世界の水資源は逼迫しており、都市における持続可能な水利用は、多くの政府にとって最優先事項となっています。22億人がいまだに安全に管理された飲料水を利用できず、さらに34億人が十分な衛生サービスを利用できていないため、国や自治体の給水サービスの担当者、そして水道事業者は、都市の水管理の課題に対する解決策を早急に模索しています。💧
世界銀行東京開発ラーニングセンター(TDLC)は2月26日から3月1日まで、世界銀行水グローバルプラクティスおよび国際金融公社(IFC)の「気候変動のための公益事業者イニシアティブ(U4C)」と共同で、東京と福岡で「都市における持続可能な水利用」に関する都市開発実務者向け対話型研修(テクニカルディープダイブ:TDD)を開催しました。本TDDには、6か国の国別チームと6社の公益事業者チームが含まれた計約60名の政府関係者および公益事業者が参加しました。初めてIFCと共同で実施された本TDDの主な目的は、世界の水の専門家を招集し、水不足、気候変動、災害に直面する都市の水資源の強靭性と効率性に関する日本と世界の解決策を共有することでした。5日間にわたる研修では、水に関する政策と枠組み、水資源と強靭性、イノベーションとデジタルソリューションという3つの重要なトピックが取り上げられました。
TDDの参加者は、TDLCの都市パートナーシッププログラムのパートナーである福岡市を訪れ、都市の水サービスにおける負荷と適応の実例を学び、都市化と気候変動が交錯する現状を目の当たりにしました。福岡市は、1970年代と1990年代に深刻な水不足と洪水に直面した歴史を持ち、TDD参加者と水管理に関する幅広い知識と経験を共有するのに適していました。福岡市は、節水型都市づくり政策、世界で最も低い無収水率、下水処理水の再利用や海水淡水化を含む水の再利用と再生のための施設開発のリーダーであることから、「水を大切にする節水型都市」として知られています。福岡市の多々良浄水場、福岡市水管理センター、中部水処理センターへの視察は、理論と現場の技術業務を結びつけるものでした。
TDDの期間中、ピアラーニングと知見共有の機会が数多く設けられました。研修初日には、アンへリカ・ヌーニェス氏(世界銀行都市・防災・強靭性・土地グローバルプラクティス(GPURL)グローバル・プログラム・ユニット プラクティスマネージャー)が参加者を歓迎し、グスタボ・サルティエル氏(世界銀行上級水専門家)とダン・バルディ氏(IFC水衛生グローバルリード)がテーマ別プレゼンテーションを行い、都市における持続可能な水利用の重要性と、それを実現するための課題について強調しました。続いて、荒巻俊也教授(東洋大学国際学部国際地域学科)が、日本独自の水管理システム、国や自治体、民間セクターの役割について説明しました。また、ヨギタ・マムセン氏(世界銀行水部局グローバル・プログラム・ユニット プラクティスマネージャー)とソヘイブ・アタール氏(世界銀行GPURLグローバル・プログラム・ユニット上級都市専門家)が、技術に関するプレゼンテーションを行い、都市の水政策・制度・規制と政府・自治体の役割の重要性について議論しました。
初日に得た知見は、人口動態と環境の変化が都市やインフラ、水にかける負担や水サービスへのアクセスにおける格差拡大についてのものでした。他にも次のような知見が挙げられます。
2日目と3日目は、サンユー・ルタロ氏(世界銀行上級水専門家)から、強靭性に関する計画および循環型経済の原則からの教訓について、また、ロバート・ビアーズ氏(Our Future Waters)から、気候変動に強い水需要管理の計画についてそれぞれ講演がありました。政府機関や水道事業に携わる参加者の間では、無収水管理への関心が非常に高く、ジョージ・バトラー氏(IFC水・衛生主席専門家)は、世界の水の40%以上がネットワークから失われているという問題に言及しました。最後に、アニ・ネイアー氏とキャメロン・マクファイル氏(ともにアイル・ユーティリティー社)が、ハイレベルなデジタル戦略の策定に関するインタラクティブなセッションを行いました。要点は以下の通りです。
持続可能な水利用は、持続可能な開発目標(SDGs)、特に安全で安価な飲料水、衛生への普遍的なアクセスを確保するSDGs#6を支える重要なサービスです。TDLCが主催する今回のようなTDDは、都市における持続可能な水サービスの提供という大きな課題に最前線で取り組む人々に役立っています。