Skip to Main Navigation
Results Briefs 2019年9月10日

バングラデシュ沿岸地域の強靱性:洪水・高潮被害から沿岸のコミュニティを守る

Image

バングラデシュは2013年以降、世界銀行の資金と専門知識を利用して気候変動に対する強靱性強化に取り組み、18万3,900人(内、9万1,950人は女性)に対する保護を強化しました。

課題

が、この地域は国内の他の地域と比べて、絶対貧困ライン未満で暮らす住民の割合が高くなっています。異常気象への適応コストに関する世界銀行の調査では、バングラデシュでは現在、800万人がサイクロンによる高潮により3メートル以上の浸水深となる地域で暮らしていると予測されています。この数は2050年には1,350万人に増え、さらに気候変動によって900万人が加わる見込みです。このため、防災機能を持つ干拓地(低地)を修復または改良し、サイクロンや高潮、洪水による浸水や塩害に対する沿岸地域の強靱性を強化することが急務となっています。

アプローチ

海岸堤防改善プロジェクト(CEIP)は、洪水や頻繁な高潮から地域住民を守るために、防災機能を持つ干拓地の修復、改良を支援し、気候データや気候予測を利用して、対象となる干拓地への塩水侵入を防ぎ、農業生産高を増やすことを目指しています。本プロジェクトの長期目標は、国内の堤防構造全体を改良し、洪水や災害に対する沿岸地域住民の強靱性を強化することです。しかし、バングラデシュには6,000kmに及ぶ堤防と139もの干拓地があるため、予想される作業は膨大であり、15年から20年かけて段階的に取り組む必要があります。CEIP-Iは、この長期計画の最初のフェーズです。また、CEIPではデルタ地帯の長期的かつ大規模な変化に対する理解に基づき、干拓地の設計と投資計画に関する枠組みも提供していく予定です。

成果

また、一部の干拓地で気候変動に対する強靱性が強化された結果、洪水や暴風の被害から18万3,900人(内、9万1,950人は女性)を効果的に保護できるようになりました。2019年5月現在、本プロジェクトにより総面積2万1,700ヘクタールの土地が保護され、130.58kmの堤防が改良されました。現在は、この地域の環境を深く理解し、気候変動に対する沿岸地域の強靱性を強化するための包括的な分析が進行中です。

世界銀行グループの支援

海岸堤防改善プロジェクト(CEIP)のフェーズ1(CEIP-I)は、国際開発協会(IDA)から2013年に3億7,500万ドル、気候投資基金(CIF)から2,500万ドル、計4億ドルの支援を受けています。

パートナー

前述したように、本プロジェクトで支援された計4億ドルの資金のうち、2,500万ドルは気候投資基金(CIF)の目的別ファンドである気候適応パイロット・プログラム(PPCR)によるものです。現在、CIFは約9,540万ドルの譲許的融資とグラントをもとに、干拓地の修復や改良、脆弱な沿岸部の町の構造改善、一部の道路や橋の建設と改良、インフラ設計基準の強化など、バングラデシュのさまざまな海岸インフラプロジェクトに対し、約5億2,340万ドルの支援(世界銀行、アジア開発銀行、ドイツ復興金融公庫、国際農業開発基金、英国政府との協調融資)を提供しています。

今後の展望

CEIP-Iは、139の干拓地と全長6,000kmの堤防からなるバングラデシュの海岸堤防構造全体の改良を目指す長期計画の第1フェーズです。まずは緊急対応が必要な17の干拓地を対象としたプロジェクトが実施されており、成功すれば、国内の他の沿岸地域でもCEIP-Iの教訓を生かしたプロジェクトが計画される可能性があります。同国の海岸堤防構造を構成する17の干拓地が修復されると、76万人(内、38万人は女性)に強力な保護を提供できるようになります。六つの沿岸区域に広がる合計17の干拓地の修復は、これらの干拓地で暮らす76万人に直接的な保護を提供するとともに、農業生産高を増やし、サイクロンや高潮、洪水に対する沿岸地域全体の強靭性を強化することで、地域住民の生活の向上にも寄与する予定です。

受益者

ジャハルール・サルダールは、洪水やサイクロンによる高潮の影響を受けやすい第32干拓地で暮らしています。この干拓地内の土地は海抜0メートルを下回っていますが、ジャハルールは再建されたばかりの堤防を裸足で歩き回りながら、安心して生活できるようになったと言います。「丈夫な堤防とサイクロンシェルターがあれば、私たちは生き延びることができます。」