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プレスリリース2025年6月10日

世界経済の成長率は、景気後退期を除けば2008年以来最も低い水準に

70%の国について2025年の成長予測を下方修正

ワシントン、2025年6月10日-世界銀行は報告書「世界経済見通し」の最新版において、貿易摩擦の悪化と政策の不確実性により、今年の世界経済の成長率は、過去の世界的な景気後退期を除けば、2008年以来最も低い水準になるとの見通しを発表した。この混乱の影響はすべての地域と所得グループに及び、70%近くの国の成長予測が下方修正された。

2025年の世界経済の成長率は2.3%に減速するとみられる。これは年初の予測よりも0.5%ポイント近く低い。世界的な景気後退は予想されていないが、今後2年間の予測が実現した場合、2020年代の最初の7年間の世界経済の平均成長率は、1960年代以降のどの10年間よりも低い水準になる。

「アジアを除く途上国は開発の停滞地帯になりつつある」と、インダーミット・ギル世界銀行グループ・チーフエコノミスト兼上級副総裁(開発経済担当)は述べた。「途上国は10年以上にわたり、自国の成長をアピールしてきた。途上国の経済成長率はこの30年間徐々に低下しており、2000年代の成長率は年6%だったが、2010年代には5%に低下し、2020年代には4%を下回っている。これは世界貿易の推移とも一致しており、2000年代には平均5%だった世界貿易の成長率は、2010年代には約4.5%、2020年代には3%未満に低下した。投資の伸びも鈍化している。他方で、債務は過去最高水準に達した」

2025年は途上国の60%近くで成長が鈍化するとみられる。2025年の途上国の成長率は平均3.8%、その後2026年から2027年にかけて平均3.9%まで小幅に回復すると見込まれる。この水準は、2010年代の平均成長率より1%ポイント以上低い。2025年の低所得国の成長率は5.3%と予想されており、2025年初めの予測よりも0.4%ポイント下方修正された。関税の引き上げや労働市場の逼迫も世界のインフレ率に上昇圧力をかけている。2025年の世界のインフレ率は平均2.9%と予測されており、依然としてコロナ前の水準を上回る。

成長の鈍化は、途上国が進めている雇用創出の促進、極度の貧困の削減、先進国の国民一人あたり所得との格差の縮小に向けた取組みの妨げとなる。途上国では、2025年の国民一人あたり所得の成長率は2.9%と予測されているが、これは2000年から2019年の間の平均成長率を1.1%ポイント下回る。中国を除く途上国の国内総生産(GDP)が2027年の予測値である4%で成長し続けたとしても、経済全体の生産活動がコロナ前のペースを取り戻すまでには約20年を要する。

しかし主要国が貿易摩擦を緩和できれば、政策の不確実性や金融市場の変動性は抑制され、世界経済の成長率は予想よりも早く回復する可能性がある。分析では、関税を2025年5月末時点の半分の水準まで引き下げる合意によって現在の貿易紛争が解消された場合、世界経済の成長率は2025年から2026年にかけて、平均0.2%ポイント上昇することが示されている。 

「新興国と途上国は貿易統合の恩恵を受けてきたが、現在は世界規模の貿易紛争の最前線に立たされている」と、アイハン・コーゼ世界銀行副チーフエコノミスト兼見通し局長は述べた。「最も賢明な対応策は、新たなパートナーとの統合に向けた努力を一層強化し、成長のための改革を推し進め、財政の強靱性を強化することで、この嵐を乗り切ることだ。貿易障壁は高まり、不確実性が増しているが、国境を越えた対話と協力をさらに促進することで、より安定した豊かな未来を切り拓くことができる」

報告書は、貿易障壁が高まる中、途上国はより広範な自由化を目指すべきであり、他の国々と貿易・投資のための戦略的パートナーシップを構築し、地域レベルの貿易協定等を通じて、貿易の多様化を推進する必要があるとしている。限られた政府資源と高まる開発ニーズを踏まえ、政策立案者は国内歳入の動員、最脆弱世帯に重点を置いた財政支出、財政枠組みの強化に重点を置くべきである。

最後に、経済成長を加速させるためには、途上国はビジネス環境を改善し、生産的な雇用を促進する必要がある。そのためには労働者が必要なスキルを習得できるよう支援するとともに、労働市場を整備し、労働者と企業を効率的に結びつけることが求められる。最脆弱国を支援するためには世界規模の連携が不可欠であり、多国間支援や譲許的融資に加えて、紛争下の場合は緊急援助活動や緊急支援の提供なども実施する必要がある。

「世界経済見通し」報告書の全文(英語)をダウンロードする:https://www.worldbank.org/gep

成長率データをダウンロードする

図表をダウンロードする

地域別見通し:

東アジア・太平洋地域:経済成長率は2025年に4.5%、2026~27年は4.0%に減速。詳細は地域別概要を参照。

ヨーロッパ・中央アジア地域:経済成長率は2025年に2.4%に減速し、2026~27年に2.6%に小幅に上昇。詳細は地域別概要を参照。 

ラテンアメリカ・カリブ海地域:経済成長率は2025年には横ばいの2.3%を維持した後、堅調に推移し、2026~27年は平均2.5%に上昇。詳細は地域別概要を参照。 

中東・北アフリカ地域:経済成長率は2025年に2.7%に上昇し、その後さらに加速して2026~27年は平均3.9%に上昇。詳細は地域別概要を参照。

南アジア地域:経済成長率は2025年に5.8%に減速した後、堅調に推移し、2026~27年は平均6.2%に上昇。詳細は地域別概要を参照。 

サブサハラ・アフリカ地域:経済成長率は2025年に3.7%へと小幅に上昇し、2026~27年は平均4.2%に上昇。詳細は地域別概要を参照。 

ウエブサイト: worldbank.org/ja/publication/global-economic-prospects

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X(旧ツイッター): twitter.com/worldbanktokyo

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プレスリリース番号: 2025/075/DEC

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