プレスリリース

極端な気候現象が開発に影響

2012年4月27日




災害リスク管理と気候への適応を結び付けた
共同の取組みが必要-グローバル・パートナー

ワシントン、2012年4月27日-今後世界各地で発生すると予測されている極端な気候現象についての深刻な内容となっている国連報告書を受け、ドナーおよび途上国の高官ならびに国際機関は、開発計画の策定に当たって災害に対する抵抗力強化を優先させる決意を再確認した。これらの高官は、世銀/IMF春季会合開催中に開かれた会議において、災害リスク削減と気候変動への適応を結びつけて開発アジェンダに組み入れることがコミュニティや各国の抵抗力を強化する上で極めて重要であるとの認識を示した。

マフムド・モヒルディン世界銀行専務理事は、次のように述べている。「災害が何年分もの開発の歩みをいかに逆行させ得るかをいやというほど見せつけられてきた。それに加え、今では世界的な状況の変化にも備えなければならない-急速な都市化と気候変動によって災害リスクの形が変わり深刻化しているからだ。しかし、地理的条件は必ずしも運命として受け入れる必要はなく、また未来についても、今の時点で予防のための適切な政策が講じられるのであれば、気候変動の影響がいかに不確実かつ予測不能であっても、先行きを恐れる必要はない」

この会議は欧州連合、日本政府および世銀/GFDRR(防災グローバル・ファシリティ)が招集したもので、国連及び気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が先月に公表した「気候変動への適応推進に向けた極端現象及び災害のリスク管理に関する特別報告書」を踏まえて進められた。同報告書は、現在の極端な気象現象は今後もっと一般的になると予測され、気候変動がその原因となるとしている。

IPCC第2作業部会のクリストファー・フィールド共同議長によると、「リスク特性は変化している。数種類の極端な気候・気象現象が増加しており、今後さらに増えるとみられる。21世紀の後半には、酷暑現象の頻度が10倍に増えるだろう。現在10年に1度しか発生していない極端な熱波に毎年見舞われるようになるだろう」。

極端な現象は、水、農業、食糧安全保障、森林、保健、観光など、気候との関係が深いセクターに、その分深刻な影響を与えることになると同報告書は警告している。フィールド博士は、豪雨や長期にわたる深刻な干ばつなど、極端な現象の増加は多くの場所ですでに始まっていると指摘した。最も深刻な影響を受ける人々は、途上国の最脆弱層だ。2010年にパキスタンで発生した洪水だけでも、600万人が住まいを失った。

洪水は自然災害の中で最も頻繁に発生している。途上国ではかつてない規模の都市化が-しかもその多くは規制も計画もないまま-進んでいて、その大部分が肥沃な氾濫原や沿岸地域に立地しており、そのことが洪水の影響にさらされる大きな原因となっている。世界全体では、2100年までに6億人が洪水位よりも低い沿岸の氾濫原で暮らすようになるとみられる。

IPCC報告書の重要なメッセージは、災害への抵抗力強化のために、気候変動への適応、災害リスク管理および持続可能な開発を統合する必要があるという点だ。しかし、各種のデータを見る限り、取組みはまだ道半ばである。依然として、災害が起こる前の防災に対してよりも、起こってからの人道援助に対する支出の方が多い。欧州連合(EU)のアンドリス・ピエバルグス委員(開発担当)によると、2011年、災害による損失額は世界全体で2640億ドルに上った。これは同年の政府開発援助の2倍の水準に相当する。今回の災害への抵抗力に関する対話では、協調行動、人道支援と開発支援の連携、総合的アプローチ、事後の災害対応から事前の災害防止へのパラダイムの転換など、いかにしてこれらの課題に取り組むかについて話し合われた。

財務省の石井菜穂子副財務官は、次回のハイレベル会合は2012年10月のIMF-世銀年次総会の期間中に開催すると発表した。この会合は2011年に津波の直撃を受けた東北地方の仙台市にて開かれる予定であり、災害リスク削減および気候変動への適応を開発の優先課題として本格的に組み入れるに当たり、国際社会のグローバルな合意形成を図る場となる。

各国・機関による共同の取組みおよび次のステップ

アルミダ・アリシャバナ
インドネシア国家開発企画庁長官

「インドネシアでは1年間に100件を超える災害が発生している。2004年の津波の損害規模はアチェ州の経済の約45%に上った。インドネシアではそれ以降、災害多発地域における早期警報システム、連携強化、災害予測予算の増額、防災5か年計画など、より体系的な形で災害に備えるべく努力を続けてきた。調整に際して鍵となるのは、単一の組織で災害に関する課題を一括して管理することだ。これにより、複数の組織で業務が重複することがなくなった」

ヴァレリー・エイモス
人道問題担当国連事務次長兼緊急援助調整官

「アフリカの角地域から得た教訓を活かし、サヘル地域では初期の兆候に注意を向け、かなり迅速に対応できるようになった。我々は、開発と人道の両分野の取組みを結びつけることにより、抵抗力をつけ、域内各国の政府の対応を支援している」

ヘレン・クラーク
国連開発計画(UNDP)総裁

「基本的なレベルの抵抗力なしには、困難や衝撃に遭遇した際、それまでに得たものを失わないでいることはできない。抵抗力に関する対話の歴史は長い。誰もが大規模災害の損失ばかりに目を向けてきたが、しなければならないことは実に明白だ。次の災害が来るまで待っていてはいけないということだ。いつかはまた、地震や津波、サイクロン、干ばつが必ず発生する。では、開発パートナーとして我々にできることは何だろう。抵抗力をつけることこそを開発活動の中心に据えるべきである。積極的かつ効果的、誠実、公正で迅速に対応できる代議制のガバナンスが抵抗力強化を促進する。これはどの国においても同じだ。近年の金融危機の際に明らかになった通り、すべての先進国が経済的ショックに対して体系的な抵抗力を維持しているわけではない。逆境に陥ったとき長年にわたる人間開発と進歩が一瞬にして消え去っても構わないというのでない限り、先進国であっても同様に、ショックに対する体系的な抵抗力を培うことが不可欠である」

石井菜穂子
財務省副財務官

「IPCC報告書は極めてタイミングよく発表され、災害リスク管理と気候変動への適応措置は基本的に表裏一体であることを明らかにしている。こうした措置を、開発政策の重要な要素としてさまざまなセクターに組み入れる必要がある。そのためには、1つの施策だけに依存するのを防ぐ多層的なアプローチが不可欠である。インフラと最先端のテクノロジーを維持するだけでは十分ではない。自然災害に直面したとき、一人一人が対応できるよう、物的インフラに加えて、災害教育、リスク・コミュニケーション、避難訓練、その他の施策を充実させる必要がある。日本は災害リスク管理の課題に一貫して先駆的に取り組んできた。昨年の東日本大震災によって日本は、世界中での災害リスク軽減に、なお一層の力を入れて取り組むという決意を新たにした」

レイチェル・カイト
世界銀行持続可能な開発総局副総裁

「この3年間で、世界銀行の国別援助戦略の3分の2が災害リスク管理を組み込んでいる。目標はこれを100%にすることだ。我々はインフラ、農業、輸送、水、エネルギー、コミュニティの抵抗力強化の方法、共有する情報の種類について、考え方を変える必要がある。人々が遠い将来に抵抗力が証明されるようなインフラ面の決定を下せるよう支援しなければならない。だが同時に、我々は「適応」を図る組織でもある。我々のすべての取組みに気候変動への適応策を組み込む必要がある」

ダリオ・ルナ
メキシコ大蔵省保険・年金・社会保障局長

「メキシコは災害が発生しやすい国であるため、災害リスク管理を極めて重視している。本年のG20の議長国として、人的損失および経済コストの両方の削減を強調し、災害リスク管理を議題に挙げたいと考えた。変化を続けるこの世界にあって重要な特徴の1つは、これまでよりも自然災害により起こり得る損害が大きくなっている点だ。この取組みによって、G20各国において、また各財務大臣からも災害リスク管理が一層注目されるようになると確信している」

アンドリュー・ミッチェル
英国国際開発大臣兼抵抗力強化政策推進グループ共同議長

「抵抗力強化政策推進グループが、こうした課題に対する国際的な取組みの良き支援者になるものと願っている。さらに、英国国際開発省は2015年までにすべての業務に抵抗力強化の概念を組み入れる予定である。特に保険分野での民間セクターの役割を活用して行きたい」

マフムド・モヒルディン
世界銀行専務理事

「コミュニティや各国の抵抗力強化に向けて協力できることは多い。我々は、国際社会のコンセンサスを形成し、各国のオーナーシップを確保して、リスク評価に対する投資を続け、抵抗力強化のための意思決定に役立つ情報を提供することが可能であり、またそうすべきである。我々は、世界中の都市に適用できる都市災害リスク評価に向けて、国際的に認められる測定基準を策定することが可能であり、またそうすべきである。こうした測定基準によって、リスク・レベル別に都市を分析し、抵抗力強化に向けた進捗度を測る基準値を設定することができる。さらに我々は、抵抗力強化に向けた進捗度の測定をいかに改善するかについて対話を続けることが可能であり、またそうすべきである」

アンドリス・ピエバルグス
欧州連合委員(開発担当)

「EUは、多方面にわたって抵抗力強化に対するコミットメントの実践に深く関わっている。共通分析を行い、優先順位を共同で定義するために、人道および開発の両分野の関係者間の調整を図り、計画立案やプログラムの設計を推進している(アフリカの角地域およびサヘル地域はその一例)。EUはより柔軟な新しいEU金融商品を開発中である。また、中央およびコミュニティの両レベルにおいて、抵抗力強化およびキャパシティ・ビルディングにこれまで以上に力を入れつつある。さらに、人道支援および開発の予算において防災対策および抵抗力に対する割り当てを増やすと共に、政府のアジェンダに災害リスク削減を含めるよう主張している」

ラジブ・シャー
米国国際開発庁長官

「我々が自らに問うべきは、世界で最も脆弱性が高い地域で何が起きているのかだ。十分なことが行われていないことは明らかである。我々は現在の動きを反転させなければならない。すなわち、今も予防よりも人道支援に資金を注ぎ込んでいるが、これを逆にする必要がある。2002年以降、米国はアフリカの角地域の人道支援に112億ドルを投じてきたが、事が起きてから問題を追いかけている状態である。そうではなく、予防に力を入れる必要がある。対応と予防の関係を逆にし、あらゆる活動が必ず成果を生むようにしなければならない」

防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)について

2006年9月に創設された防災グローバルファシリティ(GFDRR)は、途上国による自然災害への脆弱性軽減と気候変動への適応を目的とした41の国、8の国際組織のパートナーシップです。GFDRRの使命は、標語行動枠組に関する各国の主体的な取組みを支援しつつ、各国の開発戦略の中心に災害リスク軽減と気候変動適応を組み込んでいくことです。

メディア連絡先
In ワシントン
Anita Gordon
電話: (202) 473-1799, (202) 436-4791
agordon@worldbank.org
Roger Morier
電話: (202) 473-5675, (202) 369-1852
rmorier@worldbank.org
In 東京
智子 平井
電話: +81-3(3597)6650
thirai@worldbank.org


プレスリリース番号:
2012/418/GFDRR

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