今回の人事ブログでは、世界銀行グループと日本政府の連携により毎年実施しているミッドキャリア(中途採用プログラム)とジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPOプログラム)の担当者であるロザリオ・アナ・ゾリーラ・人事プログラムコーディネーターへのインタビューを通じて、両プログラムを統括するドナーファンド採用プログラム(Donor-funded Staffing Program: DFSP)の詳細をご紹介します。また、DFSPで採用された日本人職員のその後の活躍や、これから応募を検討される方々へのアドバイスなど、これまで候補者に直接伝えることができなかった内容を中心に取り上げます。(聞き手、邦訳:戸崎智支・人事総局HRビジネス・パートナー)
世界銀行グループでは毎年、日本政府の支援を受けてミッドキャリア専門官(中途採用プログラム)とジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPOプログラム)を採用していますが、プログラムの説明をお願いします。
両プログラムとも、DFSPという枠組みの中で実施されています。DFSPは世界銀行グループが実施する数ある採用プログラムの中の一つですが、日本をはじめとする主要ドナー国の拠出を原資とし、各国が推薦する自国籍所有者の採用を目的としています。DFSPは、世界銀行グループと各ドナーが共有する開発課題への支援を行う上で大変有益なプログラムです。また、世界銀行はドナー各国の優秀な人材を獲得でき、ドナー国は自国の専門家の知見を世界銀行の2大目標である貧困削減、繁栄の共有に貢献できるというメリットがあります。DFSPを通じて採用された専門家は、ワシントンDC本部のみならず、世界各国の現地事務所に派遣され活躍しています。
国連でも同様のプログラムを実施しており、日本人も多数採用されています。国連と比べた世界銀行グループのDFSPの特徴を教えてください。
国連にもJPOプログラムがありますが、最大の違いは、世銀のJPOプログラムはポスト毎の募集となっており、具体的なジョブ・ディスクリプションと呼ばれる職務記述書(TOR)を公開する点です。TORには勤務地や採用部署、詳細な職務内容が記されており、応募時に具体的な仕事のイメージをつかむことができます。また、世界銀行グループではDFSP開始当初から、JPOに加え、5年以上の実務経験を有するミッドキャリアの採用を実施し、将来の幹部候補となるような人材の発掘に成功してきました。世界銀行のミッドキャリアプログラムは10年以上の歴史があり、合格者の中には既にマネージャー職に就いている職員もいます。なお、近年では募集の周知やキャリアセミナーの実施などで国連が実施するJPOプログラムとの連携も増えており、組織の垣根を超えて国際開発人材の発掘に尽力しています。
2021年の募集は春に終了しましたが、その後の進捗を教えてください。また、採用後に正規職員となる可能性はあるのでしょうか?
選考過程の進捗はポストによります。2021年度は3月から4月にかけて東京の選考委員会による書類選考と1次面接が実施され、5月以降随時、本部の採用ユニットとの面接が実施されています。採用後は、最初の2年間の勤務期間を日本政府が支援し、その後勤務評価に基づき1年延長が可能です。またさらにその後、世銀の正規職員となる可能性があります。(過去の募集要項などはこちらをご参照ください。)
これまでプログラム担当者として多くの日本人採用のプロセスに関わり候補者と接してきた中で、特に印象に残ることはありますか?
ミッドキャリアもJPOも、採用情報の公開から日本での募集・選考プロセスまで、世界銀行の正規職員採用と同等の基準で厳密に実施されており、DFSP事務局が求める人材要件を満たした候補者のみが採用部署に推薦されます。こうした厳正な採用過程を経た候補者だからこそ、3年目の契約延長や、その後の正規職員採用といった結果につながっています。DFSPのしっかりとした制度設計を改めて認識すると共に、厳しい競争をくぐり抜けて毎年DFSPを通じて入行してくる優秀な日本人の方々の活躍が特に印象的です。
契約延長や正規職員としての採用は候補者の最大の関心事項の一つですが、具体的なアドバイスはありますか?
まず、契約形態にかかわらず全ての世界銀行の職員に当てはまることですが、自分のキャリアには自主的に責任を持つという心構えが必要です。国際機関では、与えられた業務の遂行だけに満足せずに、自分が組織の中でどのように成長し、そこで得た経験や知見でいかに更なる貢献を実現できるかということを常に考える必要があります。また、自分に足りないと感じるスキルや経験を、積極的に獲得していく姿勢も大切です。そのためにはネットワーキングも重要となります(人事ブログ第4回参照)。
最後に、これから応募を考えている候補者へのメッセージをお願いします。
担当者として、ミッドキャリアもJPOも素晴らしい採用プログラムであると自信を持って申し上げることができます。DFSPは、参加しているドナー国の国籍所有者のみが対象となっていますので、日本の皆さんはDFSPに応募できる幸運な機会に恵まれていると言えます。日本は制度の設立当初からプログラムに積極的に参画しており、これまでに多くの優秀な日本人採用につながっている他、正規職員として採用されたケースも多くあります。日本の方には、ぜひ今後もDFSPを活用して世界銀行でキャリアを積んでいただきたいと思います。高度な専門性はもちろん、日本の開発援助の現場で培った経験と知識を世界銀行グループの2大目標に役立てたいという情熱を持った多くの方の応募を願ってやみません。
担当者紹介
1990年から世界銀行勤務。アフリカ局東アフリカユニットを経て、1993年より人事総局に異動。以降、制度企画ポリシーチーム、人事サービスセンター、東アジア地域担当人事、採用チームなど一貫して人事専門家として勤務。現職では、DFSPの担当としてドナー国との調整を担当。
関連リンク:
世界銀行グループ本部採用サイト:ドナーファンド採用プログラム(DFSP)