世界銀行の各地域総局では半年に1度(春と秋)、地域内の経済概況と展望をまとめた半期経済報告を発表しています。このうちアフリカ地域担当チーフエコノミスト室は2022年4月13日、「アフリカの鼓動:アフリカ経済動向分析2022年4月版」(Africa’s Pulse, April 2022 Edition)を発表しました。
同報告書では、サブサハラ・アフリカ地域が引き続きコロナウイルスの新たな変異株、世界的なインフレ、サプライチェーンの混乱、気候ショックへの対応を迫られる中、2022年の経済成長率は2021年の4%を下回る3.6%になると予測しています。地域の成長にとって新たな重圧となっているのが、世界的な一次産品価格の高騰で、ロシアとウクライナの間の紛争が始まって以降、価格上昇が加速しています。世界屈指の穀物輸出国であるロシア(世界最大の肥料輸出国でもある)とウクライナは、アフリカによる小麦、トウモロコシ、種子油の輸入に大きな割合を占めますが、紛争が長引けばいずれの輸入も途切れる恐れがあり、サブサハラ・アフリカ諸国はまた、世界的な金融引締めと外国からの資金流入の減少による打撃をこうむる可能性が高い一方で、燃料・食料価格の高騰がアフリカ諸国で広くインフレ率のさらなる上昇につながり、都市部を中心に貧困・脆弱層を直撃すると同報告書は分析しています。懸念事項として、食料・エネルギー価格の上昇に伴うインフレの結果、特に現在の政治の不安定化に伴い、内乱発生の可能性が高まります。
今回のセミナー(モーニングセミナー第141回)では、同報告書をとりまとめたセザール・カルデロン世界銀行アフリカ地域担当チーフエコノミスト室リードエコノミストが、ワシントンよりオンラインで日本の皆様向けに同報告書の主なポイントをご説明しました。
日時
2022年5月20日(金)午前8時~午前9時(日本時間)
スピーカー

世界銀行 アフリカ地域担当チーフエコノミスト室 リードエコノミスト
2005年、世界銀行入行。ラテンアメリカ・カリブ海地域総局チーフエコノミスト室、金融・民間セクター開発総局チーフエコノミスト室、世界開発報告(WDR)執筆担当室に勤務。世界金融開発報告(GFDR)2013年版、世界開発報告(WDR)2014年版の執筆担当チームの一員。オープンエコノミーのマクロ経済、成長と開発(特にインフラ開発と対外戦略の実質的インパクト)に従事。ローチェスター大学より経済学修士号および経済学博士号取得。ペルー国籍。
発表資料
Building resilience: the future of social protection in AFRICA(英語、PDF)
世界銀行グループ TICADセミナーシリーズ
アフリカ開発会議(TICAD)はアフリカの開発をテーマとする国際会議で、1993年以降日本政府が主催し、世界銀行も共催しています。第1回から第3回は東京で、第4回と第5回は横浜で開催され、3年に一度の開催となって2016年8月27日~28日、第6回が初めてアフリカのケニアで、そして2019年8月28日~30日、第7回(TICAD7)が横浜で開催されました。世界銀行東京事務所では、TICADとアフリカ各国の課題と展望に関するTICADセミナーシリーズを2015年10月に開始し、TICAD7以降も、主にアフリカ地域におけるビジネスに従事されている企業の皆様向けに、同シリーズをモーニングセミナーの枠で継続的に開催しています。
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