静岡市は東京から新幹線で約1時間と地の利がよく、雄大な富士山を眼前に臨むことができるだけでなく、香り高いお茶や近海の新鮮な魚介など、豊かな食文化も大きな魅力です。また、配信ドラマで世界的に知られるようになった徳川家康の終焉の地であるなど、歴史的にも由緒あるまちです。
都市づくりにおいては、同市は特に洪水対策において重要な経験と知識を有しています。市の平野部を流れる巴川は、勾配が緩く流下能力が低いため豪雨などで洪水をおこしやすく、人々の多くが住む流域ではたびたび、甚大な浸水被害に見舞われていました。市では長年にわたり放水路や遊水地の整備などに取り組み、被害を最小限に抑えることに成功しています。東京開発ラーニングセンター(TDLC)が3月に実施した「都市の洪水管理に関する都市開発実務者向け対話型研修(TDD)」では、市の洪水対策について紹介しました。
さらなる協力関係の構築に向けて、2025年4月30日、TDLCは静岡市を訪れ、難波喬司市長、大石貴生副市長、吉田信博副市長および幹部らと対談しました。難波市長は、静岡市の人口70万人というバランスの取れたサイズ感に加え、政策策定と実行の双方を担う政令市である点においても、世界銀行の融資国にとって参考になる可能性が高いと、TDLCとのさらなる連携強化に向けて前向きな姿勢を示しました。大石副市長・吉田副市長らとの会談では、洪水対策に加え市が知見提供可能な分野など、より具体的な協業について意見交換しました。
市長らとの会談に加え、TDLCは市内の大谷川放水路や市民の憩いの場となっている麻機遊水地、市内中心部の駿府城公園の堀や小学校の校庭を利用した治水対策などを視察しました。市の洪水対策はハード面の整備だけでなく、県や民間セクター、市民などの協力のもとに実現されています。
難波市長は、昨今推奨されているEBPM(Evidence-based Policy Making)においてEvidence(証拠)と同様に、さまざまなステークホルダーのEmpathy(共感)を得ることの重要性を指摘しており、市の洪水対策にもその方針が生かされています。Empathyを重要視したリバブルな都市づくりを推進する静岡市には、TDLCの知見共有活動へのさらなる貢献が期待されています。