世界経済見通し

減速する成長と金融リスク

世界経済の成長率は、高インフレ、金融引き締め策、そしてより制約的な与信状況から大幅な減速が予想される。銀行システムにおける混乱の広範化と金融引き締めの強化は、世界経済のさらなる成長鈍化を招き、そして脆弱な新興国及び途上国での金融混乱を引き起こす可能性がある。マクロ経済と金融環境の安定化のため包括的な政策措置が必要となっている。多くの新興国及び途上国、特に低所得国では、財政持続性のために歳入の増加、歳出の効率化、及び債務管理の改善が必要だ。気候変動への対応、危機や飢餓に見舞われている人々への支援、そして必要に応じての債務免除には国際協調が引き続き不可欠だ。

On selection, leaving this page

世界経済予測

世界経済の成長率は2023年に2.1%へ減速するとみられる。世界的な金融引き締め、低調な外需が新興国及び途上国の成長への重しとなるであろう。下振れリスクとして、金融ストレスの広範化や金融政策のさらなる引き締めなどが挙げられる。金融規制改革、気候変動の抑制、債務免除の供与には国際協調が必要である。マクロ経済の安定化には中央銀行への信頼性の維持が不可欠だ。歳出のさらなる効率化と国内歳入の増加を進めることで財政余地は段階的に回復し得る。潜在成長力の低下傾向を反転させるには物的・人的資本や労働力供給の強化、サービス部門の生産性向上や貿易の活発化を醸成する改革が必要となる。

  実質GDP成長率 (%)   改定*
  2020 2021 2022e 2023f 2024f 2025f   2023f 2024f
世界 -3.1 6.0 3.1 2.1 2.4 3.0   0.4 -0.3
先進国 -4.3 5.4 2.6 0.7 1.2 2.2   0.2 -0.4
新興国・途上国 -1.5 6.9 3.7 4.0 3.9 4.0   0.6 -0.2
   東アジア・大洋州地域 1.2 7.5 3.5 5.5 4.6 4.5   1.2 -0.3
   ヨーロッパ・中央アジア地域 -1.7 7.1 1.2 1.4 2.7 2.7   1.3 -0.1
   ラテンアメリカ・カリブ海地域 -6.2 6.9 3.7 1.5 2.0 2.6   0.2 -0.4
   中東・北アフリカ地域 -3.8 3.8 5.9 2.2 3.3 3.0   -1.3 0.6
   南アジア地域 -4.1 8.3 6.0 5.9 5.1 6.4   0.4 -0.7
   サブサハラ・アフリカ地域 -2.0 4.4 3.7 3.2 3.9 4.0   -0.4 0.0
* 2023年1月予測からの%㌽変化
すべてのデータはExcelファイルとしてダウンロードできます。

地域別予測

新興国及び途上国の経済はさまざまな世界的逆風と対峙している。中国の経済活動再開に伴う回復と幾つかの主要国の成長見通しの改善につれ、東アジア・大洋州とヨーロッパ・中央アジアの各地域での2023年の成長は上向くと予想される。対照的に他の全ての地域では、低調な外需、世界的な金融政策の引き締め、そして高インフレによる経済活動への重しで成長は鈍化すると予測される。 来年は逆風が弱まり、ほとんどの地域で成長が加速すると予想される。全ての地域に共通する見通しの下振れリスクは、さらなる世界的金融ストレスや根強い国内インフレだ。地政学的緊張、紛争、社会不安、気候変動による自然災害も下振れリスクとなる。

東アジア・太平洋地域: 2023年の成長率は5.5%、2024年は4.6%へ減速。詳細は地域別概要 を参照。

ヨーロッパ・中央アジア地域:  2023年成長率は1.4%へわずかながら上昇、2024年にはさらに2.7%へ加速。詳細は地域別概要(英語) を参照。

ラテンアメリカ・カリブ海地域: 2023年成長率は1.5%へ減速、2024年は2%へ回復。詳細は地域別概要(英語)を参照。

中東・北アフリカ地域: 2023年成長率は2.2%へ減速、2024年は3.3%へ反発。詳細は地域別概要(英語) を参照。

南アジア: 2023年成長率は5.9%へわずかながら減速、2024年は5.1%に。詳細は地域別概要(英語) を参照。

サブサハラアフリカ地域: 2023年成長率は3.2%へ減速、2024年は3.9%へ上昇。詳細は地域別概要(英語)を参照。

プレスリリース

プレスリリース

発行日 プレスリリース 東アジア・大洋州地域
 2023年6月6日 世界経済、高金利の継続で足元不安定に (PDF)
2023年1月10日 急激かつ継続する成長減速が開発途上国に大打撃; 2023年の世界経済成長率は1.7%に減速 6カ月前予測は3.0% (PDF)
 2022年6月7日 経済成長急減速の中高まるスタグフレーションリスク; ウクライナの戦争はインフレ高進と金融環境のタイト化を招来 (PDF)
 2022年1月11日 世界経済、2023年まで成長減速 高まる途上国の「ハードランディング」リスク (PDF)
 2021年6月8日 世界経済の回復は力強いが不均衡-多くの途上国に感染症危機の長期的影響 ..
 2021年1月5日 世界経済の成長率、2021年は4%に:回復の持続にはワクチン展開と投資が鍵 ..
 2020年6月8日 新型コロナウイルス感染症により、世界経済は第二次世界大戦以来最悪の景気後退に直面 ..
 2020年1月8日 債務残高拡大、生産性の伸びが停滞する中、2020年の世界経済成長率は2.5%までわずかに上昇 ..
 2019年6月4日 2019年の世界経済成長率は2.6%へ減速、大きなリスクが存在 ..
 2019年1月8日 翳りゆく成長見通し:貿易と投資の低迷に伴い、2019年の世界経済成長率は2.9%に減速の見通し ..
 2018年6月5日 2018年、世界経済は3.1%で成長するも、その後は減速の見通し ..
 2018年1月9日 2018年、世界経済の成長率は小幅ながら3.1%まで上昇するも、今後の潜在成長力には懸念も ..
 2017年6月4日 世界経済の成長率は明るい見通しに支えられ2.7%と堅調 ..
 2017年1月10日 投資低迷ながら、世界経済の成長率は2.7%に上昇 ..
 2016年6月7日 世界銀行、2016年世界経済の成長率見通しを2.4%に下方修正 ..
 2016年1月6日 2016年、新興市場の回復不調が世界的成長の大きな足かせに ..
 2015年6月10日 2015年、借入コストの増大、原油などの一次産品の価格下落が 途上国の移行を困難に ..
 2015年1月13日 2015年の世界経済は改善の見込み しかし様々な要因が下振れリスクに ― 世界銀行 ..
 2014年6月10日 世界銀行、世界経済見通しを下方修正、途上国は国内改革に一層の努力を ..
 2014年1月14日 グローバル経済は転換期に-世界銀行 ..