」の公開に先駆け、日本語概要版を発表しました。今回のセミナーに先立ち、フランシス・ゲスキエール 世界銀行防災プラクティスマネージャーが、3月12日 (土) の朝日新聞朝刊「私の視点」で、本テーマの重要性と日本のリーダーシップへの期待を述べています。
 

世界銀行の取り組みと課題

塚越保祐 世界銀行グループ 駐日特別代表は、開会挨拶の中で、建築規制や土地利用規制は災害リスクの軽減に極めて重要であるにも関わらず、途上国においては最近まで十分に注目されていなかったことを指摘し、急速な都市化が進む中、災害に強い都市づくりを支援することは急務であると述べました。また、2015年3月の第3回国連防災世界会議で採択された「仙台防災枠組2015-2030」にふれ、建築規制や土地利用規制の施行能力が、災害に脆弱な途上国のリスクを軽減し、繁栄を共有するための重要な取り組みとして位置づけられていると述べました。

トーマス・ムーリエ 世界銀行グループ 防災グローバル・ファシリティ (GFDRR) 上級基準開発専門官は、主筆を務めた前述の報告書で指摘した、途上国が抱える5つの課題を解説しました。

災害に強い都市を形成する上で途上国が抱える5つの課題

  • 非効率的な土地利用システム;
  • 建築行政および実施能力の低さ;
  • 脆弱な法的基盤;
  • 貧困層が負担しきれない規制遵守のための費用;
  • 広く行われている建築習慣に対する不十分な認識

ムーリエ専門官はまた、開発段階の国の規制能力強化を目的とした取り組みにおける開発優先事項にふれ、それに基づき世界銀行が提案する建築規制能力強化への投資促進のためのプログラムアプローチについて紹介しました。

世界銀行による今後の取り組み

  • 取り締まりではなく規制遵守を支援するための改革方針の策定;
  • 国・地方自治体の制度施行能力の強化;
  • 貧困層・脆弱層にも遵守できる建築基準の整備;
  • 効果的な建築規制に向けた改革的取り組みの促進

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出典:「建築規制を活用した防災:災害に強い都市づくり」日本語概要版
 

日本の経験から学ぶ

亀村幸泰 国土交通省 住宅局 建築指導課 建築国際関係分析官は、約100年かけて取り組んできた災害に強い都市づくりを実現するための建築規制およびそれを遵守するメカニズムの事例を紹介し、規制は作るだけでなく、遵守のためのメカニズムづくりが重要であることを指摘しました。また、日本の経験を国際協力機構 (JICA) の事業を通じてインドネシアに展開した事例を挙げ、災害後の復興事業に留まらず、平常時の都市開発において建築規制を徹底することで、災害に強い都市づくりが促進されることを強調しました。

小林正宏 住宅金融支援機構 調査部 海外調査担当部長は、日本で高度成長期に住宅需要が高まった際に、住宅融資スキームをうまく活用して、住宅の品質の底上げをしてきた日本の事例を紹介しました。日本のように融資と技術指針を組み合わせた品質管理アプローチは珍しく、最近では、アジア各国からの要請により日本の経験を共有していると述べました。

北山恒 横浜国立大学 教授は、高齢化など21世紀の日本の都市が抱える課題に着目し、東京にある木造密集地が抱える脆弱性と対策の重要性を指摘しました。この中で北山教授は、最先端の科学的知識を活用した木造密集地の延焼パターン・シュミレーション結果を示すとともに、建築家アレハンドロ・アラヴェナ氏が手がけるチリのスラム地区改善事業の事例を紹介し、生活の質や地域社会の繋がりを大切にした21世紀型の木造密集地の改善策を提示しました。

金田恵子 世界銀行グループ 防災クローバル・ファシリティ (GFDRR) 東京防災ハブ 防災専門官は、日本の事例を踏まえ、日本の資金支援と技術支援を融合したアプローチと途上国における災害後の住宅復興事業の類似性を指摘し、平常時に災害に強い都市づくりへ結びつけることの重要性を強調しました。また、世界銀行が行った災害後の住宅再建事業の一例を挙げ、技術指針を定め、その指針が遵守されている場合に限り住宅再建の資金を供給するという方法を用いたことを紹介しました。加えて、こうしたアプローチを資金が確保しやすい災害復興事業のみでなく、国の制度として平常時にも組み込むことにより、災害に強い都市づくりを進めることが重要であると指摘しました。

土谷晃浩 財務省 国際局 開発機関課 課長は、セミナーの閉会にあたり、防災が日本政府にとって重要なテーマであること、途上国の防災対策を進める上で世界銀行との協力の重要性を強調し、今後も東京防災ハブを通じて途上国の防災支援に取り組む旨を述べました。また本分野における日本の経験に関連して、日本政府が取り組む「質の高いインフラパートナーシップ」の観点からも重要であると述べました。

当日は、政府、民間セクター、学術機関等から約100名の方々にご参加いただき、貴重なご意見をいただくとともに、パネリストとの質疑応答が活発に行われました。

東京防災ハブでは、今後、セミナーで紹介されたような日本の事例をもとに以下の取り組みを進めます。

  • 日本の歴史的な建築規制制度実施についての取り組みとその成果、ならびに途上国への教訓を取りまとめたナレッジノートの作成;
  • 作成されたナレッジノートのオンラインプラットフォームや国際会議での発表;
  • 建築規制制度の評価ツール作成に際した日本人専門家の派遣;
  • 建築規制制度の評価ツールテスト (東京防災ハブの国・地域別プログラムとの連携);
  • 日本の経験に基づく「建築規制を活用した防災」の実施を促進するための活動支援

 


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イベント詳細
  • 日時: 2016年03月17日 午後4時~5時30分

 

場所:
世界銀行東京事務所
東京都千代田区内幸町2-2-2 富国生命ビル10階
地下鉄三田線内幸町駅直結、千代田線・日比谷線・丸の内線霞ヶ関駅C4出口下車
地図

言語:
英語・日本語 (同時通訳付)

お問い合わせ:
世界銀行東京防災ハブ
EMAIL: drmhubtokyo@worldbank.org
TEL: 03-3597-1320


日本-世界銀行防災共同プログラム





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