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特集 2020年4月1日

ベトナム:日本の知見を活用し、交通セクターに防災を導入

ベトナム・ハノイ

ベトナムの首都ハノイは北部経済の重要拠点であり、人口約800万人(2019年時点)の成長の著しい都市です。急速な都市化に伴い、ベトナムではより包括的でインクルーシブな可動性(モビリティ)へのアプローチが必要となってます。ハノイは紅河デルタの低地にあり、昔から洪水などの自然災害に見舞われてきました。交通セクターは異常気象に対し脆弱なことから、輸送設備の運行・管理制度における自然災害対策や、費用対効果の高い資源配分が必要となっています。

2020年4月から10月にかけて日本―世界銀行防災共同プログラムの支援により、東京地下鉄株式会社(東京メトロ)から専門家が派遣され、都市鉄道網の信頼性、強靭性、持続可能性をどのように強化していくかについて、ハノイ市に対しこれまでの経験の共有と提言が行われました。具体的には、1)総合指令所の設立を契機とした災害への強靭性の向上に関する説明、および2)東京メトロの鉄道輸送設備管理に関する包括的な事例紹介、という2つのプロジェクトを通じて経験の共有や提言が行われました。日本最大の地下鉄事業者である東京メトロは、複雑な地下鉄網の運営を通じ、この分野で豊富な経験を有します。

都市鉄道網の構築に着手しているハノイ市にとって、鉄道網の運営能力を向上してきた東京メトロの経験、とりわけ災害に対する強靭性を改善してきた経験を、現在進められている設計や計画に組み込むことは非常に重要であり有益です。東京メトロは現在、9路線195.1kmの線路、179駅を運営しており、路線別の指令所を総合指令所に統合した経験を有しています。同社は鉄道事故や自然災害によるさまざまな緊急事態にも対応してきました。また、ハノイのような新たな都市鉄道システムにおいて強靭性を高める仕組みを計画、実施してきた豊富な経験があります。こうした経験は、設立が提案されている総合指令所の都市鉄道網管理能力の向上に役立つよう、報告書にまとめられました。

一方で、世界銀行ベトナム・チームも東京メトロの支援を受け、東京メトロの地下鉄設備管理に関連する規制枠組みや制度、手続き、財務計画、技術の適用について知識を深めました。これにより、こうした様々な要素が、地下鉄設備管理の資金面および運用面での強靭性と持続可能性にどのように役立っているかを分析し、クライアント国に共有できる教訓を見出すことができました。分析の結果、輸送設備管理のグッド・プラクティスに関するグローバル・レポートが作成され、災害リスクの管理や予防を含む設備管理が、いかにベトナムの投資決定において有益な判断材料となるかを提案するために利用されています。

ハノイ市はこれらのプロジェクトを機に、今後の総合指令所の設立および交通セクターへの投資を通じた防災力の強化について考察することができました。具体的には、1)強靭性の高い設備管理、2)着実な定期点検の重要性、3)新技術活用による資源保全および課題解決、4)事故・災害対策の積極的な導入および緊急事態を想定した研修の促進への投資です。

進行中の都市鉄道開発計画に防災および持続可能性を組み込むべく、世界銀行はハノイ市と共にフォローアップ調査を開始し、ハノイ市の総合指令所および輸送設備管理システムに関する検討も行われています。同時に輸送設備管理に関係する事例収集も行っていきます。

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写真:駅の入り口の洪水制御対策。東京メトロ提供



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