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東日本大震災から5年:日本の知見と教訓が防災の主流化促進に活かされる

2016年3月11日


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2011年3月11日 (金) 14時46分、東北地方を6分間にも及ぶマグニチュード9.0の激震が襲いました。地震とそれによって引き起こされた巨大な津波が東日本一帯に甚大な被害をもたらしたこの震災は、後に東日本大震災と呼ばれ、現在も人々の記憶に残るだけでなく、より強靭な社会の構築に向けた復興が続けられています。3月11日は、防災の主流化が開発計画や投資においていかに重要であるか教訓を得た日でもあります。

復興・再建を進める中、日本政府は、持続可能な開発のための防災におけるグローバル・リーダーシップをより確固たるものにしてきました。2012年10月、財務省とジム・ヨン・キム 世界銀行グループ総裁は、共同で仙台ステートメントを発表し、「途上国が災害に強い社会を構築できるようにするため、例えば日本に蓄積されたノウハウや専門性を活用して技術支援や財政的な支援を強化すること、また、例えば知識や経験を共有し交換するインターネット上のデータベースや能力強化プログラムを通じて、防災の取り組みを支援するための知見とパートナーシップを広めること」の重要性を強調しました。
 

求められる技術支援および資金調達への対応

2014年、財務省と世界銀行は、防災の主流化に向けて技術・資金調達を必要とする途上国の現状に対応するため、防災グローバル・ファシリティ (GFDRR) 運営による世界銀行東京防災ハブを設立しました。開設3年目となる本年、東京防災ハブは、自然災害に対する各国の強靭性構築に向け3,800万ドルを投資し、技術支援・知識開発を行う予定です。

東京防災ハブは、22件のプロジェクトを通し、32か国でリスク要因の特定と対応、パートナーとの連携強化、大規模投資を行い、防災の主流化促進に取り組んでいます。

  • ペルーでは、東京防災ハブを通した支援により、世界銀行のプロジェクトチームがペルー教育省と協働し、全国規模で学校校舎の地震リスク評価を実施しました。このプロジェクトの結果、ペルー政府より2,400万ドルが投資され、自然災害に最も脆弱であると診断された350校の耐震改修プログラムの施行に繋がりました。現在、地震リスク評価基準を用いて合計12,000校の改修計画が進められています。
  • 南アジア地域では、基本インフラ整備の強靭性を構築するための支援を行っています。例をあげると、ブータンにおける道路整備、アフガニスタンにおける灌漑 (かんがい) 整備、バングラデシュの水事業公社の事業継続計画、インドおよびネパールにおける水力発電用ダム整備の推進等があります。
  • ネパールでは、2015年に壊滅的な被害もたらした地震からの復興支援として、災害時の保護を考慮にいれた社会保護システムの構築を支援しています。本システムは復興支援というだけではなく、将来起こり得る災害への長期的な事前準備としての役割を果たします。この取り組みは、世界銀行が支援するネパール政府による住宅再建プログラムの実施の一端を担っています。
     

東京防災ハブは、途上国が日本の専門知識や卓越した技術を学ぶための窓口、ならびに途上国と日本の相互知識交流促進拠点としての役割を担っています。

  • 東京防災ハブは、東京都水道局の協力を得て、バングラデシュ・チッタゴン市の水事業公社、フィリピンのマニラ上下水道供給公社の有識者による会議を開催しました。会議では、東京都の経験を学び、緊急時対応計画を含む事業継続計画による運用価値の向上、有用性を高めるための具体的手順に焦点をあてた討論を行いました。
  • 水資源機構を通し、地震により引き起こされるダムのリスクに対する事前準備について、インドの水事業関係者への技術情報の提供、有識者との意見交換を通した能力開発を行っています。
  • ガーナでは、国際協力機構 (JICA) と科学技術振興機構 (JST) の支援により行われている「アフリカ半乾燥地域における気候・生態系変動の予測・影響評価と統合的レジリエンス強化戦略の構築 (CECAR-Africa)」プロジェクトの一環として、神戸大学の研究グループが開発した黒ボルタ川の放水量測定方法論を活用しています。世界銀行のプロジェクト・チームは、ガーナと日本の神戸大学・京都大学の研究者らを結びつけ、本方法論の試験適用に必要なデータ・アクセスを支援しました。こうした双方間の協力を経て、本プロジェクト担当のガーナ政府水文関係者が、2つの大学が提供する日本での研修に招待されるなど、日本の防災の知見を活用した能力開発・育成に繋がっています。
     

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