Skip to Main Navigation
BRIEF 2025年7月23日

都市インフラ管理への革新的アプローチ~日本の経験とグローバルな展開

Image


世界中で急速な都市化が進み、2050年までに人口の7割が都市部に居住すると予測されています。都市化にともない、より質の高い都市インフラが整備され、強靭かつ住みやすい都市が求められることになります。都市インフラ投資の必要額は、2030年までに年間4.5兆ドルから$5.4兆ドルに膨らむと推計されています。世界銀行東京開発ラーニングセンター(TDLC)の知見共有活動においても、都市インフラの整備と維持、および地域サービスの質の向上は、主要なテーマとなっています。

2025年6月17日、TDLCは質の高いインフラ投資(QII)パートナーシップとグローバル・インフラストラクチャー・ファシリティ(GIF)と共同で、都市インフラ管理の革新的なアプローチに関するセミナーを開催しました。

世界銀行、財務省、国土交通省、福岡市、東京大学、および民間企業からのプレゼンテーションが行われ、インフラの長期化計画、運営・維持管理(O&M)におけるマルチステークホルダーの参画、地方自治体の取り組み、および都市インフラ管理における官民パートナーシップ(PPP)の活用などを中心に議論が行われました。参加者は、日本の構造化された予防保全戦略、コミュニティベースのデータ活用、持続可能な資産管理における多様なステークホルダーの参画の重要性について学びました。

基調講演では世界銀行グループ所属のQIIとGIFのジェーン・ジェイミソンが、強靭なインフラへの投資の高いリターン($1の投資に対し$4の利益)を強調しました。「故障対応型維持管理」から「予防保全型維持管理」への移行は、コスト削減と資産寿命の延長に不可欠です。

Image
ジェーン・ジェイミソンは強靭なインフラへの投資の高いリターンを強調。

セミナーを通して強調されたのは、インフラの持続可能性、コスト効率、レジリエンスを確保するため、予防維持管理の重要性です。国土交通省の岩井聖氏は、予防維持管理が維持管理コストとライフサイクル費用を大幅に削減できることを示しました。東京大学の長山智則教授は、都市インフラの維持管理(O&M)を推進するためのマルチステークホルダー参画プラットフォームの重要性を説き、静岡県浜松市での取り組みを紹介しました。さらに、日水コンの川嶋幸徳氏 はQIIとGIFが協力したインドとインドネシアの事例を紹介、PT. AMOの小沢真氏はPPP(官民連携)の役割を強調し、日本と世界における民間セクターの参画事例を紹介しました。福岡市役所の管谷悌治氏は、PDCA(計画・実行・検証・改善)アプローチに基づく計画の重要性と、O&Mを迅速かつスムーズに行うための既存の部品や設備の統合方法について説明し、AIやドローン技術などの技術革新がメンテナンス効率の向上に潜在的な可能性を有することを指摘しました。

Image
国や自治体、大学、民間企業からのスピーカーが実践的な知見と事例を紹介した。

セミナーは、開発途上国における実践可能な戦略への転換を目的として、地域に根差したインフラの長期化計画、効果的なPPPモデル、データ利活用によるO&M計画、地方自治体レベルでのマルチステークホルダー参画の推進の重要性を認識し、継続的な連携と知識共有の必要性を呼びかけて閉幕しました。