2023年9月25日~29日
廃棄物管理は、インドネシアの都市における優先分野
日本は、廃棄物管理分野において、過去何十年もの間、世界のトップランナーです。入念な計画、資源の活用、市民や民間セクターの参画、利害関係者間の調整、未来志向の構想、財政的・環境的に持続可能な解決策への注力などが、日本の都市が他国の都市と一線を画している理由となっています。
こうした知識を背景に、世界銀行と共同でインドネシア廃棄物管理・サービス向上プロジェクト(LSDP)の準備を進めているインドネシア政府は、廃棄物管理に関する日本の経験とノウハウを学ぶことに意欲的です。本プロジェクトは、廃棄物の収集、輸送、リサイクル、中間処理など、廃棄物管理の上流過程を対象とした融資案件です。インドネシア政府は特に、市民や民間セクターの参画、日本の都市における廃棄物の分別・収集・リサイクル手法について学ぶことに強い関心を寄せていました。東京開発ラーニングセンター(TDLC)は、都市連携プログラム(CPP)のパートナーと協議し、横浜市と北九州市の廃棄物管理事例を学ぶ訪日研修をインドネシア政府向けに実施しました。
TDLCは、2023年9月25日から29日まで、カストリウス・シナガ内務大臣特別補佐官率いる代表団10名と世界銀行タスクチームを受け入れました。代表団にはインドネシア内務省、海事・投資調整省、国家開発計画省、環境林業省など各省庁の代表が参加しました。
日本は廃棄物管理において包括的な施策を採用
日本は廃棄物管理に対して非常に地方分権的な手法を採用しており、国の政策や規制の全体的な監督のもと、自治体が廃棄物管理の方針を定めています。90年代後半に日本が積極的に採用し、重点を置いていた戦略は、廃棄物排出量の増加をGDPの増加を切り離すことでした。これは、あらゆるレベルの利害関係者、特に市民や民間セクターとの協力・連携によって可能となりました。また日本は、2000年代初頭には、廃棄物量の削減とリサイクル率の向上に同時に焦点を当て、持続可能な廃棄物管理を推進しました。日本の廃棄物の約80%は焼却処理されますが、残りの大部分はリサイクルされ、埋立地に運ばれるのはわずか1%です。効率的な廃棄物管理の実施を支えてきたのは、多重の法律によって弱められることのない、盤石な法的枠組みです。また、確固たる構想、明確な役割分担、利害関係者の能力強化も、廃棄物管理分野で直線経済から循環経済への転換を成功させるために重要です。多くの発展途上国では、将来の課題を考慮することなく、目の前の課題のみの対処を試みているため、根本的な解決策の実現には至っていません。
横浜市 - リサイクルと廃棄物処理の取り組み事例
横浜市は人口377万人、面積438平方キロメートルの日本最大の地方自治体です。横浜市は、発展途上国の多くの大都市にとって、都心レベルの廃棄物管理に関する興味深い事例といえます。 横浜市は、市内にある4つの焼却工場を利用して、廃棄物のほとんどを焼却処理しています。 インドネシア代表団は、ストーカー(火格子)式技術を使って廃棄物を焼却する鶴見工場を見学しました。代表団は、一般家庭や 商業施設から回収された廃棄物が焼却施設に運び込まれ、焼却され、発電される過程について学びました。この廃棄物処理施設では、1日あたり400トンを処理できるストーカー式焼却炉を3基使用し、毎日22メガワット(MW)の電力を生み出しています。横浜では、廃棄物処理における民間セクターの存在感が強く、J&T環境(株)が運営するプラスチックリサイクル工場の視察では、雨水貯留タンクの建設に使用するプラスチックの再資源化について学ぶことができました。J& T社は、家庭から排出される廃プラスチックを回収し、ベール状にして行政が運営するリサイクル業者に運搬する事業を市から受託しています。一貫した物流と廃棄物のリサイクル管理により、総合的なリサイクル事業に関するソリューションを提供しています。