世界銀行は2021年8月23日、新報告書「水リスクとその影響」(全2巻)を発表しました。同報告書は、気候変動により水をめぐる世界規模の危機が加速する中、不安定な降雨量が移住を左右する要素のひとつになると予想され、移民が流入した結果、現在、都市は世界人口の55%を占めているが、今後、次々と水不足が始まることになると指摘しています。また同報告書では、水が移住に与える影響に関する初の世界的アセスメントの結果を掲載しており、分析には、64カ国の5億人近くが対象の189件の国勢調査で得られた国内避難民に関する最大規模のデータセットが用いられたほか、今回初めてまとめられたいくつかの国・世界レベルのデータセットも使われています。また、中東・北アフリカ地域(MENA)では人口の60%が水不足の地域に暮らしており、紛争により避難を余儀なくされた人々や受入コミュニティを中心に、域内の人々にとって水は既に深刻な脆弱性の一つであると指摘しています。さらに、1970年から2000年の間に、国内避難民増加の10%は水不足と関連していることが明らかになり、今世紀末までに、悪化する干ばつにより約7億人が影響を受けるとみられています。こうした異常気象の影響は途上国に偏って発生し、低・中所得国の人口の85%以上の暮らしに影を落とすことになり、貧困層の場合、影響を受けない場所へと移り住む余裕はないことが多く、貧困国の人は裕福な国の人と比べ、移住しない傾向が4倍も強いと報告書は指摘しています。
今回のモーニングセミナー(第122回)では、同報告書をとりまとめたエシャ・ディリップ・ザヴェリ世界銀行水グローバルプラクティス水エコノミストとアンダース・ヤガースコッグ世界銀行水グローバルプラクティス上級水資源管理専門官が同報告書の主なポイントを、日本の皆様に向けてオンラインでご紹介しました。
日時
2021年10月15日(金)午前8時~9時(日本時間)
スピーカー
世界銀行 水グローバルプラクティス 水エコノミスト
水資源管理、気候変動の影響、環境の保健への影響、環境と社会・経済システムに関する地理空間データの統計分析への活用を専門としており、学術雑誌への論文発表、世界銀行水グローバルプラクティスによる旗艦報告書 Quality Unknown(2019)、Uncharted Waters(2017)などの執筆に従事した。世界銀行入行前は、スタンフォード大学食料安全保障・環境センターでポスドク・フェロー。ペンシルバニア州立大学で環境経済学・人口動態学博士号を取得。
世界銀行 水グローバルプラクティス 上級水資源管理専門官
世銀入行以前は、ヨルダンのスウェーデン大使館で中東・北アフリカ地域の水資源担当参事官、またストックホルム国際水研究所(SIWI)知識サービス担当局長として国際水管理ユニットを率い、応用研究リーダーを務めた。国連開発計画(UNDP)Shared Water Partnershipを統括し、ヨーテボリ大学グローバル学科平和・開発研究部門で准教授を務めた。スウェーデン外務省、ケニアのスウェーデン大使館、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)でも勤務した。2003年、スウェーデンのリンシェーピング大学水・環境学科でヨルダン川流域における水関連の交渉に関する研究で博士号を取得。グローバルな水関連の課題に関して、学術論文、共著、記事・報告書などを100本以上発表している。
発表資料
Ebb and Flow Volume 1. Water, Migration and Development(英語、PDF)
Ebb and Flow Vol 2 Water in the Shadow of Conflict In the Middle East and North Africa(英語、PDF)
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