ウクライナ戦争、新型コロナウイルス感染症パンデミック、気候変動はじめ、様々な危機が重なり合うなかで、途上国政府の対応能力は前例のないほど限界に達しつつあります。公的機関に対する人々の信頼は失われ続けており、現在の社会契約のあり方を更新することが急務です。公共セクターのガバナンスと汚職防止は、途上国の開発における最も重要な優先事項のうち、引き続き上位に位置付けられており、途上国政府は民間セクターの発展にとっての障害を取り除きながら、増大する国民の需要に応えるために、より少ない労力でより多くのことを効果的かつ効率的に行う必要があります。世界銀行では、気候変動とパンデミックのリスクに効果的に対処するには、リスク管理を組み込み、緊急時に不測の事態に対応できるよう、より強力かつ柔軟で、より即応性の高い公共サービスが求められます。政府の運営、サービス提供、国民との交流のモデルを適応させる必要性を踏まえ、途上国政府のデジタル化を通じて公共セクター改革を支援し、市民を中心に据えた、わかりやすく、効率的かつ透明性の高い政府づくりを目指すGovTechアプローチも進めています。
今回のセミナーでは、アルトゥーロ・エレーラ・グテレス世界銀行ガバナンスグローバルプラクティス グローバルディレクターの来日の機会にあたり、途上国政府が直面するガバナンスセクターの課題、ガバナンスセクターにおける世界銀行の取り組みをご紹介しました。セミナーではまた、ガバナンスセクターで世界銀行が求めている人材像、世界銀行への転職やキャリア構築をご希望の皆様向けのアドバイスもお話ししました。
今回の滞在中、2023年9月11日には、開発経済学分野を中心とした日本の研究者の皆様と、ガバナンス分野の課題や世界銀行の取り組みについて議論するラウンドテーブルも開催しました。
日時
2023年9月12日(火)午後6時~午後7時30分(日本時間)
スピーカー
世界銀行 ガバナンスグローバルプラクティス グローバルディレクター
メキシコ出身。実務、開発、研究それぞれの面でガバナンスセクターにおいて豊富な経験を有する。2010年、ラテンアメリカ・カリブ海地域担当上級公共セクター管理専門官として、世界銀行に入行。ラテンアメリカ・カリブ海地域総局ガバナンスセクター担当マネージャー、同プラクティスマネージャー、東アジア・大洋州地域ガバナンスプラクティスマネージャーを経て、2018年から2021年まで、メキシコ政府で大統領政権移行チームの財務チーム共同ヘッド、財務副大臣、財務大臣を歴任。メキシコ大学院大学(El Colegio de Mexico)およびニューヨーク大学で金融・銀行論、マクロ・ミクロ経済学の教歴を持つ。ニューヨーク大学で経済学博士号を取得。
セミナー資料
What is Governance at the World Bank? And while we’re at it, what is the World Bank?(英語、PDF)