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世界銀行と日本の経験から学ぶ - 途上国における気象・気候・水文気象サービスおよび早期警報システムの近代化
第7回防災セミナー「世界銀行と日本の経験から学ぶ:途上国における気象・気候・水文サービスおよび早期警報システムの近代化」
2016年3月14日東京


防災セミナーシリーズ:世界銀行東京事務所、世界銀行東京防災ハブ 共催

台風、豪雨、豪雪、洪水、干ばつ、さらに熱波、寒波などの気象・水文関連の災害による被害は世界中に大きな損失をもたらしてきました。1980~2011年の統計によると、気象・水文に関連した災害は災害数全体の約80%、災害による死者数の50%以上を占めています。

こうした災害への最も効果的な対応策の一つとして、気象・気候・水文サービスや早期警報システムの充実があげられます。また、気象・気候・水文情報の有効活用は防災に寄与するのみならず、気象や気候条件の変化に影響を受けやすいセクターの生産性を年間最大でおおよそ300億ドル向上させることができると見積もられています。気象・気候・水文サービスへの投資は費用対効果が高いと考えられ、世界銀行もこの分野への投資を近年積極的に増加させてきました。その一方で、日本もこの分野において途上国への最重要支援国の一つであり、アジア・太平洋地域を中心に多大な貢献をしてきました。また、日本では国土交通省や気象庁が中心となり、気象・気候・水文サービスが提供されていますが、これらは世界でも最先端のサービス提供機関のひとつであり、気象・水文機関のグローバルネットワークの中で重要な位置を占めています。実際、気象庁は国内に限らず、アジア太平洋諸国へ気象衛星「ひまわり」の画像配信はじめ様々なサービスを提供するなど世界気象機関 (WMO) と連携しグローバルなサービス提供機関としての役割を果たしてきました。

本セミナーでは日本が国として取り組んできた気象・水文サービス近代化の歴史や教訓、日本や世界銀行がこれまで行ってきた途上国支援の経験を踏まえ、今後の気象・気候・水文サービス支援のあり方について議論します。
多くの皆様のご参加をお待ちしております。

プログラム

開会挨拶

塚越 保祐
世界銀行グループ 駐日特別代表
ビデオ

講演

ブラディミル・ツィルクノフ
世界銀行 防災グローバル・ファシリティ 主席専門官
「気象・気候・水文サービス支援に関する効果的な開発パートナーシップの推進」PDF (英語) | ビデオ

羽鳥 光彦
気象業務支援センター 理事長
「日本の気象サービスに関する考察および開発途上国における日本の経験の活用」PDF (英語) | ビデオ

栗城 稔
河川情報センター 河川情報研究所 研究第二部部長・技術士
「日本の水文サービスに関する考察」PDF (英語) | ビデオ

羽鳥 光彦・栗城 稔
「途上国における気象・気候・水文サービスおよび早期警報システムの近代化:日本の経験から学ぶ」PDF (英語) | ビデオ

モデレーター

諏訪 理
世界銀行 防災グローバル・ファシリティ 上級防災専門官

(敬称略)

❖ このセミナーは公開用に録画されます。

Image塚越 保祐
世界銀行グループ 駐日特別代表

2013年8月現職に就任。日本の政府、CSO、企業、研究機関等と世界銀行との協力関係強化を使命とする。就任以来、世界銀行東京事務所内に設置された東京防災ハブの設立にも参画。現職就任前、2008-2011年には米州開発銀行理事として同行の融資案件の審議と政策決定に関与。1988-1991年にはアフリカ開発銀行理事としてコートジボワールに駐在。また、1994-1998年には国際金融情報センター・ワシントン事務所長として米国の政策決定過程等につき調査。1980年4月大蔵省 (現:財務省) に入省。

 

Imageブラディミル・ツィルクノフ
世界銀行 防災グローバル・ファシリティ 主席専門官

1994年入行。現職の前は、研究所所長としてソビエト社会主義共和国連邦 (現:ロシア連邦) の水文化学モニタリングおよび水質データ収集システムの管理・運用を行う。世界銀行入行後、事前準備、評価、ならびに環境投資、技術支援、地球環境ファシリティ関連プロジェクトの管理職を歴任。2003年以降、気象、気候、水文サービスの新たな投資事業や分析製品の開発に携わる。ロシア連邦ロストフ州大学にて理学士、および同大学院水文化学研究所にて博士号取得。

 

Image羽鳥 光彦
気象業務支援センター 理事長

2014年より現職に就任。現職就任前は、気象庁長官として気象庁事業全般の管理・運営を行う。気象の専門家として、気象庁における30年間の経験を含め、海洋気象・気候業務、気象情報の国民、関係機関、さらに様々な社会経済活動での利用促進を図るための国から民間レベルまでの気象業務の計画・管理に携わる。東北大学大学院理学研究科 (海洋物理学) 博士課程修了。

 

Image栗城 稔
河川情報センター 河川情報研究所 研究第二部 部長

河川情報センター 河川情報研究所 研究第二部 部長として、また建設部門・総合技術監理部門の技術士として、河川・流域に関する情報技術の管理、開発、提供、また水文観測データの品質管理を含めた水文学に関する研究を行う。現職就任前は国土交通省に30年間勤務。国土交通省在職中、1988年から1991年まで国際連合アジア太平洋経済社会委員会 (UNESCAP) にて治水の専門家として携わる。1996年から1999年までアジア開発銀行にて都市開発専門家として就任。2012年から2013年にかけて、タイのチャオプラヤ川流域における洪水リスク情報システムの準備にあたり、研究チームの副リーダーを務める。ワシントン大学土木工学修士課程修了。

 

Image諏訪 理
世界銀行 防災グローバル・ファシリティ 上級防災専門官

水文気象・防災専門官として、世界銀行 防災グローバル・ファシリティ (GFDRR) にて、気象・気候・水文サービスの向上を通した防災および気候変動対策に取り組んでいる。アフリカ、東南・南アジア、中南米など、各地でプロジェクト準備や実施支援に従事。気象・気候・水文サービスの世界的動向の分析や各国気象水文機関や他国際機関との連携強化も担当。世界銀行入行前は、世界気象機関 (WMO) ジュネーブ本部および在ナイロビ東部南部アフリカ事務所に勤務し、気象・気候サービスにかかるプロジェクト、能力開発、関係機関との連携強化に携わる。また、ルワンダのキガリ科学技術研究所やキガリ高等学校で教鞭をとる。東京では国際協力機構 地球環境部 気候変動対策室に勤務。東京大学理学部卒業後、デューク大学大学院環境学修士課程を経て、プリンストン大学大学院地球科学科博士課程修了。気候科学博士。

(講演順、敬称略)

 

セミナー概要

セミナー報告

 

世界銀行東京防災ハブは日本の関係機関との協力により、日本の知見を世界で共有するためのプログラム「知見共有プログラム」を実施しており、この中で日本の気象・気候・水文サービスの近代化から学ぶことのできる教訓をまとめています。今回のセミナーは本プログラムの一環として開催されました。

まず世界銀行の防災専門官が途上国における気象・気候・水文サービスおよび早期警報システムの近代化に関する現状や課題を紹介しました。続いて日本の専門家から、日本の気象・気候・水文サービスの近代化の経験をもとに、途上国での気象・気候・水文サービスの近代化における課題をどのように克服していける可能性があるのかについて発表がありました。
 

世界銀行の取り組みと課題

塚越保祐 世界銀行グループ駐日特別代表は、開会挨拶の中で、気象・気候・水文サービスは防災だけでなく気象や気候条件の変化に影響を受けやすい経済活動の発展にも貢献し、世界銀行もこの分野への投資を積極的に増加していると述べました。また、ジム・ヨン・キム世界銀行総裁の第3回国連防災世界会議でのスピーチにふれ、早期警報システムへの1ドルの投資は36ドルの社会的・経済的な便益をもたらすと述べました。

ブラディミル・ツィルクノフ 防災グローバル・ファシリティ 主席専門官は、途上国における気象・水文サービスの優先分野への投資は少なくとも15-20億ドル必要であり、加えて年間3-4億ドルの運用費用の捻出が求められると説明しました。また、投資の際には、持続可能性を担保するためにシステム全体へのバランスの取れた投資、受入国の実情やキャパシティに見合ったシステムデザインや様々な分野での能力開発が必要だと指摘しました。加えて、官民の連携や国際的な協調も念頭におく必要があると述べました。
 

日本の経験から学ぶ

羽鳥光彦 気象業務支援センター理事長・前気象庁長官は、日本における気象庁を中心とした気象サービスの近代化は戦後70年近くをかけた長期的な努力であり、持続的な人材育成を伴った段階的な取り組みであったと指摘しました。その上で1952年に制定された気象業務法にふれ、法整備や長期的なビジョンの必要性を述べました。また、科学技術の発展を時代の変遷に応じ取り入れてきた経緯を解説しました。

栗城稔 河川情報センター河川情報研究所研究第二部部長からは、日本の水文サービスが統合水管理や水防災の観点を踏まえどのように発展してきたか解説がありました。その中で、日本では大きな災害のたびに気象・気候・水文サービスを含めた防災システムが改善されてきており、そうした機会に法的な側面はもとより、よりユーザーの必要性に即したサービスの開発とその効果的な運用を考える必要があると述べました。昨年の茨城県常総市における洪水にもふれ、水文情報がより効果的に使われるためには、日本においてもまだ課題があると指摘しました。
 

途上国における気象・気候・水文サービスおよび早期警報システムの近代化

これらの日本の経験から、途上国においても中長期的なビジョンに沿った息の長い努力が必要であり、その中でユーザーの必要性を適切に把握し、ニーズに応える形でサービスの開発・提供が行われることが重要であるとの指摘がありました。サービスを支える法整備や観測網の充実の必要性も強調されました。加えて、気象・気候・水文サービスに関連する関係各機関との緊密な連携や、気象・水文は国境を越えた現象であることから国際協調の必要性が述べられました。

当日は、政府、民間セクター、学術・研究機関等から約100名が参加、各視点から貴重なご意見をいただき、パネリストとの質疑応答が活発に行われました。これらの議論は現在知見共有プログラムの下でまとめられている気象・気候・水文サービスの「ナレッジノート」にも反映される予定です。


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イベント詳細
  • 日時: 2016年03月14日 (月) 午後4時~午後5時30分

場所:
世界銀行東京事務所
東京都千代田区内幸町2-2-2 富国生命ビル10階
地下鉄三田線内幸町駅直結、千代田線・日比谷線・丸の内線霞ヶ関駅C4出口下車
地図

言語:
英語・日本語 (同時通訳付)

お問い合わせ:
世界銀行東京防災ハブ
EMAIL: drmhubtokyo@worldbank.org
TEL: 03-3597-1320


日本-世界銀行防災共同プログラム





日本の水文気象サービスの近代化:防災のための教訓