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BRIEF 2025年2月7日

日本のリバブルな都市づくり:効果的な都市計画、官民連携、 ステークホルダーの参画

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左から東急の中山典顕氏、垣内正雄神戸市市長室国際部長、ジョン・カー・カウ世界銀行上級都市開発専門官、田中亙日建設計常務執行役員、アンへリカ・ヌニェス世界銀行都市・強靭性・土地グローバル局マネージャー、岡田康裕加古川市長、田中賢子JICAアメリカ合衆国事務所米国事務所長、ALMECの阿部朋子、クリス・パブロ世界銀行上級都市専門官兼TDLCチームリーダー。
 


~世界銀行URLフォーラムで加古川市・神戸市・民間セクター・JICAの実践を紹介~ 

日本の都市は、世界で最もリバブルな(住みやすい)都市として常に上位に位置付けられています。そのため、日本の都市は、質の高いインフラや生活水準のみならず、急速な都市化、環境問題、人口動態の変化への対応についても、世界の都市に広い知見とインスピレーションを与えることができます。

世界銀行東京開発ラーニングセンター(TDLC)は、2月3日、ワシントンDCで開催された世界銀行都市・強靭性・土地(URL)フォーラムにて、日本の都市がどのように持続可能で強靭性の高い都市環境を形成しているのかを探るセッションを開催しました。本セッションでは、加古川市長、神戸市国際部長および日本の民間セクター、国際協力機構(JICA)の代表者が登壇し、リバブルな都市づくりについての見解を発表しました。

世界銀行の今村英章日本代表理事は開会の挨拶を行い、持続可能な成長には、都市計画、官民連携(PPP)、地域社会の参加が不可欠であると述べました。また、日本の都市がどのように課題を克服し、スマートで防災力の高い都市へと発展してきたのかを紹介し、こうした知見を世界に広めていくことの重要性を強調しました。

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基調講演を行う今村英章世界銀行日本代表理事。

日本の都市の取り組み

加古川市岡田康裕市長は、「地域幸福度(Well-Being)指標」について説明し、この指標が「健康」「快適な公共空間」「コミュニティのつながり」「文化・芸術」を政策の優先課題として位置づけるうえで有用だったと述べました。また、加古川市が国土交通省や民間企業と連携し、河川敷の緑地を再生する取り組みについても紹介しました。このプロジェクトでは、河川敷をカフェやレジャー施設のある憩いの空間へと再生することで、市民が楽しめる魅力的なエリアにすることを目指しています。岡田市長は官民連携(PPP)を活用することで、市の財政負担を抑えつつ、持続可能なまちづくりにつながると語りました。

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加古川市の都市政策について発表する岡田康裕市長。

神戸市の垣内正雄国際部長は、同市の震災復興と持続可能な都市づくりについて紹介しました。彼は阪神・淡路大震災の後、神戸市が都市の再生と防災力の強化を最優先課題として様々な政策やプログラムを実施してきたと述べ、その一例として神戸市のウォーターフロント再開発プロジェクトでは、歩行者中心の都市設計を採用し、交通拠点の近くの文化・商業施設の統合を進めてきたと述べました。また、過度な都市密度を防ぎ、バランスのとれた都市開発を推進するために高層建築の規制に取り組むとともに、郊外の鉄道駅周辺の再活性化や農村部での持続可能な農業や都市・農村の連携に力を入れていると語りました。これらの取り組みを通じて、神戸市は強靭性が高く、持続可能で暮らしやすい都市の実現を目指しているとのことでした。

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神戸市の震災復興と持続可能な都市づくりを紹介する神戸市の垣内正雄市長室国際部長。

都市開発を支える官民連携、コミュニティの参加と双方向の学びの重要性

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官民連携、コミュニティ参加、知見共有についてパネリストが発表。

リバブルな都市の実現には、官民連携(PPP)が不可欠であり、日本の民間企業も重要な役割を果たしています。セッションには、民間企業および国際協力機構(JICA)の代表者が登壇し、それぞれの経験と知見を共有しました。

  • 日建設計の田中亙氏常務執行役員は、都市空間の創出の重要性を強調し、日本における土地区画整理事業を活用した再開発プロジェクトを紹介しました。具体例として、東京駅八重洲口や渋谷区の宮下公園を挙げ、特に宮下公園の再開発では官民連携(PPP)を活用し、都市公園の中に民間の商業施設を組み込む手法を採用したことを説明しました。
  • 東急の中山典顕都市開発本部主査は、歩行者に優しい高密度で安全な駅近複合型コミュニティ「Rail Integrated Communities(RIC)」の開発の重要性を強調しました。事例として、町田市との協働によるグランベリーパークを紹介し、官民連携による駅周辺の活性化モデルであると説明しました。
  • ALMECの阿部朋子海外事業部マネージャーは、日本の都市が発展途上国の都市の住みやすさ向上に貢献できる点について言及しました。特に、都市開発のマスタープラン策定の核となるビジョンの形成や、地方自治体による官民連携・市民参加の取り組みの事例を日本から紹介することが、途上国において有用な方法であると述べました。
  • JICAの田中賢子JICAアメリカ合衆国事務所所長は、JICAが日本の都市開発の知見を発展途上国の都市と共有する取り組みを紹介しました。その一例として、日本とタイの地方自治体をつなぐ「地域活性化プログラム」を挙げました。この取り組みでは、日タイ両国の都市が地域活性化の戦略について互いに学び、アイデアを交換する機会を提供しています。

本セッションを通じて、日本の官民連携モデルや都市開発の手法が、国内外の都市にどのように適用できるかについて活発な議論が行われました。セッション後の質疑応答では、都市間連携のインセンティブ、水害リスクへの対応、日本の都市開発手法の適用の可能性など、幅広いテーマが議論されました。

世界銀行のアンへリカ・ヌニェス世界銀行都市・強靭性・土地グローバル局マネージャーは、閉会の挨拶の中で、本フォーラムに参加した日本の登壇者に感謝の意を表しました。また、日本政府が世界銀行の都市開発、レジリエンス、土地に関する取り組みに継続的に支援を提供していることについても謝辞を述べました。