イベント
リスクとリターン:持続可能な開発のための防災
第11回防災セミナー「リスクとリターン:持続可能な開発のための防災」
2016年6月27日東京


防災セミナーシリーズ:世界銀行東京事務所、世界銀行東京防災ハブ 共催

日本は、世界で類を見ない大規模災害を経験してきており、経済成長にかかわるリスク管理の重要性を認識してきました。リスク管理への取り組みとして、長年にわたり企業による先進的な事業継続計画、耐震性を考慮した建造物、スーパー堤防や大規模地下放水路など革新的な河川工学を用いた洪水対策、火災や災害によるリスクに対応する保険などが整備されています。

リスクの把握は、日本が示したように、防災の重要な最初のステップです。世界銀行グループの新報告書「リスクの高い将来を形成する要素:我々の決断により形作られる潜在的災害リスク」は、2050年までに13億人の人々と158兆ドルの資産が洪水リスクに晒される可能性があるとして、都市化、気候変動、およびその他の要因により急速に高まるリスクの新しい評価の必要性を呼びかけています。

こうしたことを背景に、開発途上国が実施可能で効果的な災害への解決策が求められています。世界銀行グループが4月に発表した「気候変動行動計画」は、1億人を対象とした早期警報システムの整備や気象データの改善、5,000万人の貧困層への防災にかかる社会的セーフティー・ネット整備などの、世界銀行グループによる支援を掲げています。また、最大の効果を実現するため、各国による国家政策の策定支援ならびに災害への強靭性強化を含む民間セクター投資の活用に焦点をあてています。

本セミナーでは、ジョン・ルーム 世界銀行グループ 気候変動担当 シニア・ディレクターの来日にあたり、世界銀行グループによる今後の支援計画についてご紹介するとともに、日本の知識と経験を活用した取り組みの可能性について議論します。
 

プログラム

開会挨拶

塚越 保祐
世界銀行グループ 駐日特別代表

土谷 晃浩
財務省 国際局 開発機関課長

講演

ジョン・ルーム
世界銀行グループ 気候変動担当 シニア・ディレクター
「リスクとリターン:持続可能な開発のための防災」

長村 政明
東京海上ホールディングス株式会社 / 東京海上日動火災保険株式会社 経営企画部 部長 兼 CSR室長
「社会のレジリエンス強化と保険会社の役割」PDF (英語)

三村 信男
茨城大学長
「気候変動に対してレジリエントな社会を目指して」PDF (英語)

モデレーター

ジェームズ・ニューマン
世界銀行 防災グローバル・ファシリティ 東京防災ハブ 防災専門官

(敬称略)

❖ このセミナーは公開用に録画されます。

スピーカー紹介

セミナー報告

 


Image塚越 保祐
世界銀行グループ 駐日特別代表

2013年8月現職に就任。日本の政府、CSO、企業、研究機関等と世界銀行との協力関係強化を使命とする。就任以来、世界銀行東京事務所内に設置された東京防災ハブの設立にも参画。現職就任前、2008-2011年には米州開発銀行理事として同行の融資案件の審議と政策決定に関与。1988-1991年にはアフリカ開発銀行理事としてコートジボワールに駐在。また、1994-1998年には国際金融情報センター・ワシントン事務所長として米国の政策決定過程等につき調査。1980年4月大蔵省 (現:財務省) に入省。

 

Image土谷 晃浩
財務省 国際局 開発機関課長

 

 

 

 

Imageジョン・ルーム
世界銀行グループ 気候変動担当 シニアディレクター

2015年7月より現職。世界銀行グループの気候変動への取り組みの指揮、ならびに防災グローバル・ファシリティ (GFDRR) 所管。現職の前は、世界銀行グループのグローバル・プラクティスおよびクロス・カッティング・ソリューション・エリア総局の業務戦略局長を務めた。それ以前は、世界銀行東アジア地域総局の持続可能な開発担当局長として、域内22か国の水、都市、運輸、エネルギー、農村、農業、環境、社会セクター、災害リスク管理、および気候変動分野における業務を担当。南アジア地域総局の業務戦略局長、アフリカ地域総局の業務管理局長なども歴任。1989年の入行時はアフリカ局に配属され、道路計画、航空、水セクタ―におけるインフラ課題に取り組み、国際金融公社 (IFC) の金融、鉱業、農産業セクター向け案件を担当した。世界銀行以前は、ヨーロッパにおいてモニターカンパニー、南アフリカ生命保険会社のオールドミューチュアルに在籍。ケープタウン大学にて経済学、統計学および保険数理学学士号、オックスフォード大学にて計量経済学および経営学の修士号取得。

 

Image長村 政明
東京海上ホールディングス株式会社 / 東京海上日動火災保険株式会社 経営企画部部長 兼 CSR室長

2011年8月より東京海上ホールディングス株式会社 / 東京海上日動火災保険株式会社 経営企画部 部長 兼 CSR室長。金融安定理事会・気候関連財務ディスクロージャータスクフォースメンバー。アジア太平洋経済協力 (APEC) の下での官民連携プラットフォームであるアジア太平洋金融フォーラム (APFF) における災害リスクファイナンシングおよび保険に関する論議のシェルパ役。ジュネーブ協会・巨大災害と気候リスクプロジェクトのメンバー。仙台市で行われた第3回国連防災世界会議の公開フォーラムイベントとして2015年3月16日に開催された、マルチステークホルダー・ダイアログ「課題解決と影響度軽減に貢献する保険」の運営に貢献。また、国連環境計画・金融イニシアティブ (UNEP FI) の下、2012年6月に発足した持続可能な保険原則 (PSI) を推進。それに先立ち、2011年11月に東京にてアジアでのコンサルテーション会合の共同座長役の他、2013-2014年のボードメンバーも務めた。東京海上における現職の前は、2004-2011年に国際的な保険規制課題を担当、1997-2004年には米国イリノイ州シカゴに駐在し、米中西部の企業顧客担当として活動。

 

Image三村 信男
茨城大学長

地球環境工学、海岸工学の専門家。日本とアジア・太平洋諸国における気候変動の影響評価と適応策に関する研究プロジェクトを推進する。1992年以降、国連の「気候変動に関する政府間パネル (IPCC)」に専門家として参加し、第2次~第5次評価報告書の主執筆者、総括主執筆者を務めた。国内では、内閣府の総合科学技術会議、外務省、国土交通省、文部科学省、環境省、茨城県などの委員を務めた。『サステイナビリティ学をつくる:持続可能な地球・社会・人間システムをめざして』(新曜社)、『気候変動と地球規模でのサステイナビリティ:統合的アプローチ』(国連大学出版) など著書多数。1979年、東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、工学博士。カリフォルニア工科大学 研究員、茨城大学工学部都市システム工学科 教授、東京大学大学院工学系研究科 教授 (併任)、茨城大学 広域水圏環境科学教育センター 教授、同大学 地球変動適応科学研究機関 機関長などを経て、2014年9月より現職。

 

Imageジェームズ・ニューマン
世界銀行 防災グローバル・ファシリティ 東京防災ハブ 防災専門官

2013年世界銀行入行。以降、防災グローバル・ファシリティ (GFDRR) の業務計画全般に携わるとともに、南アジア地域および東アジア・大洋州地域における強靭な都市づくりや地域ポートフォリオ業務を担当。また、世界銀行の都市強靭性診断や、強靭な都市づくりに関するメデジン・コラボレーションの開発に貢献する。インド、ネパール、南アフリカ、ベトナムにおける災害後リスク評価を含む世界銀行のプロジェクトや技術支援にも従事。入行前は、ボルチモア市の10か年財務計画、リスク管理、シティスタット業績管理、オープン・データ業務に携わるともに、副調達官代理を務める。チリ共和国の市場調査組織では、ラテンアメリカ・カリブ海地域の金融と保険を担当。経済学と公共政策学を専門とし、ワシントン大学にて学士号取得後、ジョージタウン大学大学院と、チリ共和国サンティアゴ市にあるアルベルト・ウルタド大学大学院修了。非常勤教授としてボルチモア大学大学院 行政学修士プログラムの公共政策学および統計学の教鞭をとる。

 

(講演順、敬称略)

 

セミナー概要

セミナー報告

 

災害管理に関して、日本は、その先進的技術、しっかりした制度、投資や革新的な解決策で世界的に知られています。ジョン・ルーム 世界銀行 気候変動担当 シニア・ディレクターの来日の機会を捉え、世界銀行東京事務所世界銀行東京防災ハブは、第11回防災セミナー「リスクとリターン:持続可能な開発のための防災」を開催しました。当日は、途上国が直面する災害リスク、それらに対する革新的で創造的な解決策、および日本の投資や技術的な専門知識を最大限活用する機会について活発な意見交換が行われました。その中で、ルームは、持続可能な開発に向けた防災の重要性について強調しました。


" 日本のこれまでの災害対策は、適切な予防措置をとることで、多くの人命と何十億ドルにも上る経済成長の成果の消失を防ぐことができることを世界に示しました。これらは誰もが無視できない教訓です。我々はただ座して災害に襲われるのを待っているわけにはいかないのです。 "
Image

ジョン・ルーム

世界銀行 気候変動担当 シニア・ディレクター

セミナーでは、日本における災害リスク特定の実践事例が示しているように、リスクの認識こそが災害の脅威に対処する第一歩であることが強調されました。ルームは、地震やその他のリスクに対する日本の建築規制の調査・実施がその良い事例であると述べました。世界銀行東京防災ハブは、こうした建築基準に関する優れた実践事例 (グッド・プラクティス) を文書化し、フィリピンのような途上国における政策レベルでの実践方法を紹介する取り組みを行っています。信頼性の高いリスク情報が利用可能になれば、公的機関や民間セクターが、インフラ投資や保険のような防災のための投資や政策実施に関するより良い選択肢を手にすることになります。

 

正確なリスク情報をもたらす科学

セミナーでは、しっかりした科学研究や優良事例に基づいたリスク情報の必要性が指摘されました。長村政明 東京海上ホールディングス株式会社 / 東京海上日動火災保険株式会社 経営企画部 部長 兼 CSR室長から、保険商品および保険業界全体にとって、科学的根拠に基づいたリスク・モデルと、クライアントに対するより良いリスク管理のための堅実なアドバイスに多くを依存しているというご説明がありました。その上で、東京海上が東京大学と共同で取り組んでいる気候変動による台風の動きの変化予測や、東北大学災害科学国際研究所とともに取り組んでいる確率的な津波危険分析について紹介されました。

ルームは、太平洋自然災害リスク評価および資金援助イニシアチブ (PCRAFI) という保険プーリング・メカニズムを利用できる太平洋島嶼国の事例を取り上げました。該当国におけるリスク情報の向上により、この革新的な取り組みが可能になり、日本政府、日本-世界銀行防災共同プログラム、その他の多くのパートナーが、本プロジェクトを持続可能にする上で重要な役割を果たしています。

 

災害や気候変動に対し強靭な社会へ

セミナーでは、一般の人々およびすべてのレベルの関係者が、既存の情報をより利用しやすくすることで、社会の災害に対する強靭性を高められることが指摘されました。

三村信男 茨城大学長から、気候変動が社会にもたらす様々なリスクについて包括的にご説明いただきました。その中で、気候変動に強靭な社会は、科学と社会の両面からの取り組みによって形づくることができるというお話がありました。

そのためには、気候変動および災害の確固としたモデル作りが人々の備えや投資の意思決定の参考にできるようにすることや、世界的な専門家との情報交換などを通して途上国の対応能力を強化することが必要となります。

長村氏は、災害に備える行動様式や保険についての認識を醸成することが、社会の強靭性を高める上で中核的な要素であると述べました。

セミナーは、リスク情報や防災を積極的に開発・投資計画に統合することで、様々なセクターおよび社会全体において、持続可能な成長への見返りが生じるとして締めくくられました。


イベント詳細
  • 日時: 2016年6月27日 (月) 午後4時30分~午後6時
  • 場所: 世界銀行東京事務所 東京都千代田区内幸町2-2-2 富国生命ビル10階
  • 言語: 英語・日本語 (同時通訳付)
  • お問合せ: 世界銀行東京防災ハブ TEL: 03-3597-1320
  • drmhubtokyo@worldbank.org

日本-世界銀行防災共同プログラム