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特集 2021年3月18日

人事が語る~グローバルキャリア構築のための処方箋~ ブログシリーズ 第9回 世界銀行グループにおける新規採用者対象バーチャル・オン・ボーディング制度 (佐藤永子 上級人事専門官)

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ジェファーソン記念館周辺 Credit: Getty Images/iStockphoto


長く寒いアメリカ東海岸の冬もようやく終わりをつげ、ワシントンDCもいよいよ春到来といわんばかり暖かい日が続いています。 新型コロナウイルス感染症が流行する前、ワシントンDCでは例年全米桜祭りがこのシーズンになると開催され、ジェファーソン記念館周辺、ポトマック公園やタイダルベイスンに咲き誇る奇麗な桜を一目でも見ようと全世界・全米から多くの人が訪れていました。桜はアメリカと日本の間の友好関係を育て強めようと日本から寄贈され、多くの人を魅了してきました。日本で春といえば、入学、進級、入社など新しいスタートを切る節目の月です。そんな時期に咲き薫る桜は様々な思い出を呼び起こすきっかけになるのではないでしょうか。私自身、世界銀行グループ入行もまた大切な節目の一つとして、鮮明に残っています。  
今回のブログではこれから世界銀行グループに応募をご検討の方から、採用オファーを受けこれから入行される方まで幅広く疑問に思われているであろう入行サポートに焦点を当て、入行しない限り得られない世界銀行グループにおける、オン・ボーディング制度の情報や取り組みについてお届けしたいと思います。


世界銀行グループにおけるバーチャル・オン・ボーディングの取り組みと新型コロナウイルス感染症流行下でのサポート特徴

世界銀行グループから採用通知を受け取り、契約を交わし、入行・始業日が確定するといよいよ、入行へ胸が高鳴ると同時に不安に感じる事もあると思います。まして新型コロナウイルス感染症流行下で入行となると、勤務地移転に伴うご自身・ご家族にのしかかる不安が多くあると思います。世界銀行グループは新型コロナウイルスの世界的感染の脅威が迫っていた初期段階からいち早く、新規採用者を含め職員に対して、新しい勤務地への転勤などは柔軟に対応してきました。職員と家族の安全確保を第一に、2020年3月より一斉に完全在宅勤務に切り替えられ、テレワーク制度を支える技術を駆使し、現在も世界各地の世界銀行グループ事務所の多くは在宅勤務を行っています。新規採用者に対しても安全確保を最優先し、入行支援も柔軟に対応しています。例えば勤務地がワシントンDC本部であったとしても、バーチャル・オン・ボーディング制度により、新型コロナウイルス感染症が収束して安全に現地勤務が開始できるまでの間、日本やまた世界各地域からの在宅勤務も可能にするという対応です。

国際機関である世界銀行グループでは毎月一定数の職員やコンサルタントへの採用が行われているため、日本の企業などで取り組まれている定期的な入社式や新入社員研修などはありません。一年を通じて、常にポジション募集や採用がある為、入行時に合わせ毎3カ月に1度行われるコーポレートオリエンテーションが開催されています。そして、短期間で単発的な新入研修(オリエンテーション)で終わらず、継続的なサポートプログラムを枠組みとしたバーチャル・オン・ボーディング制度に力をいれて取り組んでいます。 それは、バーチャル・オン・ボーディングプログラムを通して、採用から入行まで組織を上げて時間と労力を費やして見つけた人材が早期即戦力化となり、存分に活躍してもらえるサポート体制を作ることで、組織全体に還元されるという大きな利点に基づいています。また、時間を費やし採用した幹部人材が組織文化になじめず、本来持っているはずの力を存分に発揮するまで大変苦労したという実際の経験に基づいて組織的サポートを向上する上で人事ができる事として検討、改善を重ね実施しているアプローチです。人事に携わる一人として言える人事職の醍醐味の一つは、新規採用者が部署でチームに馴染み、良い成果を上げていること聞く時で、それは自分のこと以上に嬉しく思います。
 

世界銀行グループにおけるバーチャル・オン・ボーディング制度とは

世界銀行グループにおけるバーチャル・オン・ボーディング・プログラムで特化する取り組みの一つとしては、新規採用した本人だけに「組織の基本的知識をつけてもらう」のではなく、部署の上司や同僚も対象として、職場全体で「新規採用者を受け入れる立場に立ち、早期即戦力となってもらうために惜しみなく一役担う!」というアプローチを行い、既存メンバーと新メンバーを半年かけ統合させていく事を目的にしたプログラムによって構成されています。それではその概要を簡単にご説明いたします。

世界銀行グループにおけるバーチャル・オン・ボーディング・プログラムは9つのステージによって構成されています。

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オンボーディング期間に役に立つアドバイス

入行と並行して新しい職場・職務に慣れるまでの道のりは常に不安と手探りがつきものです。築き上げなければならないネットワーク、組織文化の理解と融合、また自分の持ち味を発揮するなど、課題は沢山あると感じられるでしょう。決して一人で悩む必要はないという事を念頭に、自身の経験も通して2点アドバイスします。
 

バーチャル・オン・ボーディング・バディーをフル活用

先述したように、世界銀行グループにおけるバーチャル・オン・ボーディング・プログラムで特化する取り組みの一つとしては、職場全体で「新規採用者を受け入れる立場に立ち、早期即戦力となってもらうために惜しみなく一役担う!」というアプローチを行っています。その一環として、バーチャル・オン・ボーディング・バディーがいます。簡単に言えば、同じチームや部署にいる同僚が入行6カ月間、「相談役」となり様々な疑問質問に答えてくれるという役割を果たします。相談内容は様々ですが、目的は「いち早く新規採用者に職場に慣れ、即戦力へとなれる為」です。私も入行時 、同じチームの同僚がオン・ボーディング・バディーとなってくれ、親身にアドバイスにのってくれました。入行から9年が経つ今でも、彼女は私にとって素晴らしい同僚であると共に、マラソンという趣味も共有するまでの親友となりました。


オン・ボーディング期間、上司を巻き込んでサポート体制を作り上げる

一言にサポート体制といっても多くあります。ここでいうサポート体制とは、オン・ボーディング期間以降も続くサポート体制強化を自身が主体となって作るという視点です。オン・ボーディング期間はサポートを受ける立場に回りがちで、主体性に欠ける傾向に陥ります。この点を踏まえ、私自身、入行当時の上司とは「入行100日目ミーティング」と銘打ち、入行100日目を迎えた自身の率直な感想や、今自身が課題と思う点、上司からのフィードバック、またサポートしてもらいたい点等をざっくばらんに話し合う場を持ちました。自分からリクエストした入行100日目ミーティング後、フォローアップとして「会うべき人」リストも頂き、徐々にネットワークが広がっていき、仕事が円滑に進むようにもなりました。その後も色々と気にかけてもらい、キャリアなども相談できる関係性に繋がったと思います。オン・ボーディング期間だからこそ主体性を持ち、自身からアプローチを掛けるようと発想の転換をする事で、入行最初6カ月を有意義に活用できるのは勿論の事、継続的なサポート体制を自身が主体となって作り上げていけることでしょう。

オン・ボーディング・プログラム事務局も新規採用者を受けいれるマネージャーなどを対象に最初の6カ月間どのようなサポートをしていくべきかなどを項目化し受け入れ・サポート体制強化にお手伝いしています。

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まとめ

今回は、世界銀行グループに入行されない限り、全くといって知る機会のない世界銀行グループ における新規採用者対象バーチャル・オン・ボーディング制度に焦点を当て、皆さんが疑問に思われているであろう、入行直前や直後のサポートに関する情報提供を心がけました。

世界銀行グループで働く醍醐味は何といっても、2030年までに極度の貧困を撲滅し、繁栄共有を促進するという組織の使命を共有する職員が世界各国から採用され、日々使命達成に向けて尽力しているという点にあります。多民族そして様々な文化背景から成り立つバラエティー豊かな職員層で働く職場環境は正に世界銀行グループの特徴です。
What Moves Someone to Work at the World Bank Group?(ビデオ英語)もご参照頂ければと思います。
将来、また今、世界銀行グループ入行を控え、この記事を読まれているあなたといつか一緒に仕事ができる日を心からお待ちしています。
 

 

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佐藤 永子 世界銀行人事総局上級人事専門官
Eiko Sato,  Senior HR Specialist, Talent Management

ハワイ大学卒後、コロンビア大学ティーチャーズカレッジ進学。国際開発教育平和学 教育修士号を取得。卒業後は国連開発計画(UNDP)ニューヨーク本部勤務後、2012年国際金融公社(IFC)ワシントン本部に移り、人事専門官・上級人事専門官を歴任。2015年より2020年までプログラムマネージャー(リーダシップ&マネジメント)として世銀総裁人材育成プログラム(Presidential Leadership Program)など世界銀行グループにおける多才な人材育成、リーダシップ・マネジメント開発に携わる。

2020年より現職、人材開発戦略サクセッション・プランニング(短期・中期・長期それぞれの視点で潜在能力を持っている人材をそのポジションに就くまでに必要なトレーニングや業務経験を積んでもらう業務)を担当。



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