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特集 2022年1月11日

世界経済の減速に伴い、途上国に「ハードランディング」のリスク


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マニラ(フィリピン)の市場で売られている野菜。写真:Ezra Acayan/世界銀行


こうした困難な状況に加え、新興国及び途上国(EMDEs)には、コロナ変異株による新たな脅威と、インフレ率の上昇、過去最高レベルに膨らんだ債務そして所得格差の拡大など、経済面で様々な課題が山積みとなっている。

世界経済見通し(GEP)」の最新版は、世界経済の成長率が、繰延需要の消失と世界規模での財政面・金融面の支援の縮小を受け、2021年の5.5%から、2022年は4.1%、そして2023年は3.2%と大きく鈍化すると予測している。さらに、新型コロナウイルスの新たな変異株であるオミクロン株の感染が急速に拡大していることから、短期的にパンデミックによる経済活動の混乱が続く可能性が高い。新興国・途上国の成長率は、2021年の6.3%から、2022年は4.6%、2023年には4.4%まで減速すると予測される。

今回の見通しでは、特にEMDEsの状況が厳しい。第一に、アメリカと中国をはじめ主要国経済の著しい減速に伴い、多くのEMDEsで財とサービスの外需の縮小が予測される。しかも、経済の減速と同時に、こうした国々の多くにおいては、新たな新型コロナの大規模な流行、サプライチェーンの問題の長期化及びインフレ圧力、そして金融の脆弱性の悪化が世界の広範囲で起こることなど、新たな課題に必要に応じて対応するための政策余地が尽きようとしている。こうした脅威が組み合わさることにより、これらの国々でハードランディングのリスクが上昇する可能性がある。

「先進国と、新興国及び途上国、2つの異なる経路をたどっている。」と、世界銀行のアイハン・コーゼ開発見通し局長は述べた。「鈍化するものの、先進国の成長率は依然として高く、先進国全体のGDPは2023年までにパンデミック以前の傾向に回帰すると予測される。一方で、新興国・途上国は低空飛行を続けており、政策余地という意味では、向かい風を受けた場合に使える燃料が限られている。それが、ハードランディングを懸念する理由だ。」

広がる所得格差

パンデミックにより世界の所得格差が拡大し、これまで20年間で達成した格差の縮小が一部反転し、影響は脆弱層やEMDEsに偏る傾向にある。EMDEsの所得格差は、先進国と比べかなり大きい。

各国による格差の大幅な拡大は、パンデミックからの回復において、それぞれの国により 明暗が分かれている結果である。一方、EMDEsの国内格差がそれほど拡大していないのは、低所得世帯、未熟練労働者及びインフォーマル労働者、女性などの脆弱層に深刻な所得の損失と失業が発生していることを反映している。国内格差が特に大きいのは、依然としてラテンアメリカ・カリブ海地域とサブサハラ・アフリカ地域で、両地域を合わせると世界の最貧困層の約3分の2が暮らしている。

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コロナワクチン接種の準備をする保健従事者。写真:Ezra Acayan/World Bank.

しかし、社会における格差は所得の開きよりも広範にわたり、特にEMDEsと低所得国においてその傾向が強い。 このままのペースでは2023年末にも1回の接種を受けた人の割合は人口の約3分の1にとどまる計算になる。ワクチン接種率は、

パンデミック対策としての抑制措置の結果、子供の学習に深刻な混乱が起きており、教育格差を悪化させている。在宅勤務や遠隔授業などオンライン活用の機会は、低所得世帯も公平にアクセスできるわけではない。ジェンダー格差も広がり、インフォーマル労働者が大規模な失業と所得の損失から特に大きな打撃を受けている。


"鈍化するものの、先進国の成長率は依然として高く、先進国全体のGDPは2023年までにパンデミック以前のトレンドに回帰すると予測される。一方で、新興国・途上国は低空飛行を続けており、政策余地という意味では、向かい風を受けた場合に使える燃料は限られている。それが、ハードランディングを懸念する理由だ。"
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アイハン・ コーゼ
世界銀行 開発見通し局長

マルチメディア

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途上国は「ハードランディング」に向かっているのか?

パンデミックも3年目に入り、各国が新型コロナウイルス感染症への対応に疲弊する中、世界経済は大幅な減速局面に入っている。Expert Answers が世界銀行のアイハン・コーゼ開発見通し局長と共に、世界経済に立ちはだかるリスクについて話し合い、政策対応を提言する。

一次産品価格の循環:EMDEsにとっての好機

こうした国々は、一次産品価格の変動からますます打撃を受けるようになっているが、そうした価格循環の原因は管理できないものであることが多い。

一次産品価格の高騰で、昨年いくつかの一次産品価格は過去最高レベルに達した。それに先立つ2020年には、コロナ危機の結果、大幅で広範な下落がみられた。過去半世紀の景気後退時における一次産品価格の変動として、2020年の下落とその後の上昇はこれまでになく大幅だった。

こうした種類の一次産品価格循環はEMDEsにとって好機になり得る、と「世界経済見通し」の最新版は指摘する。過去50年間に、一次産品価格の上昇幅は下落幅より大きいことが多かった。平均すると価格上昇は月間4%だったのに対し、景気後退時の下落は1%だった。価格循環の周期は平均約6年だった。

そこで、EMDEsの政府は価格上昇を活用して、経済的ショックへの対応においてより強力な態勢を整えることが可能だ。例えば、原油輸出国は、現在の原油収入増がもたらす機会を活用し、財政政策の余地を回復し、歳出を長期的課題への対応に充てることが可能である。各国はまた、輸出と国の資産ポートフォリオを多様化することで一時産品への依存を緩和するための措置を講じることも可能である。こうした資産には、物的資産だけでなく人的資本も含まれるので、各国はそうした収益を活用して、例えば保健、教育、デジタル・インフラへの投資を拡大することが可能である。



債務の問題:同じ過ちを繰り返さない

上昇したのは公的債務だけでなく民間債務も同様である。債務上昇は、対外債務と国内債務、先進国とEMDEsを問わずみられる。こうした債務上昇は、コロナ危機による世界的な景気後退と共に、低所得国を中心にEMDEsにおける債務の脆弱性を悪化させている。

債務救済と債務再編のイニシアティブには、債務の透明性向上が求められる。現在、債務返済に透明性が欠如していることが、債務の持続可能性分析を阻み、当該国の財務の全体像が明らかになるまで救済を遅らせる可能性がある。

G20のDSSI後の債務措置に係る共通枠組のプロセスは、G20とパリ・クラブ加盟国が協力して多くの低所得国の債務救済にについて協議を行うというものである。同枠組の仕組みはなおも進化を続けており、より時宜を得た救済を提供できるよう改善する余地があると、報告書は指摘する。過去に国際社会が協調して実施した債務救済イニシアティブは、債務ストックの軽減の方が債務救済よりも、過剰債務に伴うGDPの損失を減らす可能性のあることを示唆している。

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リマ(ペルー)の病院の外で待つ女性。 撮影: Victor Idrogo/World Bank

断固たる政策措置が効果的

政策担当者は、大きく不足する投資の解消に役立つものを含め、長期的な成長見通しを高めるプロジェクトへの支出を優先するとよい。国内収益の動員を強化し、パンデミック関連の歳入減少により激減した財政面のバッファーの補充に役立てることができる。公共支出の増加に充てることも可能である。

政策担当者は、大きく不足する投資の解消に役立つものを含め、長期的な成長見通しを高めるプロジェクトへの支出を優先するとよい。国内収益の動員を強化し、パンデミック関連の歳入減少により激減した財政面のバッファーの補充に役立てることができる。公共支出の増加に充てることも可能である。

こうした政策提言を実施するには、かなりの財源が必要であり、過去最高の債務を抱えた状況では容易ではない。そこで、低所得の途上国に財源を提供するための世界規模の協力が必要となる。また、規則にのっとった世界貿易の徹底と、より短期間での生産性向上を可能にする投資環境も求められている。



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