ナイル川流域の各国において、ダムは地域社会のレジリエンスを維持する上で重要な役割を果たしています。ダムは水貯留により干ばつや洪水の影響を緩和し、同時に季節的な淡水資源を活用して水不足や干ばつ対策に寄与しています。
ナイル川流域地域では、他地域と同様にダムの決壊は稀ですが、万が一決壊した場合、地域社会がダムの恩恵を失うのみならず、壊滅的な結果に直面する可能性があります。2024年、スーダンの北東部の紅海州でアルバートダムが決壊し、130人を超える命が失われました。また、ケニアのナイロビ北部のダム決壊では、少なくとも40人の死亡が確認されています。
ナイル川流域諸国は防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)の支援を受けて、より適切にダムの安全性に対するリスクを特定・管理するための取り組みを始めています。本支援は、日本−世界銀行防災共同プログラム(日本プログラム)を通じて提供されています。
ブルンジ、コンゴ民主共和国、エチオピア、ケニア、ルワンダ、南スーダン、スーダン、タンザニア、ウガンダにまたがるナイル川流域におけるダムのインベントリ作成は、GFDRRの支援における大きな転機となりました。
インベントリはこれらの国の政府がダムの位置を追跡するのに役立ち、ダムに関する主要な特性に関する情報を収集するのに寄与しています。また、ダムが長期にわたって安全かつ強靭であることを保証するための適切な規制枠組みおよびリスク管理アプローチの開発基盤を整えるのにも役立ちます。
ダムのインベントリを作成するにあたり、技術チームは地球観測および機械学習ツールを利用して9カ国のダムを検出し、ダムの位置情報、高さ、全長などの主要な特性をまとめました。800以上のダムが特定され、その中にはこれまで国内または世界規模のデータベースに含まれていなかった数百のダムも含まれています。また地球観測ツールを利用して、ダムが決壊した際に下流の住民に及ぼすリスク分析も実施しました。