プレスリリース

世界銀行が「緑の」国民経済計算を提唱 日本を含めた新たなグローバル・パートナーシップを立ち上げ

2010年10月28日




自然環境の効果的な管理を当たり前のものに

名古屋、2010年10月28日 - 世界銀行は本日、森林や湿地帯、サンゴ礁などの生態系の経済価値を国民経済計算のシステムに組み込むために必要なツールを途上国に提供する新たなグローバル・パートナーシップを発表した。その目標は、生態系の価値を国民経済計算に組み込むことにより、自然環境を効果的に管理することが経済・開発政策にとって当たり前となることだ。
ロバート・B・ゼーリック世界銀行グループ総裁は、名古屋における生物多様性条約第10回締結国会議(COP10)の演説で、世界中で膨大な生物多様性が失われている背景には、生態系やその恵み(サービス)の価値が適切に評価されていないことが一因、と指摘し、新パートナーシップによって、各国の「自然資本」に関して「欠如している情報」を提供して各国政策当局の意思決定の指針とすることができると述べた。
同総裁は「新しい国富論では、資産は、人、物、金に自然の価値が計算されなければならない」とし、「森林による重要な炭素貯蔵機能、ならびにサンゴ礁やマングローブによる沿岸保全などの経済価値は、総合的な経済・開発政策に反映されるべきだ。」としている。
「この新パートナーシップを通じて、生態系の価値を各国の経済・開発政策に反映させ、成功事例を世界各国に拡大する方策を講ずる予定だ」

世界銀行が 近日発表予定の「新たな国富論(仮題)」によると農地、森林、鉱物、エネルギーの価値は世界全体で44兆ドルを上回り、うち29兆ドルは途上国にある。ただし、この数値は主に民間セクターの生み出す価値だ。その他に生態系の恵みとして、森林は、洪水・渇水の緩和や土壌保全、そこに棲むハチなどの昆虫による授粉などの価値を提供している。そのため、材木を伐採すると、農業生産性や水力発電能力の低下、水質の悪化など、経済の他のセクターにマイナスの影響をもたらす可能性がある。

本パートナーシップは、国連環境計画のプロジェクト「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」が先週発表した最終報告書を踏まえたものである。TEEBは特に、多くの場合、自然の恵みの経済的価値が「目に見えない」ために、自然資本がいたるところで軽視され、ひいては生態系の恵みや生物多様性を損なう決定が行われていると指摘している。

本パートナーシップはTEEBの調査を次の段階へと進め、国の最高レベルにおける経済的意思決定に自然資本の価値を反映させるために必要なシステムを開発する。世界銀行は、生態系の価値を経済・開発政策に反映させる国を一定数伸ばすことにより、このアプローチが多くの国々に採用されることを期待している。

このようにして生態系の価値を評価すると、例えばある国がエビ養殖場のためにマングローブを伐採する際の計算が変わってくるはずだ。もはや、エビ養殖による収益から養殖場運営コストを差し引くといった単純計算とはならない。マングローブ伐採によって、サイクロンの防波堤としての利益の損失ならびにマングローブに生息する魚類その他の資源の損失も計算に入れることになるだろう。

本パートナーシップには、先進国、途上国、UNEPなどの国際機関、自然保護や開発の分野で活動する非政府組織(NGO)、国会議員で構成される国際組織であるグローブ・インターナショナルなども参加することとなる。最初の5年間で以下のパイロットプログラムが行われる。

  • 生態系やそこから提供されるサービスの価値を、各国がどのように所得や資産価値に定量化できるかを立証。
  • こうした定量化された価値を、国の資産や経済成長と結びついた具体的な政策の企画立案に反映させるための手法の開発。
  • 世界各国で応用可能な生態系の価値評価のための実務的なガイドラインの策定。

ゼーリック世界銀行総裁は、コロンビアのサンドラ・ベスード・リオン環境大臣、日本の松本龍環境大臣、ノルウェーのエリック・ソールハイム環境大臣、英国のキャロライン・スペルマン環境・食糧・農村地域大臣、インドのビジェイ・シャルマ環境森林省次官、国連環境計画(UNEP)のアッヘム・シュタイナー事務局長と共に、総合的な経済・開発政策に生態系の経済価値を反映させる本パートナーシップを、コロンビアとインドを皮切りに6~10か国で始めると発表した。

コロンビアとインドでは、優先対象となる生態系を選定するためのフィージビリティ調査がまもなく始まる。アフリカ、アジア、ラテンアメリカ、中央ヨーロッパの国々も、本パートナーシップのパイロット国となることに強い関心を示している。

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プレスリリース番号:
2011/155/SDN

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