低調な経済成長、多角的な課題

世界経済の成長率は本年、金融政策の引き締めや制約的な金融環境、貿易や投資の世界的な低迷によりさらに減速する見通しだ。下振れリスクとしては昨今の中東紛争の激化、金融ストレス、根強いインフレ、貿易の分断化、気候関連の自然災害などがある。債務免除の供与、貿易統合の促進、気候変動への対処、食料不安の軽減には国際協調が必要だ。新興国及び途上国、特に一次産品輸出国では、財政政策は依然として景気循環増幅的であり変動が大きくなっている。すべての新興国及び途上国において、適正なマクロ経済・構造政策と十全に機能する制度が、投資と長期的な成長を押し上げるのに不可欠となっている。

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世界経済予測

2024年の世界経済の成長率は2.4%と3年連続の減速が予想される。金融政策の引き締め、制約的な与信状況、貿易と投資の世界的な低迷が成長を下押しする見通しだ。最近の中東紛争は地政学的リスクを高めている。債務の膨張、気候変動、貿易の分断化、食料不安、紛争といった諸課題に対処するには国際協調が不可欠だ。新興国及び途上国において財政余地が限られていることが、歳出の効率を高める重要性を浮き彫りにしている。また、投資を継続的に加速させる果断な政策行動も必要だ。

  実質GDP成長率 (%)   改定*
  2021 2022 2023e 2024f 2025f   2023e 2024f 2025f
世界 6.2 3.0 2.6 2.4 2.7   0.5 0.0 -0.3
先進国 5.5 2.5 1.5 1.2 1.6   0.8 0.0 -0.6
新興国・途上国 7.0 3.7 4.0 3.9 4.0   0.0 0.0 0.0
   東アジア・大洋州地域 7.5 3.4 5.1 4.5 4.4   -0.4 -0.1 -0.1
   ヨーロッパ・中央アジア地域 7.1 1.2 2.7 2.4 2.7   1.3 -0.3 0.0
   ラテンアメリカ・カリブ海地域 7.2 3.9 2.2 2.3 2.5   0.7 0.3 -0.1
   中東・北アフリカ地域 3.8 5.8 1.9 3.5 3.5   -0.3 0.2 0.5
   南アジア地域 8.3 5.9 5.7 5.6 5.9   -0.2 0.5 -0.5
   サブサハラ・アフリカ地域 4.4 3.7 2.9 3.8 4.1   -0.3 -0.1 0.1
* 2023年6月予測からの%㌽変化
すべてのデータはExcelファイルとしてダウンロードできます。

地域別予測

新興国及び途上国の経済成長見通しは、世界及び国内の情勢が変化し続ける中、地域によりばらついている。中国の景気減速が重しとなっている東アジア・太平洋地域、また、ヨーロッパ・中央アジア、南アジアの各地域は今年、成長が弱まる見通しだ。その他の地域では程度の差があるものの成長は加速する。来年は、世界経済の活動が強まる中で、ほとんどの地域で成長が加速すると予想される。下振れリスクはすべての地域において、紛争の激化、エネルギー及び食料の価格変動の高まり、海外需要の軟化、金融環境のさらなる引き締め、気候変動に関連した自然災害である。

東アジア・太平洋地域: 経済成長率は2024年に4.5%、2025年に4.4%に減速。詳細は地域別概要 を参照。

ヨーロッパ・中央アジア地域: 経済成長率は2024年に2.4%に減速した後、2025年は2.7%に上昇。詳細は地域別概要(英語) を参照。

ラテンアメリカ・カリブ海地域:経済成長率は2024年に2.3%、2025年に2.5%に上昇。詳細は地域別概要(英語)を参照。

中東・北アフリカ地域: 2024年の成長率は3.5%に回復し、2025年も横ばい。詳細は地域別概要(英語) を参照。

南アジア地域: 2024年の成長率は5.6%まで低下し、2025年は5.9%に上昇。詳細は地域別概要(英語) を参照。

サブサハラ・アフリカ: 2024年の成長率は3.8%まで回復し、2025年にはさらに4.1%まで上昇。詳細は地域別概要(英語)を参照。

プレスリリース

発行日 プレスリリース 東アジア・大洋州地域
2024年1月9日 世界経済、過去30年で最低の水準へ ―投資拡大と財政政策強化に向けた改革が流れを変える可能性― (PDF)
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 2022年6月7日 経済成長急減速の中高まるスタグフレーションリスク; ウクライナの戦争はインフレ高進と金融環境のタイト化を招来 (PDF)
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