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特集 2021年6月30日

強靭性への理解を深める:インタラクティブで実践的なツールが都市型洪水に対する強靭化にイノベーションをもたらす

筆者:Jolanta Kryspin-Watson, Shoko Takemoto, Dixi Mengote-Quah, Jian Vun


洪水は世界的に最も頻繁に起こる災害であり、世界人口の2割近く(多くは都市部在住)が100年に1回の大雨による直接的かつ甚大な被害に遭うリスクを負っています。洪水に対する強靭化のための革新的なアイデアやアプローチには事欠きませんが、重要なのはそのようなアイデアを行動に移すことです。

世界銀行では、日本、インドネシアそしてシンガポールにおけるパートナーと共に、この課題に取り組んできました。インタラクティブで実践的な2つのツールを統合することで、計画立案者たちは革新的なアイデアに対する理解を深め、それぞれの洪水リスク課題にアイデアを適用し、未来への行動を起こすことが可能になりました。計画の際に実践的なユーザー・インターフェースを活用することで、複雑な課題に包括的に対応するための協力とコミュニケーションが向上することが、研究で明らかになっています。

世界銀行東京防災ハブを通じた日本―世界銀行防災共同プログラムからの資金提供や技術支援を通じ、“ミニスタジオ”デザイン・ワークショップが開催され、参加した日本、インドネシア、その他国々の代表者は都市部を調査し、洪水への強靭性を高めるための課題を自ら認識し、理解を深めることができました。さらに、協力して課題に対処するための提案書を作成しました。

ミニスタジオで参加者たちは豊富な知識と経験を活用し、簡略化された雨水流出量計算方法と、雨水管理のためのグリーンインフラやグレーインフラといった物理的デザインを組み合わせることで、革新的な提案書を策定しました。現在、インドネシアを始めとするミニスタジオ参加国・都市における世界銀行支援の都市型洪水に対する強靭化のための投資プロジェクトでこのような革新的なネイチャーベースソリューション(NBS)が採用されています。

東京のミニスタジオは、統合型都市洪水リスク管理(IUFRM)に関する複数国対象の都市開発実務者向け対話型研修(テクニカルディープダイブ:TDD)の一部として実施され、9ヵ国から60名が参加しました。インドネシアのボゴールにおけるミニスタジオでは、都市型洪水に対する強靭化に関する国家レベルのワークショップの一部として実施され、同国の5つの都市の代表者が参加しました。

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水に配慮した都市デザインに関するミニスタジオ(上段:東京開催、下段:ボゴール開催)
写真:世界銀行
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過去一年で、新型コロナウイルスの感染拡大が、物理的な交流を大きく制限しました。しかし幸いにも、まだ実験段階ではあるものの、デジタルプラットフォームにより地理的距離を超えて実践的な学びの機会を提供することが可能となりました。

世界銀行は、シンガポールの公益事業庁(PUB:水に関する国家機関)シンガポール国立大学デザイン環境学部と協力し、シンガポールにおける都市型洪水に対する強靭化のためのネイチャーベースインフラを、バーチャル視察できるインタラクティブな360°写真を開発しました。この360°写真は、2020アンダースタンディング・リスク・フォーラムのテクニカルセッションで発表しました。シンガポールのABC(活動的で、美しく、清潔な/Active, Beautiful and Clean)水プログラムの一環として雨水インフラに統合されたNBSの利点を、参加者はバーチャル視察を通じて体験することができました。シンガポールの主要な集水域の川沿いにある4つのプロジェクトのバーチャル視察を、PUBが公開しました。視察を通じ、(1)多目的氾濫原などの大雨の被害軽減策、(2)雨水の貯水と再利用のための水処理、(3)社会と環境の相互便益(コベネフィット)の達成などへのアプローチが示されました。

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シンガポールのカラン川における都市型洪水への強靭化のためのグリーンインフラやNBSのバーシャル視察

主に視覚的な体験ですが、訪れた人は自由に探索し、物理的な空間とバーチャルで触れ合うことができます。バーチャル視察はダウンロードしてオフラインで利用することもでき、雨水インフラ設計にNBSを統合する利益を、より多くの方に知ってもらうことができます。バーチャル視察は、360°写真や動画、地図、図表やインタラクティブなポップアップといったデジタルツールを活用し、精選された包摂的で豊かな学びの体験を提供します。

世界銀行は今後もインタラクティブで実践的なツールの開発を通じ、都市型洪水に対する強靭化のために、革新的なアイデアを具体的な行動に移す支援を行っていきます。世界銀行のオープンラーニングキャンパス(OLC)では、「統合都市洪水リスク管理(IUFRM):日本の経験から学ぶ」と題するEラーニング・コースが最近開講されました。また、AR、VR、ドローンや3Dプリンターといった、デジタル技術とアナログの五感体験を融合する技術やプラットフォームを活用することで、ツール開発の可能性はさらに広がります 。実践的なツールは、都市部のリスクやインフラがどのような経験となるか、ステークホルダーが検討できるようにするため、重要です。今日の強靭なデザインや計画のグローバルな性質に鑑み、実践的な学びを後押しするデジタルツールは特に意義深いです。また、特定のソリューションの導入を決定する前に、地元住民は強靭化のための変革を、デジタルツールを利用して事前にバーチャルで体験することが可能となります。

 

1 関連取り組み:

バーチャルリアリティがフィジーにおける気候変動の影響を浮き彫りにする(英語)

マッピング・オタクから学んだこと:航空技術が太平洋島鎖国で自然災害からの復興に貢献(英語)

リソース:

統合都市洪水リスク管理のためのコミュニティおよびネイチャーベースソリューションー水に配慮した都市デザインに関するミニスタジオ:主催者・ファシリテーター用ハンドブック(英語):政府関係者、都市計画関係者、実務家、研究者、コミュニティーグループ関係者等、専門家の方にもそうでない方にもご利用いただける分かりやすいマニュアルです。

関連項目:

日本―世界銀行防災共同プログラム

都市型洪水対策に向け、環境配慮型ソリューションを統合

統合都市洪水リスク管理:日本の経験から学ぶ

インドネシアの都市型洪水に対する強靭化:都市計画レンズからみる新たなアプローチ

 



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