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publication 2021年9月15日

途上国におけるサービス産業の貢献:サービス主導型開発の可能性

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これまでは、製造業主導の開発が雇用創出と繁栄促進のための伝統的モデルとして機能してきた。だが過去30年間に、多くの途上国でサービス産業が製造業よりも速いペースで成長を遂げており、2019年、途上国のサービス産業は平均でGDPの55%、雇用の45%を占めるに至った。開発途上国において経済に占める製造業の割合が減少する中、低・中所得国はサービス産業で質の高い雇用機会を拡大しつつ、高所得国に追いつくことができるのだろうか。世界銀行は新報告書「途上国におけるサービス産業の貢献:サービス主導型開発の可能性」の中で、サービス主導型開発の可能性について検証している。調査結果と予想される影響は、世界銀行が「より多くの人によりよい仕事」を提供するために掲げる雇用と経済的変革のアジェンダにとって励みになるものである。

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同書は、政策担当者が製造業を重視しているにもかかわらず、サービス産業が経済的変革をこれまで以上に牽引するようになっているとしている。「現在、低・中所得国の労働者の半数はサービス産業で雇用されており、1990年代以降その生産性が向上し、収入を得ることが可能になっている。」と、共同執筆者のガウラブ・ナイヤール公正成長・金融・制度担当副総裁室シニア・エコノミストは言う。

「サービス主導型の経済的変革は実現可能である。規模拡大、イノベーション、波及効果など、過去に製造業の生産性を高めた要素について新たな機会が開かれているからだ。」と、共同執筆者のエルウィン・デイビス公正成長・金融・制度担当副総裁室エコノミストは言う。遠隔サービス、支店開設やフランチャイズ網の構築の可能性が開け、サービス提供者がより大きな市場にアクセスする機会が拡大している。ビジネスの過程でデジタル・テクノロジーを活用し、無形資本を蓄積することで、労働力を補いながらイノベーションを推進することができる。サービス産業はまた、工業製品の川上部門を支え川下部門を補うなど、ほかの部門に恩恵をもたらす。



"現在、低・中所得国の労働者の半数はサービス産業に雇用されており、1990年代以降その生産性が向上し、収入を得ることが可能になっている。"
ガウラブ・ ナイヤール
公正成長・金融・制度担当副総裁室チーフ・エコノミスト

「各国は、工業化のどの段階にあろうと、サービス産業がもたらすこうした状況刷新の機会を活用することができる。」と、共同執筆者のメアリー・ホールワード・ドリマイヤー公正成長・金融・制度担当副総裁室上級経済アドバイザーは言う。例えば、コスタリカ、ガーナ、インド、パキスタン、フィリピンでは、IT、プロフェッショナル、科学、技術分野のサービスがサービス輸出全体の半分以上を占めた。さらに、ヘルスツーリズム  では特に人気のある世界で上位20の目的地に、中国、コスタリカ、インド、ヨルダン、マレーシア、メキシコ、タイ、トルコなど多くの低・中所得国が含まれている。

したがって、政策担当者にとっては、製造業とサービス業のどちらを支援すべきかが問題なのではなく、生産性向上と雇用創出に貢献するサービス業の可能性が高まっていることを認識することが重要であり、この機会を活用するため行動を起こす必要がある。


各界からのコメント

「サービス産業を理解するために必要な知識を網羅した書籍だ。各種サービスは世界経済を席巻しているが、製造業や農業ほどの注目を浴びていない。誰もが一読すべき1冊である。」

-           ローラ・アルファーロ
ハーバード・ビジネス・スクール経営管理学教授(ウォーレン・アルパート財団賞受賞)、元コスタリカ国家企画経済政策大臣

「成長モデルは製造業ベースの開発からサービス主導型の開発へと移行しつつあり、その動きは新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって加速している。本書は、この数十年間の開発においてサービスが果たした役割に関し、十分に認識されていない重要な一連の事実を示している。明確かつ簡潔で説得力のある本書には、事実と共に効果的な図表が多く掲載されており、サービス主導型開発について専門家の考えを変える可能性のある分析的アプローチが使われている。学者と政策担当者の双方にとっての必読書である。」

-           リチャード・ボールドウィン
ジュネーブ国際開発高等研究所国際経済学教授、VoxEU編集長

「入念に執筆された本書は、サービス産業がすべてのセクターにおいて生産性向上を促進するようになっており、その結果、途上世界全体での輸出と成長の原動力の多様化に貢献できることを示している。政策担当者が自らの責任で無視してしまうような可能性に満ちた将来がここに示唆されている。」

-           ステファン・ダーコン
オックスフォード大学経済政策教授、英国外務国際開発省外務大臣の政策顧問

「本書は、データが乏しい上に甚だしく注目の足りない分野について極めて貴重なデータと分析を豊富に掲載している。途上国のサービス・サブセクターごとの差異を検証した本書のリサーチは、開発戦略にサービス産業を取り込もうとする政策担当者にとって極めて貴重であるはずだ。」

-           J・ブラッドフォード・ジェンセン
ジョージタウン大学マクドナウ経営大学院マックレイン/シェーカー 国際ビジネス教授

「本書は、開発と経済成長の推進においてサービス産業を中心に据える必要があることを明確にしている。どの所得レベルの国でも、サービス産業は大規模かつ拡大中であり、一部の見方とは異なり、生産性向上にとって大きな潜在性を秘めている。本書は、サービスの生産性に関してかつてないほど総合的なエビデンスを集めたもので、サービス産業の持つ潜在性に研究者や政策担当者がこれまで以上に注目すべきであることの根拠を効果的に示している。」

-           チャド・シバーソン
シカゴ大学ブース経営大学院ジョージ・C・ティアオ経済学特別教授