プレスリリース

エボラ出血熱:西アフリカでの集団感染が長期化・拡大すれば数十億ドルの経済的損失をもたらす、と世界銀行グループ新報告書

2014年10月9日


ワシントン、2014年10月8日 - エボラ出血熱の最も深刻な影響を受けているギニア、リベリア、シエラレオネの3カ国では、死者が3,439人に達した。世界銀行グループは、今回の集団感染がもたらす経済的影響について新報告書をまとめ、より経済規模の大きな近隣諸国にも感染が広がれば、アフリカ地域の経済に与える損失は、2年間の累積額で2015年末までに326億ドルに達するだろう、と指摘する。

同報告書は、「エボラ出血熱を年内に封じ込められる見通しは厳しく、さらに今後の感染の拡大についても懸念要因が多いことから、2015年末までの中期的影響については2つのシナリオを仮定して推計している。」「感染率低位推計」シナリオは、最も深刻な影響を受けた3カ国で封じ込めが迅速に行われた場合、「感染率高位推計」シナリオは、これら3カ国で封じ込めが遅れ、域内に広く感染が広がった場合の推定値である。

新たな分析では、エボラ出血熱の経済的影響は感染の中心である3カ国(中でもリベリアとシエラレオネ)において非常に深刻であり、封じ込めが遅れた場合の「感染率高位推計」のシナリオでは壊滅的な影響となる恐れがある。ただ、地域全体への経済的影響は、各国や国際社会が直ちに行動を起こして感染症を封じ込めると共に、近隣諸国による国境封鎖、航空会社や域内・国際企業によるこれら3カ国での商業活動停止など感染を恐れる人々の「恐怖心による行動」を緩和できれば、限定的なものに留められるだろう。ナイジェリアとセネガルで今のところエボラの封じ込めが成功していることは、既存の保健医療システムが機能し、しっかりとした政策対応をもってすれば、封じ込めが可能であることの証である。

「エボラ出血熱は、ギニア、リベリア、シエラレオネのみならず、西アフリカの近隣諸国に膨大な経済損失をもたらす。国際社会は、ロジスティック面の障壁を乗り越え、より多くの医者や熟練した医療スタッフの派遣、病床の確保、保健・開発分野への支援強化を通じて、エボラ出血熱の感染を食い止めなければならない。」と、ジム・ヨン・キム世界銀行グループ総裁は述べる。

エボラ出血熱がGDPに与える損失額と2013年GDPに占める割合

 

短期的影響
2014
中期的影響
2015年:低位推計)
中期的影響
(2015
年:高位推計)

ギニア

1億3,000万ドル
(2.1 %ポイント)
-4,300万ドル
(0.7%ポイント )
1億4,200万ドル
(2.3 %ポイント )

リベリア

6,600万ドル
(3.4 %ポイント )
1億1,300万ドル
(5.8%ポイント )
2億3,400万ドル
(12%ポイント )

シエラレオネ

1億6,300万ドル
(3.3 %ポイント )
5,900万ドル
(1.2 %ポイント )
4億3,900万ドル
(8.9 %ポイント )

3カ国合計

3億5,900万ドル

1億2,900万ドル

8億1,500万ドル

西アフリカ

22億~74億ドル

16億ドル

252億ドル

ドル表示は現行米ドルに基づく。

「多くの脆弱国では、公共保健医療システム、組織、制度が十分に整っていない。この事が、彼らの国民だけでなく、貿易相手国、更には世界全体に対する脅威となっている。国際社会は今、こうした状況を踏また上で対応を考えなければならない」と、キム総裁は述べる。「今回の危機は、感染国をはじめ世界中に膨大な経済損失をもたらしている。公共保健医療システムの改善に現在のような投資が以前から行われていれば、こうした損失を回避することが出来たはずだ。」

世界銀行グループはまた、世界保健機関(WHO)の「エボラ出血熱対策ロードマップ」に沿って各国の対策を支援し、国連をはじめ各国のパートナーや国際機関と援助についての連携を緊密にとっている。

同報告書は、「今回の危機が収束を迎えたら次には、早期警鐘システムや、アフリカにおける効果的で強靭な保健医療システム確立のための補完的投資の維持・継続的強化への取り組みと、エボラ封じ込めの記憶を伝えていくことが必要となる。封じ込めへの対処、財政支援、投資家の信頼回復、疾病監視の拡充、診断・治療能力の強化を組み合わせることで、まずはエボラ出血熱の集団感染を食い止め、さらに、膨大な経済的損失を生じさせる「恐怖心による行動」をできる限り短期間に抑制することができるだろう」と分析する。

今後の課題は、集団感染が封じ込められた後に国の内外からの投資が再開されるよう、投資家の信頼を回復することである。世界銀行グループは、感染国に対しては、救援・商業活動(保健、ビジネス、観光)の再開を促す緊急対策が求められる一方で、他の国々を集団感染から守る必要があるとしている。そのためには、保健・衛生のインフラ、及び感染3カ国とその近隣諸国の港湾・空港における検疫機能拡充のために更なる資金確保が必要となる。

こうした目的のために世界銀行グループは、今回の危機で最も深刻な影響を受けている国々に対して4億ドルの緊急支援パッケージの動員を決めている。

エボラ出血熱の影響をまとめた世界銀行グループの新報告書は、以下のウェブサイトでご覧いただけます。
https://documents.worldbank.org/curated/en/2014/10/20270083/economic-impact-2014-ebola-epidemic-short-medium-term-estimates-west-africa

イベント: エボラ危機の影響:感染国の視点から
https://live.worldbank.org/impact-of-ebola-crisis

世界銀行の対エボラ支援についての詳細は、以下のウェブサイトでご覧いただけます。
https://www.worldbank.org/en/topic/health/brief/world-bank-group-ebola-fact-sheet



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プレスリリース番号:
2015/154/AFR

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