世界銀行の各地域総局では半年に1度(春と秋)、地域内の経済概況と展望をまとめた半期経済報告を発表しています。このうちラテンアメリカ・カリブ海地域担当チーフエコノミスト室は2023年10月4日、「ラテンアメリカ・カリブ海地域経済報告 2023年秋版 デジタル接続の拡大:包摂性と成長に向けて」(Latin America and the Caribbean Economic Review, October 2023 – Wired: Digital Connectivity for Inclusion and Growth)を発表しました。ラテンアメリカ・カリブ海地域は、この数十年間にマクロ経済の強靱性強化を進め、パンデミック後の複数の危機への対応にも比較的成功したと言えます。しかし、同報告書によると、成長のペースは貧困削減と雇用創出にはなおも不十分であり、財政制約のために必要な投資が制限されていますが、デジタル接続の拡充と補完的な政策を組み合わせることで、より活力のある包摂的な社会実現の可能性が生まれます。
同報告書は、2023年の同地域のGDP成長率を、以前の予測である1.4%からわずかに上方修正して推定2.0%としていますが、世界のほかのすべての地域を下回るとみています。2024年と2025年にはそれぞれ2.3%と2.6%の成長が予測されますが、2010年代と同様のこのペースでは、包摂性と貧困削減において切望される進展は見込めません。
今回のモーニングセミナー(第177回)では、同報告書をとりまとめたウィリアム・マロニー世界銀行ラテンアメリカ・カリブ海地域担当チーフエコノミストが同報告書の主なポイントを、日本の皆様に向けてオンラインでご説明しました。
日時
2023年11月2日(木)午前8時~午前9時(日本時間)
スピーカー
ウィリアム・マロニー
世界銀行 ラテンアメリカ・カリブ海地域担当チーフエコノミスト
1990年から1997年まで、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校教授(経済学)。その後世界銀行に入行し、2009年までラテンアメリカ・カリブ海地域担当チーフエコノミスト室リードエコノミスト、2009年から2014年まで開発経済総局(DEC)リードエコノミスト、世界銀行貿易・競争力担当チーフエコノミスト兼イノベーション・生産性グローバルリード、公正成長・金融・制度(EFI)担当チーフエコノミストを経て、現職。2011年から2014年までアンデス大学客員教授として、コロンビア政府のイノベーションと企業の改善のための取り組みにも従事。ハーバード大学で学士号を取得、コロンビアのアンデス大学で学び、カリフォルニア大学バークレー校で経済学博士号を取得。
発表資料
Wired: Digital Connectivity for Inclusion and Growth(英語、PDF)
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