プレスリリース

2012年の途上国への送金、 4000億ドルを越すと世銀報告書

2012年11月20日




ワシントン、2012年11月20日 ― 本日発表された世界銀行の移民と送金に関する報告書は、2012年の途上国への送金見込みについて、前年比6.5%増の4060億ドルに上るとの上方改定を行った。

途上国への今後の送金の伸びは、2013年に7.9%、2014年に10.1%、さらに2015年には10.7%(合計5340億ドル)と見込んでいる。

また、同報告書によると、高所得国への送金を含めた世界全体の送金総額は2012年に5340億ドル、また2015年には6850億ドルに達すると予測されている。

但し、途上国への送金フロー全体が増大しているとはいえ、長引く世界経済危機が、一部の地域への送金フローに悪影響を与えている。特に、ヨーロッパ・中央アジアとサブサハラ・アフリカはその影響を受けているが、反面、南アジアと中東・北アフリカ(MENA)地域では、前回予想をかなり上回る見通しだ。

2012年の公式な送金の仕向け先上位国は、インド(700億ドル)、中国(660億ドル)、フィリピン及びメキシコ(各240億ドル)、ナイジェリア(210億ドル)である。その他、エジプト、パキスタン、バングラデシュ、ベトナム、レバノンなども大きな仕向け先国である。

また、2011年の受け取り額の対GDP比では、タジキスタン(47%)、リベリア(31%)、キルギス共和国(29%)、レソト(27%)、モルドバ(23%)、ネパール(22%)、サモア(21%)が上位となっている。

「移民労働者は世界経済の低成長による悪影響を大きく受けているが、送金額は依然として大変底堅く推移しており、貧困世帯にとっての重要な命綱であるだけではく、送金の仕向け先である多くの貧困国にとって安定した外貨収入となっている」と、世界銀行のハンス・ティマー開発見通しグループ局長は述べている。

原油輸出国に多数の移民労働者を送り出している地域や国では、西欧を中心とする先進国に移民労働者が集まっている地域や国に比べ、引き続き力強い送金フローの伸びを示している。

そのため、湾岸協力会議(GCC)加盟国に多数の労働者を送り込んでいる南アジア、中東・北アフリカ、東アジア、太平洋の地域では、前回見込み以上に送金が増えている。たとえば、南アジアへの2012年の送金総額は前年比12.5%増の1090億ドルに、東アジア・太平洋地域への送金は前年比7.2%増の1140億ドルに、また中東・北アフリカへの送金は前年比8.4%増の470億ドルに上ると見られる。

ラテンアメリカ・カリブ海への2012年の送金は、米国の景気回復及び労働市場の改善に支えられ、低迷する欧州経済の悪影響はあるものの、前年比2.9%伸び、640億ドルとなる見通しだ。

対照的に、ヨーロッパ・中央アジアとサブサハラ・アフリカ地域への送金は、主に欧州の高所得国の不景気の影響を受けて、横ばいで推移すると予測され、2012年のヨーロッパ・中央アジアへの送金フローは410億ドル、サブサハラ・アフリカへの送金は310億ドルと見られている。ただし、2013年には両地域ともに送金フローの力強い回復が予想されている。

「先進国の経済危機が続いている中で、移民労働者は驚くべき粘り強さを示している」と、報告書の主任執筆者である世銀のディリップ・ラーサ移民・送金部門マネージャーは述べている。「別の仕事を素早く見つけ、生活費を切り詰めることにより、多くの労働者が自国に戻らずに済んでいる」

世銀は今後引き続き、各地域に向けた送金フローが増えると予測しているが、欧州における失業率の高止まりや、一部の国における移民労働者の受け入れ姿勢の硬化に起因する深刻な下振れリスクも存在する。

送金フローの伸びを抑えるもう一つの障害は、高い送金コストである。2012年第3四半期の平均送金コストは、上位20の二国間送金ルートでは7.5%、またコスト・データを入手可能な国全体では9%である。サブサハラ・アフリカの平均送金コストは、途上国地域で最高の12.4%である。

同報告書は、携帯電話の利用が途上国において爆発的に普及したにも関らず、モバイル送金はあまり普及していないと指摘している。モバイル送金は、金融規制と通信規制の狭間に落ちてしまい、しかも多くの中央銀行はノンバンク機関による金融サービスの提供を禁じている。従って、中央銀行と通信当局が互いに歩み寄り、モバイル送金に関連した法整備を行う必要がある。

報告書はまた、欧米における新たな送金規制の実施についても触れ、このような規制は、競争を高め、消費者保護を改善するため、長期的には送金コストを低下させるだろうとしている。

「国際コミュニティは、4つの海外送金アジェンダのうち、データ、送金コスト、及び各国の資本市場アクセスにおける送金の活用という3つの分野で進展を遂げてきた。しかし、貧困層の金融アクセスと海外送金を結びつけるという領域では進展があまり見られていない。送金と小口貯蓄や小口保険をリンクする計画の開拓や中小企業(SME)向け金融は大きな可能性を秘めている」とラーサは述べている。

海外移民と送金の分野で主要な役割を演ずる世界銀行は、「移民と開発に関するグローバル・ナレッジ・パートナーシップ(KNOMAD)」と呼ばれる新規イニシアティブに取り組んでいる。このイニシアティブは、移民という課題についての学際的な議論の促進、政策上の選択肢の策定、送金国と仕向け先によるパイロット的政策の実施支援を目指している。

世銀はまた、国家の開発目的に海外移民と送金を活用する金融手段の開発にも引き続き大きな力を注いでいる。移民債(Diaspora Bonds)は、仕向け先国の公的又は民間セクターのプロジェクトの資金源、あるいは債務状況の改善のため、海外移民が蓄えた貯蓄を動員する強力な金融手段となり得る。これに伴い世銀は、「移民債タスクフォース」を設置し、開発プロジェクトの資金調達のための移民債発行に関心のある国に技術支援を提供している。「移民と送金に関する報告書」と移民・送金に関する最新データは以下のウェブサイトで入手可能(www.worldbank.org/migration)。

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プレスリリース番号:
2013/159/DEC

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