スリランカの医療システムは、三重苦に直面しています。パンデミックへの備えを強化し、乏しい資源で経済危機前の水準での基礎的保健サービスを維持し、高齢化が進む中で非感染性疾患に対する保健医療の需要拡大に応える必要があるのです。
こうした状況の中、世界銀行が実施し、日本開発政策・人材育成基金(PHRD)が資金を提供するユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)国別プログラムが、スリランカ政府を支援しました。具体的には、パンデミックへの備えと日常的な保健医療の提供に資金を提供できる健全な財政政策について分析作業を実施し、ベストプラクティスや専門知識の共有を行いました。スリランカのパンデミック準備態勢評価プロジェクトは、コロナ危機による保健財政とサービス提供への影響、パンデミックへの備えと対応の能力、保健医療の効率化、高齢化と長期介護に関する能力向上と知識交換という4つの分野に取り組みました。
日本の経験から学ぶ
能力向上と知識の交換は、プロジェクトで最も成果を上げた活動の1つでした。スリランカの保健省や財務省、州や地区の保健当局の職員が、学習と知識交換のための会議、ウェビナー、イベントに参加しました。そのうち10人は、急速に進む高齢化のニーズに乏しい資金の中で対処するため、保健医療と保健システムに関する日本の経験を学ぶために日本へ視察に訪れました。参加者は、国立国際医療研究センター国際医療協力局との連携を通じ、様々なレベルでの高齢化と長期介護を中心に日本の保健医療システムについての理解を深めました。また、中央政府と地方行政、病院、プライマリケア施設、健康増進と予防の取組みを視察しました。さらに、高齢者ケアが地方行政、病院、診療所でどのように体系化され提供されているか、また、総合ケアシステムの一環として、地域社会が高齢者向けの保健医療と福祉サービスをどのようにサポートできるかを学びました。
この知識交換は、高齢者介護の需要増大を受け保健システムの効率的再編を迫られるスリランカの能力向上に大きく貢献しました。スリランカにとって、日本は人口密度の高い島国であり、急速に高齢化が進んでいるなど、重要な共通点があるため、日本から学ぶことは非常に有益です。
達成された結果:
能力向上と学習交流に加えて、プロジェクトでは次の通り具体的な成果が達成されました。
- 政府関係者10名が日本への視察に参加。
- プロジェクトでは、81の地区病院、管区病院、拠点病院の技術的効率性を調査。
- コロナ危機への対応として、315万429人に現金給付を実施。
- 高齢者介護、特別支援施設、孤児院の現場スタッフ1,000人に、予防とケア対策のための備品を配布し研修を実施。
- 保健省が承認した手順に従い、3万人の保健医療従事者に感染の予防と制御の訓練を実施。
- 23万8,000人の女性に公立保健医療施設で子宮頸がん検診を実施
プログラムの分析・助言作業はまた、スリランカコロナ緊急対応、スリランカ・プライマリヘルスケアシステム強化プロジェクト、および スリランカ・プライマリヘルスケアシステム拡充プロジェクトの3件の世界銀行プロジェクトにも役立てられました。