「サーベイ・ソリューション」 は世界銀行開発経済総局(DEC)研究グループが国連食糧農業機関(FAO)と協力して開発したフリー・ソフトウェアで、途上国の統計局やデータ収集・分析に携わる研究機関が、複雑で大規模な調査を最小限の技術支援で実施できるよう、安価で持続的なソリューションを提供することを目的としています。
世界銀行は本日、サーベイ・ソリューションを開発したチームのマネージャーであるマイケル・ロクシン世界銀行開発経済総局(DEC)計算ツール担当マネージャーの来日にあたり、「サーベイ・ソリューションズ」の概要と使用事例についてご紹介するセミナーを東京で開催しました。
セミナーの冒頭、塚越保祐・世界銀行グループ駐日特別代表が、機材等のアップデート工事を終えた東京開発ラーニングセンターでの最初のセミナーへの参加者の皆様に対して歓迎挨拶を述べました。東京開発ラーニングセンターは、2003年に日本政府と世界銀行の共同プロジェクトとして開設され、この度、第3フェーズに移行します。第3フェーズでは対象地域を拡大し、途上国における業務との繋がりを深め、地球環境の保護とともに貧困撲滅と繁栄の共有の促進に向けて、知識だけでなくソリューションも提供します。
続いてロクシン計算ツール担当マネージャーが「サーベイ・ソリューションズ」を紹介し、質疑応答を行いました。このソフトウェアは、調査遂行機能とクラウドによるデータ集積ツールを備えたタブレット機器を使ってデータ収集とデータ分析の時間ラグを縮小し、データの質向上と調査コストの削減を大幅に実現します。例えば世帯調査の実施にあたり、GPS位置情報と調査時刻、音声・映像など統合して記録することができ、インタビュー調査で各質問に費やした時間、インタビュー担当者の変更、ログ確認などの様々な補足データ(パラデータ)も大量に収集することができます。さらに、レスポンシブ調査デザイン手法やアダプティブ調査デザイン手法を導入することにより、データの質を飛躍的に向上させます。
サーベイ・ソリューションを活用した調査は、南スーダンの紛争地域、パキスタンの過疎地、ニジェールなどの厳しい状況下での調査データ収集など、これまで32か国50調査以上で行われてきました。2015年5月、タイ統計局による富と健康調査(1200件のインタビューを含む5万世帯対象の調査)で使用され、それ以外にもザンビア生活環境モニタリング調査(1万2600世帯対象)、アフリカ、南・東アジア、ラテンアメリカなどでも、サーベイ・ソリューションを活用した調査が実施されています。
当日の資料:
Survey Solutions: Computer-Assisted Personal Interviewing (PDF)
スピーカー:
マイケル・ロクシン世界銀行開発経済総局(DEC)計算ツール担当マネージャー
ノースカロライナ大学で経済学博士号を取得後、1999年ヤングエコノミストプログラムで世界銀行開発経済総局(DEC)入行。貧困・不平等の測定、労働経済、応用経済などのリサーチプロジェクトに従事し、途上国世帯に対する危機・公共サービスの効果の測定手法の開発に携わってきた。世界銀行の自動経済分析のためのソフトウェア・プラットフォーム(ADePT)も率いている。