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プレスリリース2022年5月11日

2022年の本国送金は過去最高額の対ウクライナを含め6,300億ドルに

ただし、ロシアからの送金に依存する国は今後大幅減に

ワシントン、2022年5月11日 — 正式な記録による低・中所得国(LMICs)向けの送金フローは、2021年にほぼ過去最大の8.6%増だったが、今年は4.2%増え6,300億ドルに達するとみられる、と世界銀行は本日発表した報告書「移住と開発」の最新版で分析している。

ウクライナ向けの送金はヨーロッパ・中央アジア地域で最も多く、2022年は20%以上増えるとみられる。ただし、中央アジア諸国の多くに対する送金は主にロシアからであり、今後大幅に減少するだろう。こうした減少に、食料・肥料・石油の価格上昇が加わり、これらの国々の多くで食料安全保障へのリスクが高まり貧困が悪化する可能性が高い。

「ロシアによるウクライナ侵攻が、大規模な人道・移住・難民危機を引き起こし、今なおコロナ危機の影響に苦しんでいるグローバル経済に各種のリスクを発生させた」と、世界銀行のミハウ・ルトコフスキ社会的保護・雇用グローバルプラクティスのグローバル・ダイレクターは述べた。「ウクライナ人や中央アジア諸国の人々などの最脆弱層や、今回の戦争により経済的影響を受けている人々を守るための社会的保護プログラム強化が、食料安全保障と貧困拡大の脅威から人々を守るための最優先課題である。」

2021年は送金額が大きく増え、ラテンアメリカ・カリブ海地域向けが25.3%、サブサハラ・アフリカ地域向けが14.1%、ヨーロッパ・中央アジア地域向けが7.8%、中東・北アフリカ地域向けが7.6%、南アジア地域向けが6.9%、それぞれ伸びた。東アジア・太平洋地域向けは3.3%の減少だったが、中国を除くと2.5%増だった。2015年以降、中国を除く低・中所得にとって本国送金フローは最大の外貨獲得源である。

2021年に多くの送金を受けた上位5カ国はインド、メキシコ(前回の中国を抜いて)、中国、フィリピン、エジプトだった。送金額が国内総生産(GDP)に占める割合が特に大きい国は、レバノン(54%)、トンガ(44%)、タジキスタン(34%)、キルギス共和国(33%)、サモア(32%)だった。

「一方で、ウクライナ危機により、国際政治の注目がほかの開発地域や経済移民からそれてしまったが、他方では、大量の移民が流入している受入れ先コミュニティを支援する論拠が強化されている。」と、本報告書の主任執筆者で「移民と開発に関するグローバル・ナレッジ・パートナーシップ(KNOMAD)」の責任者を務めるディリップ・ラーサは述べた。「国際移住レビューフォーラムの開催を前に、受入れ先コミュニティを支援する『移住のための譲許的ファイナンシング・ファシリティ』の設置を真剣に検討すべきである。同ファシリティからは、コロナ危機で帰国する出稼ぎ労働者の地元コミュニティに財政支援を提供することも考えられる。」

世界送金コスト・データベースによると、2021年第4四半期に200ドルを国外に送金するための世界の平均コストは送金額の6%で、持続可能な開発目標(SDGs)で目指す3%の2倍だった。送金コストが最も低いのは南アジア向けの4.3%で、最も高いのはサブサハラ・アフリカ向けの7.8%である。

ウクライナへの送金コストは高く、チェコ共和国から7.1%、ドイツから6.5%、ポーランドから5.9%、米国から5.2%である。ウクライナからの難民や出稼ぎ労働者に対する世界各国からの善意は、受入国で雇用や社会サービスへのアクセスを容易にするプログラムの開発と試行の機会のほか、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策としての手順を簡略化して小口送金取引に適用し送金コストを引き下げる機会、海外居住者向け国債の資金動員の機会を開くものだ。

ウクライナでの戦争は国際決済システムの混乱も招いており、国境を超えた送金フローにも影響が及ぶと考えられる。ロシアがSWIFTから排除されたことで、国際決済システムへの参加に国家安全保障の側面が加わった。

「送金手数料を2%ポイント引き下げれば、LMICsからの国外出稼ぎ労働者にとって年間120億ドルの節約になり、ウクライナからの出稼ぎ労働者と難民にとっては4億ドルの節約になる。」とラーサはつけ加えた。「ただし、国境を超えた決済システムは多極化して相互運用の可能性は下がるとみられ、送金手数料引下げに向けた動きを鈍らせるだろう。」

世界銀行が送金データの改善を図るため国際作業グループを発足

コロナ危機とウクライナでの戦争により、頻繁に更新されるタイムリーなデータの必要性が一段と明確になっている。世界銀行は4月、KNOMADの援助の下、送金が資金面の生命線になっている国々と協力して、送金フローに関するデータ改善のための国際作業グループを立ち上げた。送金データを改善すれば、送金コスト引下げを目指す持続可能な開発目標(SDGs)の指標に直接貢献し、送金規模の拡大に役立ち得る。また、移住グローバルコンパクトの第一目標であるデータ改善にも貢献するだろう。

地域別に見た送金の傾向

東アジア・太平洋地域:2021年の送金フローは2020年の7.3%減に続き、3.3%減となり2017年の水準に近い1,330億ドルだった。中国を除くと、2021年の同地域への送金は2.5%増だった。フィリピンへの送金は、数多くのフィリピン人出稼ぎ労働者のいる米国での雇用創出と賃上げの恩恵を受けた。国内総生産(GDP)比で見た受取額が大きかったのは、トンガ、サモア、マーシャル諸島、フィリピン、フィジーだった。中国を除くと、2022年の同地域への送金は3.8%の伸びが見込まれる。同地域に200ドルを送金するための平均コストは、2021年第4四半期に、前年同期の6.9%を下回る5.9%に減少した。

ヨーロッパ・中央アジア地域: 2021年の同地域への送金フローは、主に欧州連合の経済活動活性化とエネルギー価格回復により、7.8%増え過去最大の740億ドルに達した。2021年、ウクライナは、最大の出稼ぎ労働先であるポーランドからの送金が大きかったことで受取額が182億ドルになった。個人からの送金が中央アジア諸国の重要な外貨獲得源と受取額増加の要因になっており、主にロシアからである。GDP比で見た受取額は、タジキスタンとキルギス共和国が2021年はそれぞれ34%と33%だった。同地域への送金は2022年に1.6%減になるとみられるが、短期予測は、ウクライナでの戦争の規模とロシアからの送金に対する制裁次第であるため、極めて不明確である。対照的に、ウクライナへの送金は2022年に20%以上増えると見込まれる。同地域に200ドルを送金するための平均コストは、前年同期の6.4%から2021年第4四半期は6.1%に下がった。

ラテンアメリカ・カリブ海地域:2021年の同地域への送金額は、米国における外国人出稼ぎ労働者向けの雇用が大きく回復したことで、2020年から25.3%増えて1,310億ドルに達した。2桁台の増加率を記録した国は、グアテマラ(35%)、エクアドル(31%)、ホンジュラス(29%)、メキシコ(25%)、エルサルバドル(26%)、ドミニカ共和国(26%)、コロンビア(24%)、ハイチ(21%)、ニカラグア(16%)だった。メキシコへの送金額には、ホンジュラス、エルサルバドル、グアテマラ、ハイチ、ベネズエラ、キューバなどから出稼ぎ先に移動中の労働者に対する本国からの送金が含まれる。送金は、一部の国にとって交換可能通貨の獲得源として重要であり、エルサルバドル、ホンジュラス、ジャマイカ、ハイチなどではGDPの少なくとも20%を占めている。2022年の送金額は、9.1%の増加が見込まれるものの、下方リスクは依然として存在する。2021年第4四半期に同地域に200ドルを送金するための平均コストは5.6%で、前年同期からほぼ横ばいだった。

中東・北アフリカ地域:2021年、域内途上国への送金は、モロッコ(40%)とエジプト(6.4%)への送金の大幅増加により、7.6%増の610億ドルになった。送金フローを支える要因としては、欧州連合内の出稼ぎ労働者受入れ国が成長に転じたことと、出稼ぎ先に移動中の労働者の一時的な受入国であるエジプトやモロッコ、チュニジアなどへの送金が増えたことが挙げられる。2022年、送金フローの伸びは6%に鈍る可能性が高い。送金は域内途上国にとって長い間、海外開発援助(ODA)、外国直接投資(FDI)、株式投資、債務フローなどの外貨獲得源の中で最大であり、2021年は総額の61%を占めた。同地域に200ドルを送金するためのコストは、前年同期の6.6%から2021年第4四半期は6.4%に低下した。

南アジア:2021年の同地域への送金は、6.9%増の1,570億ドルになった。南アジアからの出稼ぎ労働者の多くが、2020年初頭にパンデミック発生を受けて帰国しているが、ワクチンが摂取できるようになり、湾岸協力理事会(GCC)加盟国が国境を開放したことで、2021年は徐々に出稼ぎ先に戻ることが可能になり、同年に多額の送金フローを記録するに至った。米国の景気回復もまた、2021年の送金額増加に大きく貢献した。インドとパキスタンへの送金額はそれぞれ8%と20%増えた。2022年の伸びは4.4%になるとみられる。送金は、同地域にとって最大の外貨獲得源であり、2021年の受取額はFDIの3倍以上の水準であった。同地域への送金コストは、平均4.3%で、ほかのどの地域を下回ったが、それでも持続可能な開発目標(SDGs)で目指す3%を上回っている。

サブサハラ・アフリカ地域:2021年、同地域への送金は前年の8.1%減から大幅増に転じ、14.1%増えて490億ドルとなった。送金の増加は欧米での経済活動活性化によるものである。受取額が域内最大のナイジェリアは、銀行システムを通じた送金の促進を図る政策の影響もあり、送金フローが11.2%増を記録した。2桁台の増加率を記録した国としては、カーボベルデ(23.3%)、ガンビア(31%)、ケニア(20.1%)が挙げられる。GDP比で見た受取額が大きい国としては、ガンビア(27%)、レソト(23%)、コモロ(19%)、カーボベルデ(16%)がある。2022年の送金フローは7.1%の増加が見込まれる。背景には、ナイジェリアで引き続き正式な経路を使った送金へのシフトが続くことと、食料価格上昇がある。出稼ぎ労働者は、現在、穀物価格のとてつもない高騰に苦しんでいる本国への送金額を増やす可能性が高いからだ。2021年第4四半期に同地域に200ドルを送金するためのコストは、前年同期の8.2%をわずかに下回る平均7.8%だった。

プレスリリース番号: 2022/060/SPJ

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東京:
開裕香子
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