不透明感が増す経済見通しへの対応

中東紛争によりエネルギー価格が急騰する中、世界経済の成長率は2026年に2.5%に鈍化するとみられ、新興国・途上国(EMDE)の国民一人あたり所得の伸びはコロナ危機以来最も小幅にとどまるだろう。紛争の激化、一次産品市場のさらなる混乱、地政学的緊張の一層の高まりなど、下振れリスクの方が依然として大きいが、AI(人工知能)の普及拡大は成長を押し上げる要因となる可能性がある。こうした状況下で、政策的措置は極めて重要である。世界的にはエネルギーと食料の安全保障の確保、エネルギー移行の推進、国内ではインフレ抑制、財政の持続可能性強化、雇用創出の支援が求められる。債務の増加は、最も大きな負債を抱える国を中心に、EMDEの借入コストを押し上げており、歳入動員の強化と債務管理改善の必要性を浮彫りにしている。一次産品輸出国にとっては、財政の強靱性を高めるため、強固な制度的枠組みの整備と歳入源の多様化が不可欠である。

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世界経済予測

中東紛争はエネルギー価格の高騰とインフレ圧力の再燃に加え、金融引締め観測の高まりを引き起こした。世界経済の成長率は2026年に2.5%に鈍化した後、2027–28年にはエネルギー供給の回復と貿易の強化により上昇するとみられる。依然として下振れリスクが大きく、紛争の激化、一次産品市場の混乱、政策の不確実性がさらなる成長減速を深刻化させる可能性がある。上振れリスクとしては、AIの普及拡大が経済活動を活性化させる可能性がある。こうした状況下では、政策的措置は極めて重要である。世界的にはエネルギーと食料の安全保障の確保、貿易システムの強化、エネルギー移行の推進、国内ではインフレ抑制と成長支援、財政の持続可能性強化が求められる。また、新興国・途上国(EMDE)における雇用課題への対応には、物理的・人的・デジタルの各資本への投資、ビジネスに優しい環境の整備、民間投資の動員が必要である。

  実質GDP成長率 (%)   改定*
  2023 2024 2025e 2026f 2027f 2028f   2026f 2027f
世界 2.8 2.9 2.9 2.5 2.8 2.8   -0.1 0.1
先進国 1.6 1.8 1.8 1.5 1.8 1.7   -0.1 0.2
新興国・途上国 4.3 4.4 4.4 3.6 4.2 4.1   -0.4 0.1
   東アジア・太平洋地域 5.2 5.0 5.0 4.2 4.4 4.3   -0.2 0.1
   ヨーロッパ・中央アジア地域 3.6 3.9 2.5 2.1 2.3 2.6   -0.3 -0.4
   ラテンアメリカ・カリブ海地域 2.3 2.3 2.3 2.2 2.5 2.6   -0.1 -0.1
   中東・北アフリカ/アフガニスタン/パキスタン 2.0 2.9 4.0 1.6 5.0 4.0   -2.7 0.7
   南アジア地域 6.6 6.8 7.0 6.3 6.9 7.1   0.1 0.4
   サブサハラ・アフリカ地域 3.0 3.8 4.1 4.0 4.4 4.5   -0.3 -0.1
* 2026年1月予測からの%㌽変化
すべてのデータはExcelファイルとしてダウンロードできます。

地域別予測

中東紛争の影響により、2026年は新興国・途上国(EMDE)地域すべてにおいて成長が鈍化するとみられる。中東・北アフリカ地域/アフガニスタン/パキスタンが最も深刻な影響を受けている一方、南アジア地域は引き続き世界で最も高い成長率を維持すると予測されている。地域への影響は、エネルギー価格変動の影響、戦略的備蓄量、政策的余地によって異なる。2027-28年には、エネルギー価格の下落と世界的な経済活動の回復により、全地域で回復が見込まれている。財政圧力は貧困削減や食料不安の緩和、雇用創出の可能性を狭める。今回の見通しには、一次産品市場の混乱の長期化、財政的圧迫、貿易政策の不確実性の継続、気候関連のショックといった下振れリスクが挙げられる。

東アジア・太平洋地域:経済成長率は2026年に4.2%に減速後、2027年は4.4%に回復。詳細は地域別概要 を参照。

ヨーロッパ・中央アジア地域:経済成長率は2026年に2.1%に減速し、2027年は2.3%へと小幅上昇。詳細は地域別概要(英語) を参照。

ラテンアメリカ・カリブ海地域:経済成長率は2026年に2.2%に減速し、2027年は2.5%に上昇。詳細は地域別概要(英語)を参照。

 中東・北アフリカ/アフガニスタン/パキスタン:経済成長率は2026年に1.6%に減速した後、2027年は5.0%に回復。詳細は地域別概要(英語) を参照。

南アジア地域:経済成長率は2026年に6.3%に低下し、2027年は6.9%に上昇。詳細は地域別概要(英語) を参照。

サブサハラ・アフリカ地域: 経済成長率は2026年に4.0%に小幅下落し、2027年は4.4%に上昇。詳細は地域別概要(英語) を参照。

プレスリリース

発行日 プレスリリース 東アジア・大洋州地域
2026年6月11日 中東紛争により世界経済成長率がコロナ危機以来の最低水準に; 世界銀行グループ、影響を受ける国に15カ月間で最大1,000億ドルの支援へ (PDF)
2026年1月13日 歴史的な貿易と政策の不確実性の中でも強靭さを示す世界経済;
ただし、4分の1の途上国では依然として2019年より貧困が悪化
(PDF)
 2025年6月10日 世界経済の成長率は、景気後退期を除けば2008年以来最も低い水準に; 70%の国について2025年の成長予測を下方修正 (PDF)
2025年1月16日 世界経済は安定するも、途上国は一段と厳しい状況に直面; 長期的な成長見通しは今世紀で最も低調 (PDF)
 2024年6月11日 世界の成長率、3年ぶりに安定へ; ただ、世界の80%の人々にとりコロナ禍以前10年間平均より低い成長に (PDF)
2024年1月9日 世界経済、過去30年で最低の水準へ ―投資拡大と財政政策強化に向けた改革が流れを変える可能性― (PDF)
 2023年6月6日 世界経済、高金利の継続で足元不安定に (PDF)
2023年1月10日 急激かつ継続する成長減速が開発途上国に大打撃; 2023年の世界経済成長率は1.7%に減速 6カ月前予測は3.0% (PDF)
 2022年6月7日 経済成長急減速の中高まるスタグフレーションリスク; ウクライナの戦争はインフレ高進と金融環境のタイト化を招来 (PDF)
 2022年1月11日 世界経済、2023年まで成長減速 高まる途上国の「ハードランディング」リスク (PDF)
 2021年6月8日 世界経済の回復は力強いが不均衡-多くの途上国に感染症危機の長期的影響 ..
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