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特集 2019年3月8日

日本―世界銀行防災共同プログラム:防災の主流化における日本と世界銀行のパートナーシップの更新

2019年3月8日
東京

概要

2014年の本プログラム発足以降の成果をさらに積み上げるべく、日本政府は2018年12月、財務省の支援を伴う追加5年のプログラム更新を承認しました。更新されたプログラムにおいては、i)強靭なインフラ、ii)リスクの認識、削減と備え、iii)災害リスクファイナンスと保険(DRFI)の3点を重点分野として支援を行っていく予定です。

世界銀行東京防災ハブでは本プログラムの更新(2018年12月)を記念して、第20回防災セミナー「日本―世界銀行防災共同プログラム(本プログラム):防災の主流化における日本と世界銀行のパートナーシップ」を開催しました。

本セミナーでは、日本政府と世界銀行の連携により進めている、途上国での成長戦略と投資における防災の主流化への支援拡大について、概要を紹介しました。また、「強靭なインフラ」をテーマに、日本と世界銀行の専門家によるパネルディスカッションを行い、強靭なインフラへの投資に関する直近の動向や可能性について話し合いました。

強靭なインフラ」の重要性

世界銀行駐日特別代表・宮崎成人氏による開会挨拶に続き、財務省国際局・開発機関課の課長である今村英章氏の挨拶では、本プログラムが引き続き途上国における防災の主流化を重点的に支援することの重要性、および、更新後のプログラムにおける重点的な取り組みが、強靭なインフラへの支援を通して質の高いインフラを優先するG20の方針に合致することの重要性を強調しました。世界銀行・気候変動グループ局長であるバーニース・ヴァン・ブロンクホースト氏による基調講演では、強靭なインフラには高い投資需要が存在することが強調され、G20の推定によれば、ライフラインサービスの利用に対する世界的な需要を満たすには、2040年までに94兆ドルものインフラ投資が必要になることが紹介されました。こうした課題への対処として本プログラムでは、世界銀行チームとの多分野にわたる連携を継続し、インフラ投資のサイクル全体(設計・施工から維持管理まで)における強靭性を高めるとともに、緊急時の対応計画策定や危機管理に活かしていく予定です。最後に、独立行政法人国際協力機構(JICA)地球環境部部長を務める武藤めぐみ氏から災害リスク削減に向けたJICAの構想について発表があり、開発事業やインフラにおける強靭性の促進のためには、世界銀行との連携が重要であることが強調されました。

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世界銀行駐日特別代表・宮崎成人氏(左上)、財務省・今村英章氏(右上)による開会挨拶と、独立行政法人国際協力機構(JICA)地球環境部部長・武藤めぐみ氏(右下)、世界銀行気候変動グループ局長・バーニース・ヴァン・ブロンクホースト氏(左下)による基調講演の様子。

「強靭なインフラ」をテーマとしたパネルディスカッション

パネルディスカッションは、世界銀行防災グローバルファシリティ(GFDRR)プラクティスマネージャーであるジュリー・ダナ氏の司会で始まりました。ダナ氏は、生命と財産を守り、被災時の回復を促して経済活動の混乱を最小化するには強靭なインフラへの投資が必要であること、また、開発事業における強靭なインフラの促進に向けた日本の指導力についても強調しました。

こうした背景が紹介されるなか、3名のパネリスト:日本シビックコンサルタント株式会社の構造設計部部長を務める荒木繁雄氏、独立行政法人水資源機構(JWA)の国際グループチーフである山下祥弘氏、国立研究開発法人土木研究所の水工研究グループ水文チーム主任研究員の萬矢敦啓氏が、本プログラムの第一期期間中、途上国で防災を主流化するために、強靭なインフラに関する日本の知識や専門技術がどのようにプログラムに活かされたかについて発表しました。(各パネリストのプロフィールについては、セミナーの議題ページをご参照ください。)

最初に荒木氏が、リマ地下鉄2号線(ペルー)およびキト地下鉄1号線(エクアドル)プロジェクトを支援する技術支援ミッションに参加しての感想を述べました。同氏はこの事業で、耐震基準の策定と地下鉄の構造設計に関し、技術的な専門知識を提供しました。荒木氏は、地下構造に日本の耐震基準を活用することで、カウンターパートが既存の基準強化のために追加要素を加えることを可能にしたと強調しました。

続いてインドの世界銀行ダム復旧・改修プロジェクト(DRIP)を2017年から支援している山下氏が、イチャリダムの地震対応マニュアルの開発に寄与した経験を語りました。日本で行われている一般的な方法は、地震の規模に応じ、オペレーターが適切な対応策を迅速に講じることができるよう、ダムに地震計を設置するというものです。ここで問題になったのは、インドのダムには地震計がほとんど設置されていないという点でしたが、気象庁との間で新たな連絡ルートを設けることを当該マニュアルに規定することで、この問題は解決できました。これにより、気象庁は地震が発生した際、同庁の地震計から観測結果をダムのオペレーターに送ることができるようになりました。

最後に萬矢氏が、パキスタン国シンド州政府が主要な運河や用水路の土砂堆積問題に取り組んだ際に直面した課題について話しました。インダス河最下流にあるために、同州ではこうした問題が発生していました。インダス河下流の土砂堆積のモニタリングと分析についてシンド州灌漑・電力局と共に日本で行った共同ワークショップを通し、州政府関係者が土砂水理学に関する能力を構築するという点に焦点を当てた技術支援が提供されました。このワークショップでは、北海道・石狩川にて実地調査研修も行われ、日本で用いている土砂堆積モニタリング方法や設備・機器について、シンド州政府関係者に幅広く紹介しました。

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世界銀行防災グローバルファシリティ(GFDRR)プラクティスマネージャー、ジュリー・ダナ氏(左上)日本シビックコンサルタント株式会社・構造設計部部長の荒木繁雄氏(右上)、独立行政法人水資源機構・国際グループのチーフ、山下祥弘氏(左下)、国立研究開発法人土木研究所・水工研究グループ水文チームの主任研究員、萬矢敦啓氏(右下)が、それぞれが携わった事業についてパネルディスカッションで語る様子。

この度のイベントでは、防災の主流化において途上国を支援するという共通の目標に向けた、日本と世界銀行との間の強固かつ継続的な協力が示されました。強靭なインフラは、強い世界的需要や、私たちの生活にとって重要なライフライン・インフラの強靭性を高めるために本プログラムが対応すべき、主要な重点分野の一つとなっていく予定です。日本には世界でもトップクラスの革新的かつ強靭なインフラシステムがあるため、日本の指導力や専門技術はこれまでも、そしてこれからも、世界銀行の活動を特徴づける知識や経験の重要な源となることでしょう。

 

関連リンク

第20回防災セミナー「日本―世界銀行防災共同プログラム:防災の主流化における日本と世界銀行のパートナーシップ」

地震の強靭性と地下鉄の構造に関する知識交換ワークショップ
Knowledge Exchange Workshop on Seismic Resilience and Underground Metro Structures(英語)

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