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特集2025年2月27日

南アフリカ共和国/野生生物を基盤とする経済活動が農村地域に雇用を

The World Bank

南アフリカ共和国の最も重要な資産の一つとも言える「自然」に投資するプログラムにより、同国の農村地域における経済が活性化し、雇用が創出されています。

同プログラムにより、政府は生態系の保全と食糧安全保障の確保を支援しています。生態系の保全は、 環境にとって良いだけでなく経済にとっても不可欠となっています。 2022年に世界銀行が新たに導入した革新的な取り組みは、南アフリカの野生生物を基盤とする経済活動の強化と東ケープ州のクロサイの個体数の増加に貢献してきました。

野生生物保護債券(総額1億5000万ドルの成果連動債券。通称「サイ・ボンド」)は、民間資本を動員して、絶滅の危機に瀕しているクロサイの保護を支援しています。「サイ・ボンド」は近隣のコミュニティの参加型活動や雇用プログラムにも資金を提供しています。
Fatimetou Mint Mohamed
サトゥ・ カホネン
世界銀行南アフリカ担当カントリー・ディレクター

l地球環境ファシリティ(GEF)と世界銀行との協力によって発行された「サイ・ボンド」は、成果を上げています。

プロジェクト開始以来、多数のサイが産まれており、そのうちの1頭は「サトゥ」の名前が付けられました。2024年11月現在、クロサイの個体数は年間平均7.65%増まで回復しており、当初の目標を上回る成果が得られています。

多様な生態系と美しい自然が広がり、130万ヘクタールに及ぶイシマンガリソ湿地公園があるクワズール・ナタール州でも同様の成果が得られています。

「世界でも最も貧しい地域、特に農村部においては、多くの人々の生活が自然と深く関わっています」と、グローバル・ワイルドライフ・プログラムのプログラム・マネージャーであるリサ・ファローウェイ氏は説明します。「グローバル・ワイルドライフ・プログラムは、野生生物と自然への投資は環境にとって良いだけでなく、経済成長と雇用創出の原動力となることを明確に示しています。

豊かな自然があるにもかかわらず、この地域の住民は深刻な経済的課題に直面しています。高い貧困率・正式な雇用機会の少なさ・地理的な孤立などです。新型コロナにより、観光客数が減少し、多くの関連ビジネスが廃業となり、生活に不可欠な自然資源への負荷が増加したことで、これらの脆弱性はさらに悪化しました。

「観光客の減少により、関連事業が次々と閉鎖に追い込まれました。観光客用の施設は閉鎖され、多くの人々が仕事を失いました」と、ルシア・モトルーン南アフリカ環境・森林・漁業省のプロジェクトマネージャーは説明します。「しかし、今では回復しつつあります。」

この回復を確かなものにするため、南アフリカ共和国の「保護地域周辺の生物多様性経済のための資金調達と事業力構築プロジェクト」は、同国の豊かな自然資源の管理を強化し、野生生物に関連する経済を強化する取り組みを行っています。本プロジェクトは、世界銀行が主導するグローバル・ワイルドライフ・プログラムGEFが資金提供)の支援を受けつつ、農村部の失業・不平等・貧困の解消を目的として、リンポポ州と東ケープ州の保護区に加え、クワズール・ナタール州のイシマンガリソ湿地公園でも実施されています。

自然を活かした観光・持続可能な農業・地元のビジネス開発などを通じて、地元コミュニティに雇用を創出し、収入源の多様化を図っています。ハイキングコース・宿泊施設・会議センター・その他の観光施設などの新しいインフラの建設は、ホスピタリティ関連の雇用を生み出し、地元のビジネスを支援につながります。また、iSimangalisoの東海岸に点在する漁村コミュニティに対しては、観光活動を支援するためにボートや安全装備が提供されます。プロジェクト全体としては、事業開始や事業拡大を目指す90以上の小規模事業や小企業への支援を見込んでいます。

さらに、本プロジェクトでは、地域社会への利益を最大限に高めるのと同時に自然保護を支援することを目指しており、プロジェクト対象地域全体で保護区域を約27,000ヘクタール拡大することを目標としています。

参加型のアプローチにより、地域社会からの支持も確保されています。政府は、小規模な地域社会で実施されるプロジェクト活動に関しては、受益者団体と定期的に協議を行っています。

南アフリカ共和国の若者たちも、この再生事業に参加しています。ルシア・モトルーンが説明するように、「インスタグラムを見ると、エコツーリズムを受け入れ始めて、イシマンガリソの情報を広めている若者たちの姿が見られます。こうしたインフルエンサーたちが、本当に流行を作り出しているのです!」。

イシマンガリソのような保護区への投資によって実現する地元経済の利益は、農村地域にも波及すると考えられます。世界銀行は、政府が保護地域や自然を基盤とした観光事業に1ドル投資するごとに、少なくとも6倍の収益率が得られ、それらの地域の雇用も促進されると算出しています。

世界38カ国で、グローバル・ワイルドライフ・プログラムは、自然を基盤とした観光事業などを通じて野生生物と関連する経済の促進に取り組む一方で、違法かつ持続不可能な野生生物取引、人間と野生生物の衝突、人獣共通感染症のリスクなどの野生生物に対する脅威にも同時に取り組んでいます。

自然保護に最大規模の資金を供与する国際機関の一つである世界銀行は、世界的な自然や野生生物の減少に対処すべく、資金提供に加えて様々な知識の共有や革新的な試みにも取り組んでいます。世界銀行はまた、南アフリカ共和国と同様の問題を抱える国々とも協力し、農村地域の発展に寄与する野生生物経済の構築に取り組んでいます。

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