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プレスリリース 2021年1月26日

経済的包摂プログラム:対象が世界全体で9,200万人に

マルチメディア

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2020年にプログラム数がこれまでになく増加、と世界銀行報告書

 

ワシントン、2021年1月26日 — c世界の最貧困層の所得拡大と資産形成を図る経済的包摂プログラムが75カ国で増えており、約2,000万の貧困・脆弱世帯で約9,200万人が受益している。世界の最貧困層が7億人以上に上るという厳しい状況の中、プログラムの数が20年ぶりに増加傾向にある。

世界銀行が新たに発表した「経済的包摂の現状(SEI)報告書2020:支援拡充の可能性」は、経済的包摂プログラムは通常、現金給付や現物給付、技能訓練、技術指導、金融アクセス、市場との結びつき支援等を組み合わせて実施されるが、多くの国で政府による大規模な貧困削減戦略の手段として急速に重要性を増していると指摘している。また、この傾向は、紛争や気候変動、新型コロナウイルス感染症の世界的流行による打撃を受けた地域を中心に、今後も続くと考えられる。

「開発における最も困難な課題は、極度の貧困層・脆弱層の生活を改善することだが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、問題は更に悪化している。」と、マリ・パンゲストゥ世界銀行グループ専務理事は述べた。「本報告書は、世界各地の経済的包摂プログラムを体系的に検証した初の取組みであり、貧困層が自ら明るい未来を切り開けるようにするために、社会的保護、雇用、金融包摂に各国政府はいかに投資すべきかを明らかにしている。」

SEI報告書は、経済的包摂パートナーシップ(PEI)の下での独自の協力関係によりまとめられた。各国の経済的包摂プログラムは、政府のほか、二国間、多国間、非政府の各組織や研究機関、民間セクター等、幅広いステークホルダーと共に実施される。プログラムの導入や順応の支援に特化したプラットフォームとして設置されたのがPEIである。

「プログラムは国際協力の下で実施されることから、成功には関係者の連携が不可欠である。我々もPEIに加わっている他の関係者同様に、プログラムのアプローチと実施のあり方が、コミュニティのニーズ、現場の状況、現地パートナーの専門性を考慮したものとなるよう尽力している。」とバングラデシュに本部を置く国際開発機関BRACのシャメラン・アベド ダイレクターは言う。

同報告書は75カ国における200以上のプログラムを検証した結果、世界各国の政府が社会的セーフティネットを通じて経済的包摂イニシアティブの拡大を進めているとしている。サヘル地域、バングラデシュ、ペルー、インドに関する掘り下げたケース・スタディでは、経済的包摂プログラムが発展してきた経緯を取り上げ、都市化、人的資本蓄積の格差、ショックへの適応、テクノロジーの変化といった課題への対応を紹介している。

新型コロナウイルス感染症の影響については、世界的流行による世帯レベルや組織・制度レベルでの予期しない展開に注目している。経済的包摂プログラムは、感染症の封じ込め、食料安全保障の徹底、中期的回復の支援に焦点を絞った総合的な政策対応の一環として、最貧困層の暮らしを改善する可能性が高いとみられる。エジプト、エチオピア、ガーナ、ザンビア等の国々での経験からは、経済的包摂プログラムはどうすれば社会扶助プログラムにとって代わるのではなく、そこに立脚したものとなれるのかを学ぶことができる。

「新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、ショックから人々を守るために社会的保護と経済的包摂を結び付けることの重要性が明らかになっている。社会的保護と雇用のためには今後も多額の資金を提供していく。ただし、経済的包摂プログラムは、政府による既存の社会的保護システムを基盤とすることになる可能性が高く、新型コロナウイルス感染症の副次的影響からの長期的回復において重要な役割を果たすことになるかもしれない。」と、ドイツ連邦経済協力開発省(BMZ)のグローバル・ヘルス、感染症流行予防、ワンヘルスのビルギット・ピケル ダイレクターは述べた。

同報告書は、調査対象プログラムの90%近くがジェンダーへの配慮を掲げているとして、女性の経済的エンパワーメントが支援を牽引する重要な役割を果たしていることを明らかにしている。 同報告書や PEIが行った他の調査の結果、新型コロナウイルス感染症の打撃が特に大きい教育、小売り、旅行、ホスピタリティ、家事代行等の分野では労働者の大半を女性が占めるとされていることから、ジェンダーへの配慮は極めて重要である。過去の危機から得られた教訓として、女性の機会減少、女性のための保険医療サービスの軽視、ジェンダーに基づく暴力の増加を防ぐために、ジェンダーへの配慮が重要であることが浮き彫りになっている。

「各種のパッケージで構成される経済的包摂プログラムは、新型コロナウイルス感染症関連で生じる幾多の影響への対応に大きな役割を果たすことができる。特に、今回の危機は、国のシステム強化に加え、女性やこれまで疎外されてきた人々を取り残さない包摂的で公平な設計の必要性を浮き彫りにしている。」と、世界中の数百万人の暮らし改善のために世界各地からの資金をとりまとめるコ・インパクトのオリビア・ルファンド創設者兼CEOは述べた。

また同報告書は、プログラムの効果とコストについても、大規模な経済的包摂プログラムの持続可能性に影響する重要な要素であるとの観点から、深く掘り下げている。例えば、サヘル適応促進型社会的保護プログラム(SASPP)という、気候変動の影響に対する貧困・脆弱世帯の強靱性強化を図る適応促進型社会的保護プログラムの設計と実施に向けて2014年に立ち上げられたプログラムがある。同報告書は、SASPPが支援するイニシアティブから得られた重要な教訓を明らかにしているが、特に重要なひとつの教訓として、人々への働きかけを体系的かつ迅速に拡大する必要性を挙げている。

「機能面の制約を克服しプログラムをより確実に管理するためにデジタル技術の活用が不可欠となる。多くのプログラムですでに、社会サービスの登録者名簿、受益者名簿等の政府のデータベースが、参加の見込まれる人々を特定するために活用されている。」と、ミハウ・ルトコフスキ世界銀行社会的保護・雇用グローバル・プラクティスのグローバル・ダイレクターは述べた。

SEI同様、PEIもオンライン上に無料のPEIデータ・ポータルを立ち上げようとしている。同データ・ポータルでは、世界各地での事例からの学習とプログラム実施を支援するためのオープン・アクセス確保を特に重視している。

世界銀行グループは、途上国に開発のための資金や知識を提供する世界有数の機関であり、途上国が今回の世界的流行への対応を強化できるよう、広範かつ迅速な措置を講じている。世界銀行グループは公衆衛生の取組みや重要な物資及び機器の円滑な供給を支援する一方で、民間セクターが事業を継続し、雇用を維持できるよう支援している。世界銀行グループは、各国が貧困層・脆弱層を守り、民間セクターを維持し、経済回復を促進できるように、2021年6月までの15カ月間に最大1,600億ドルの資金を100カ国超に提供する。この金額にはグラント(無償資金)又は譲許的融資の形で提供される、国際開発協会(IDA)からの新規資金500億ドルと、新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの調達・配布のために途上国に提供される120億ドルが含まれる。


プレスリリース番号: 2021/095/SPJ

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lfoo@worldbankgroup.org
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