世界銀行は、世界で最も貧困人口が集積する南アジア地域の経済概況と開発の進捗状況に焦点を当てる新報告書「南アジア経済報告(South Asia Economic Focus: SAEF):石油価格低下の恩恵(Making the most of cheap oil)」を2015年4月中旬に発表します。
インド新政府による一連の政策改革やビジネス機会の推進と、石油価格の歴史的な下落は、南アジア地域8か国(アフガニスタン、インド、スリランカ、パキスタン、バングラデシュ、ブータン、モルディブ、ネパール)の経済にとって追い風となっています。財政・外交・インフレ危機からの改善が進み、インドは現在、世界でも最も急速に成長する大規模経済となりつつあります。最近発表されたインド連邦政府予算案は、ゆっくりとですが継続的に実行されている財政改革を推し進める内容であり、特にインフラ投資と州政府向け予算を強化しています。パキスタンは外交面では安定した立場を維持しており、一定の経済成長は見られるものの、国内での反政府運動や治安悪化が課題です。スリランカでは政権が交代し、改革のための野心的な100日プログラムを進めています。アフガニスタン新政権は、深刻な財政危機に陥らないよう取り組みを進めています。バングラデシュでは、国内の主要政党間の緊張の高まりにより、経済に対するリスクに直面しています。
南アジア地域8か国はいずれも原油輸入国で、石油価格下落の恩恵を受けており、とくにインドは恩恵を受けた世界最大の国のひとつです。他方、その効果は、燃料補助金の規模、消費者および発電業者への影響などの状況に応じ、各国間にばらつきがあります。新報告書「南アジア経済報告(SAEF)」では、最近の石油価格の下落が南アジア地域にもたらす影響や、今後の展望について詳細に分析する予定です。
2015年3月20日、マーティン・ラマ世界銀行南アジア地域担当チーフエコノミストに来日にあたり、インドをはじめ南アジア地域におけるビジネス機会にご関心をお持ちの日本企業の皆様を対象に、新報告書「南アジア経済報告(SAEF)」の主な論点を、4月中旬の発表に先駆けてご紹介するセミナーを開催しました。
マーティン・ラマ 世界銀行南アジア地域担当チーフエコノミスト
プログラム
基調講演
マーティン・ラマ 世界銀行南アジア地域担当チーフエコノミスト
当日の資料
South Asia Economic Focus- Spring 2015 Making the Most of Cheap Oil (PDF)
コメント
湊一樹 ジェトロアジア経済研究所 地域研究センター南アジア研究グループ
当日の資料
Comments on South Asia Economic Focus (PDF)
スピーカー
マーティン・ラマ 世界銀行南アジア地域担当チーフエコノミスト
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世界銀行開発経済総局(DEC)でリサーチ業務に10年間従事した 後、ベトナム担当リードエコノミストとしてハノイ事務所に駐在し、2007年から2009年までベトナム担当国別局長代行を務める。「世界開発報告 2013年版:仕事」の担当局長を経て現職。インドのデリーに駐在中。フランスでマクロ経済学博士号取得。出身国のウルグアイでは国内最大のシンクタンク CINVEの局長、世界銀行での勤務の傍ら2005年までパリ大学で開発経済学担当の客員教授も歴任。ウェブサイト