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Statement 2017年12月14日

UHCフォーラム2017「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)東京宣言: UHC実現に向けた取組の加速」

(仮訳)

UHCフォーラム2017の共催者は、2030年までにUHCを達成すべく取組を加速させ、誰であろうと、どこに住んでいようと、世界中すべての人々に保健医療サービスを普及させるとのコミットメントを再確認する。

「持続可能な開発目標(SDGs)」は、経済、社会、環境の各次元でバランスをとりつつ持続可能な開発を図る総合的な目標であり、個々の目標を切り離して論じることはできない。

我々は、SDGsのターゲット3.8の重要性を再確認する。すなわち、すべての人々に、質が高く総合的な「人間中心の」保健医療サービスを確保しようという目標である。具体的には、健康増進、予防、治療、機能回復、緩和医療に関する保健医療サービス、及び安全かつ効果的で質が高く手頃な価格の基礎的医薬品及びワクチンを指す。そのいずれについても、人々が支払いの際に経済的な困難に苦しめられることがあってはならない。また、疾病の大流行など公衆衛生上の危機からの人々の保護と、そうした緊急時や危機への迅速な対応の重要性を強調する。

我々は、健康は人権の一部であり、UHCは、すべての人の健康と人間の安全保障に不可欠であることを確認する。我々は、社会から取り残され、極端に困難な環境にあるマイノリティを含めた人々の声とニーズを取り入れた保健サービスの設計及び提供に対して、特別な努力を必要とする「誰も取り残さない」という理念を順守する。その際に、特に優先対象となるのは、子供や女性など特に弱い立場にある人々、緊急事態の影響下にある人々、難民や移民、そして社会から取り残され、見下され、極端に困難な環境にある少数の人々である。

我々は、UHCは、技術面でも資金面でも達成可能であることを確認する。UHCは、生涯を通じて大きな利益をもたらし、雇用創出と包摂的な経済成長を推進する。UHCの達成は、持続可能な開発アジェンダの礎のひとつであり、すべてのSDGs目標達成に向けた歩みに貢献する。UHCなしには、何十億という人々が、充実した生産的な生活を送る機会を失う恐れがあり、何億人もが、保健医療を受けるために貧困に陥るリスクにさらされる。脆弱と見なされている国や状況下に暮らす人は数百万人に上る。こうした状況下でのUHC達成には、分野の垣根を超えた強い連携が求められる。

我々は、「国際保健のためのG7伊勢志摩ビジョン」、「アフリカにおけるUHC実現に向けた政策枠組み」を確認した「TICAD VIナイロビ宣言」、及び、UHC2030による「UHC達成に向けた保健システム強化:健康増進社会のための共同ビジョン」を確認した「G20ベルリン保健大臣会合での宣言」をはじめとする地域・国際的な一連の宣言を再認識し、これらに基づいて取組を進める。これらの文書はいずれも、強靭かつ持続可能な保健システムの構築と強化、及び公衆衛生上の緊急事態への統合的な形での「備え(preparedness)」の必要性を強調している。その観点から、公衆衛生上の危機への備えと対応の強化については、世界保健機関(WHO)などの国連(UN)パートナー間での協調的メカニズムの形成、及びWHOの緊急対応基金(CFE)や世界銀行のパンデミック緊急ファシリティ(PEF)といった危機時のファイナンスメカニズムを含め、進歩が見られる。

我々は、「UHCグローバル・モニタリング報告書2017」の公表を歓迎する。同報告書によると、UHC達成には、依然としてなすべきことが山積している。

  • 世界の人口の少なくとも半数が、健康を守り増進するための良質な基礎的サービスにアクセスがない。
  • 自己負担の医療費が家計の少なくとも10%を占める人口は8億人に上り、医療費負担の結果、年間1億人近くが極度の貧困に陥っている。

我々は、各国における取組にもかかわらず、UHC達成に向けた進展が遅々としていることを懸念し、UHC達成への取組加速に向けて一層野心的な行動を起こすよう求める。

UHC達成に向けたグローバルなモメンタムの強化

  • 2030年までの中間点である2023年を期限に、良質な基礎的保健サービスをさらに10億人に提供し、医療費のために極度の貧困に陥る人を5千万人まで半減させる必要がある。
  • UHC達成に向けた進捗状況を、国連SDGsのレビュー・プロセスの一環として追跡してグローバル・モニタリング報告書を定期的に発表し、今後のUHCフォーラムにおいて報告書の主な内容を検証する。「グローバル・モニタリング報告書2017」の中に、UHC達成に向けた進捗状況測定の統一手法が盛り込まれたことを歓迎する。また、エビデンスに基づく政策立案、及び進捗状況の評価に情報を提供する国の国内及び地方レベルのデータの拡充、さらには各国の関係者によるデータの分析・活用能力の強化の重要性を強調する。
  • 国連事務総長によって設置された「保健医療部門の雇用と経済成長に関するハイレベル委員会」の提言を踏まえ、また「保健人材に関するダブリン宣言」に明記された通り、我々はすべての関係者に対し、特に女性のエンパワーメントと若者の雇用に重点を置きつつ、UHCに向けて保健人材と社会福祉人材への投資を拡大して変革するよう求める。
  • UHCについて高まった政治的モメンタムを維持するため、「プライマリーヘルスケアに関する国際会議」にて採択された アルマアタ宣言の40周年記念会合が2018年に開催されることを歓迎する。また、毎年12月12日を「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)デー」とする決定を歓迎し、2019年のUHCに関する国連ハイレベル会合を支持する。そして、UHC促進に向け、国連システムのハイレベルにおけるグローバル・リーダーシップをより強固にすることを支援していく。

UHC達成に向けた各国主導のプロセスの加速化

  • 我々は、各国がUHC達成に向け、明確な目標と指標、具体的な計画を盛り込んだ独自のロードマップ策定できるよう、世界中の政治的リーダーシップを共同で動員することを確約する。我々はまた、UHC2030によるグローバル・コンパクトの原則に沿いつつ、各国主導の複数の関係者による協調のプラットフォームを通じ、開発パートナー間で取組の整合性を高めるべく支援していく。非政府組織、民間セクターのパートナーから幅広く関係者を招き、オーナーシップと説明責任の共有を図る国レベルの取組を進めていく。我々は、東京UHC共同イニシアティブ、UHCパートナーシップ、健康増進社会に向けた(Providing for Health)パートナーシップ、グローバル・ファイナンシング・ファシリティ(GFF)などの、UHCや危機への備えのための国別システムとプラットフォームの強化を協調的に図る国際的なイニシアティブによる貢献を歓迎する。
  • UHC達成に向けて、健康安全保障を確保し、国際保健規則(2005)の下での国際的な協力を促進するため、監視システムを含め、疾病発生などの緊急事態の予防、察知、対応に的を絞った投資を確約する。そのために、脆弱で紛争の影響下にあるという状況を重点対象とし、そうした状況におけるUHC達成に資金を確保する。また、我々は、水・衛生や栄養、住宅、教育などの社会サービスへの公平なアクセスが確保された健康増進社会の構築に向け、確かな基盤構築に投資し、政策やプログラム全体にジェンダーを主流化することをコミットする。
  • UHCのための資金として、我々は、更なる公的資金動員と患者の自己負担削減に向け国内資金を動員し管理するため、各国における保健省と財務省の間の踏み込んだ対話を支援する。また、各国による市民やコミュニティのプラットフォームの動員、予算編成プロセスの強化、保健関連支出における相応の価値・公正性確保に向けた費用追跡、保健関連支出の効率性拡大が不可欠である。
  • GFFや世界銀行のIDAなどの開発パートナーから提供される有効かつ革新的な資金ツールもまた、国内資金を補完する。その観点から、我々は、IDA第18次増資(IDA18)における、日本及び他のドナーにより支持された、国際保健アジェンダに対する強い政策コミットメントを歓迎し、UHC達成に向け更なるIDA資金の動員を期待する。また、UHC支援に向けて、国際開発金融機関に加え、世界エイズ・結核・マラリア対策基金 (グローバルファンド:世界基金)、Gaviワクチンアライアンス、更には、メリンダ&ビル・ゲイツ財団などの財団を中心に、すべてのパートナーによる資金提供拡大と取組の一層の調整を求める。UHCのための資金調達をさらに促進するため、我々は2019年までに各国の保健省と財務省とのハイレベル対話の開催を検討する。

UHCのためのイノベーション

  •  我々は、この野心的取組には、「これまでと同じやり方」を超える必要があるとの認識に立ち、グローバル・レベルと国レベルにおいて、イノベーションが持つ変革の可能性を解き放つ戦略、政策、システムを構築し支援することをコミットする。そのためには、各国がUHCに向けたそれぞれの優先課題を明確に示す必要がある。
  • 我々はまた、公衆衛生上の緊急事態発生時も含め、協調的な取組と研究開発を通じて医薬品・ワクチンへのアクセスを改善するため、グローバルヘルス技術振興基金(GHIT)、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)、国際エイズワクチン推進構想(IAVI)などのプラットフォームを活用することを約束する。
  • UHC達成に向けた進展を加速するには、UHC2030などのプラットフォームを通じた各国の経験からの体系的学習、政策の一貫性確保、実施に当たっての障害への対応強化、及び保健セクターにおけるシステム・イノベーションと効果的で手頃な価格のテクノロジーの可能性の解放が必要となる。我々は、重要な知識の創出・共有を促進するとともに、既存のネットワーク間の協調を足掛かりとし、将来的には拡大することで、UHC達成に向けた学習とイノベーションを促進することを約束する。

我々は、今後、世界保健総会(WHA)、及び持続可能な開発のためのハイレベル政治フォーラム、更には2018年に開催予定のアルマアタ宣言40周年記念会合などのハイレベルなUHC会合の場で、そして次回UHCフォーラムの場において、UHC達成に向けた大きな進展を国際社会と共有できることを期待する。また、今後のUHCフォーラムの継続的開催に対する支援を表明した日本政府に、心から感謝申し上げる。

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