生産的目的(飲料水、エネルギー、食糧安全保障など)で貯水するためのダム開発は、東アジア・大洋州(EAP)と南アジア地域(SAR)全域にわたる経済的繁栄と貧困削減の手段に対して重要な貢献を果たしてきました。これらの国々は世界の大規模ダムの半数以上を占めます。このことを背景に、設計・建設の品質保証を通じたダムの安全性強化、持続的な収入源を提供する確実な資金調達メカニズムの確立、自然災害の特定、削減、備え、および対応能力構築のための制度作り、客観的且つ透明性のあるリスクベース・ポートフォリオ・アプローチを可能にする取り決めなど、多くの国がますます重い課題に直面しつつあります。
2017年4月3~7日、世界銀行東京防災ハブは日本政府財務省(MOF)、国土交通省(MLIT)、農林水産省(MAFF)、水資源機構(JWA)、国際協力機構(JICA)の協力を得て、EAP・SAR地域ワークショップおよび現地視察を開催しました。このプログラムは群馬県、ダム技術センター(JDEC)、日本大ダム会議(JCOLD)、東京電力(TEPCO)、日本工営、南オーストラリア大学、世界銀行東京開発ラーニングセンター(TDLC)の後援も受けました。
日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国の国際的専門家に加え、アフガニスタン、中国、インド、インドネシア、ラオス、ミャンマー、パキスタン、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナムから、約60人が参加し、それぞれのグッドプラクティスとワークショップで学んだことについての意見交換を行いました。この知識交換に基づき、参加各国は自国のダムの安全性と災害に対する強靭性を強化するために、以下の項目の改善を目的とする行動計画を立案しました。(i) 法的枠組み、(ii) 緊急対応当局・水文気象局・自治体との連携を含む機関間の取り決め、(iii) 災害耐久設計基準を含む規制関係書類、(iv) O&Mおよび災害対応・復旧のための財政枠組み、(v) ポートフォリオ・リスク評価およびO&M、(vi) 緊急事態準備計画と越境ダム。
ワークショップの結果、インドネシアは世界銀行に対し、ポートフォリオ・リスク管理およびコミュニティ中心の緊急事態準備・対応計画に関する技術援助の提供を依頼しました。
今回のワークショップと現地視察は、世界銀行のダム安全性管理および災害レジリエンスプログラムのための法律上・制度上の枠組みの国際比較研究に基づき行われました。この研究は、2002年に世界銀行が発表した「ダム安全性に関する規制枠組み:比較研究」および2014年の国際大ダム会議(ICOLD)のダム安全性レポート「ダム安全性の規制:世界の実情の概要」に基づく一連の国レベルのケーススタディーに基づいています。 途上国における防災の主流化のための日本-世界銀行プログラムは、日本に関するケーススタディーをまとめ、それは国際比較研究に組み込まれます。