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特集2025年6月1日

ナイル川流域におけるダムのレジリエンス強化

The World Bank

写真: Daniele Levis Pelusi on Unsplash

概要

ナイル川流域において、地球観測および機械学習を利用して800を超えるダムを調査し、長期的な強靭性を確保するための規制枠組み、およびリスク管理アプローチの開発準備を実施しました。

ナイル川流域の各国において、ダムは地域社会のレジリエンスを維持する上で重要な役割を果たしています。ダムは水貯留により干ばつや洪水の影響を緩和し、同時に季節的な淡水資源を活用して水不足や干ばつ対策に寄与しています。

ナイル川流域地域では、他地域と同様にダムの決壊は稀ですが、万が一決壊した場合、地域社会がダムの恩恵を失うのみならず、壊滅的な結果に直面する可能性があります。2024年、スーダンの北東部の紅海州でアルバートダムが決壊し、130人を超える命が失われました。また、ケニアのナイロビ北部のダム決壊では、少なくとも40人の死亡が確認されています。

ナイル川流域諸国は防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)の支援を受けて、より適切にダムの安全性に対するリスクを特定・管理するための取り組みを始めています。本支援は、日本−世界銀行防災共同プログラム(日本プログラム)を通じて提供されています。

ブルンジ、コンゴ民主共和国、エチオピア、ケニア、ルワンダ、南スーダン、スーダン、タンザニア、ウガンダにまたがるナイル川流域におけるダムのインベントリ作成は、GFDRRの支援における大きな転機となりました。

インベントリはこれらの国の政府がダムの位置を追跡するのに役立ち、ダムに関する主要な特性に関する情報を収集するのに寄与しています。また、ダムが長期にわたって安全かつ強靭であることを保証するための適切な規制枠組みおよびリスク管理アプローチの開発基盤を整えるのにも役立ちます。

ダムのインベントリを作成するにあたり、技術チームは地球観測および機械学習ツールを利用して9カ国のダムを検出し、ダムの位置情報、高さ、全長などの主要な特性をまとめました。800以上のダムが特定され、その中にはこれまで国内または世界規模のデータベースに含まれていなかった数百のダムも含まれています。また地球観測ツールを利用して、ダムが決壊した際に下流の住民に及ぼすリスク分析も実施しました。

遠隔調査は、ケニア側のナイル川流域にある小規模な未整備ダムを特定するのに役立ちました。これによりダムの安全性を確保し、今後の水資源計画を支援するにあたり、国の保有するダム情報を改善することができます。
Chemeril Chepyegon
ナイル川流域気候変動強靭化協力プロジェクト ダムの安全に関する技術ワーキンググループ ケニア政府代表

日本の専門知識は、GFDRRとナイル川流域諸国のダムインベントリに関するパートナーシップを促進する上で重要な役割を果たしました。特に日本における多くの事例研究を引用した2020年度報告書は、ダムの安全性確保におけるインベントリの重要性を強調しました。

ナイル川流域諸国政府がイベントリに基づきダムの安全性に関する規制枠組み開発に着手する一方で、イベントリに関わる活動はアフリカ大陸全体、さらにはアフリカ以外の地域にも広がり、ダムの安全性に関する取り組みを推進しています。

例えば本イベントリの初期開発は、世界銀行の信託基金であるアフリカ国際水域協力(CIWA)により資金提供された、ナイル川流域気候変動強靭化協力プロジェクトにおけるダムの安全に関する活動に役立ちました。本プロジェクトは、5つの主要テーマの1つであるダムの安全性に焦点を当て、気候変動への強靭性に関するナイル川流域諸国間の地域協力を促進することを目的としています。

またナイル川流域気候変動強靭化協力プロジェクトは、ダム保全を担当する政府機関の設立および改善に貢献しました。さらに、ダムの安全性に関するナイル川流域全体の規制枠組み、ダムの安全性に関する技術ガイドラインおよびダムの安全性に対するリスク管理枠組みの開発にも貢献しており、各国はこれらを自国の状況に合わせて調整することになります。

イベントリ作成にあたり、技術チームはダムの特定にオープンソースのアルゴリズムを使用しました。他の6か国(優先対象地域に選定されたタンザニア、ケニア、エチオピア以外の6か国)もこの例に倣い取り組みを促進しています。

GFDRRおよび日本プログラムによるナイル川流域におけるダムのレジリエンス向上への支援は、この重要な問題に対する長年の取り組みに基づいています。例えば、これまでGFDRRおよび日本プログラムは、インドネシアやインドなどの借り入れ国がダムの安全性に関する日本の経験を直接学ぶことができる一連の知識交換イベントを支援してきました。

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