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スピーチ&筆記録2023年5月15日

長崎国際シンポジウム:基調講演(仮訳)「長崎で共に学び、ベストプラクティスの共有に向けて:コミュニティや世界で、強靭な保健システムを構築する」 アパルナ・ソマナサン(世界銀行・プラクティスマネージャー)

河野学長、
バングラデシュ保健大臣 ザヒド・マレック閣下、
カンボジア保険副大臣 ロー・ヴィースナキーリー閣下、
ご来賓の皆様、
ご列席の皆様、

本日は、長崎大学・世界銀行主催のシンポジウムで、世界銀行グループを代表して基調講演する機会を頂き光栄です。本シンポジウムの開催にあたり、河野学長を始めとする長崎大学の皆様に多大なご協力を賜り、厚くお礼を申し上げます。また、日本政府、長崎県、長崎市の皆様には、二日にわたるG7保健大臣会合に続く形で開催されることとなった本日のシンポジウムにご支援賜り、有難うございます。

昨日、G7保健大臣会合は、議長国を務める日本のリーダーシップの下、コミュニケを発表しました。日本は、UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)の重要性を訴え続けてきました。9月の国連総会におけるUHCハイレベル会合を目前に控え、G7保健大臣会合において、UHCに対するコミットメントが改めて表明されたことを嬉しく思います。

保健大臣会合コミュニケは、UHC達成に向け具体的成果を挙げるには、あらゆる政策に保健の観点を取り込み、各国固有の事情やキャパシティに合わせた取組を行うことが重要であると強調しているほか、各国の具体的なニーズ、持てる資源、科学的データを踏まえることが重要とも指摘しています。こうした指摘は、保健システム強化に向けた世界銀行グループの取組(過去20年にわたるフラッグシップ・コースやジョイント・ラーニング・ネットワーク)など)と軌を一にするものであり、勇気づけられるものがあります。

世界銀行グループは、保健システム支援分野における世界最大規模の援助機関です。同分野で世界銀行が支援するプロジェクトは200件以上、プロジェクト所在国は100以上、プロジェクトの規模は総計340億ドル(約5兆円)に達していますが、更なる取組が必要です。保健システムへの投資を継続し、UHCを前に進めていく必要があります。パンデミックの世界経済への影響、今も続く紛争、物価上昇、異常気象などから、多くの人々が、健康状態の悪化、良質で低廉な医療サービスにアクセス出来ない状況が続いています。我々は、コロナ禍を通じ、次なるパンデミックなどの保健危機を予防し、備えるには、保健システムの強化を図ることが最善の方法であると学びました。

世界銀行グループは、保健システム強化に対する支援に加え、様々なパートナーと手を組んで、保健システムに関する知識の向上・共有に取り組んでいます。長崎大学との共催による今回のシンポジウムや、これから三日にわたって行われるフラッグシップ・コースは、知識を形成しパートナーシップを育む、世界銀行の取組を代表するものです。

フラッグシップ・コース創設時、世界銀行では、このコースが世界銀行の保健分野における優先事項になるとは考えていませんでした。当時、世界銀行の保健チームは、学会の専門家に働きかけ、保健システムのパフォーマンスと改革に関する世界最高のエビデンスを活用した論理的なフレームワークの開発に取り組んだ訳です。

フラッグシップ・コース開発当時、私はハーバード大学の博士課程に在籍しており、教授陣や世界銀行スタッフの間で、フラッグシップ・コースのフレームワークについて、激しい議論があったことをよく覚えています。私は、今でも、当時、マイケル・ライシュ教授との面会時間待ちの間、研究室の中で、先生とフラッグシップ・コース開発メンバーの間で、様々な議論が交わされていたのを耳にしたことを覚えています。先生が議論を終えるのを待っていたところ、次の授業には参加できなくなったように記憶しています。 世界銀行で保健分野に携わって17年が過ぎ、私は、フラッグシープ・コースのフレームワークの価値が理解できるようになり、今日の課題に照らしても、適切な内容であり続けていると言うことが出来ます。

長年にわたり、フラッグシップ・コースは、世界中の保健分野のリーダーシップ強化に貢献してきました。現在も、各国政府や開発パートナーから高い評価を得ています。この場を借りて、日本政府による継続的なご支援に感謝するとともに、今週、ワークショップを共催する長崎大学を私共のパートナーとして歓迎したいと思います。

フラッグシップ・コースの目的は、保健政策立案者の技術的能力を強化し、戦略的かつ体系的なアプローチを促進することで、UHCに向けた進展を促す保健システム改革に取り組むことにあります。フラッグシップ・コースでは、実際の事例をもとに、保健システム改革を体系的かつ実践的に考える方法を参加者に教えています。

フラッグシップ・コースの特長は、各国が直面する現実、すなわち文化的、政治的、倫理的な背景や、保健システム改革を進める上での能力、制約を考慮していることです。このコースが魔法の杖を提供することはありません。そもそも、そうした解決策は存在しません。しかし、フラッグシップ・コースは、自分たちが直面する課題を批判的に検討するための枠組みを提供することで、自国の文脈を踏まえつつ、世界のベストプラクティスを適用できるようにすることを狙いとしています。

過去30年にわたるフラッグシップ・コースの成果は、数千人の卒業生を生み出し、保健システム改革の実行・保健システムの機能強化を可能としました。本日、長崎の地で、太平洋の島国9か国を含む14か国から50名以上の政策立案者、日本からも20名の参加者を得て、フラッグシップ・ミニコースを開催できることを誇りに思います。

長崎で実施するミニコースでは、政策立案を進めるに当たり、保健システム全体を視野に入れるアプローチを学んだり、ヘルス・ファイナンスの基礎、国内資源の動員について議論し、保健システムをより強靭なものにする方法について経験を共有します。また、参加者相互が協力し、それぞれがお互いに学ぶ機会も設けたいと考えています。

世界銀行は、ジョイント・ラーニング・ネットワーク(JLN: ユニバーサル・ヘルス・カバレッジのための共同学習ネットワーク)の強力なパートナーでもあります。このグローバル・ネットワークは、参加各国による主導の下、参加各国が内容を決めてきたイニシアティブで、過去13年にわたり、アジア・アフリカの低・中所得国を中心とする36か国の政策立案者・実務者を集め、保健システムのパフォーマンスを向上させてきました。このネットワークは、世界数十か国で実際の改革プロセスを実施しながら、学んだ教訓を共有する貴重なプラットフォームです。

ある国の成功をそのまま別の国に移植することはできませんが、この共同学習プロセスは、私たちが過去20年間に蓄積してきた最高の資産の一つです。SDGs(持続可能な開発目標)のゴールである2030年度が近づくにつれ、その重要性はさらに増しています。

JLNは、長年にわたりGFF(女性・子ども・青少年のための世界金融ファシリティ)と連携し、アフリカ・アジアのメンバーが、保健分野で必要な国内資源動員に関する共通課題について議論を重ねています。

フラッグシップ・コース、JLNの2つの取組は、世界銀行が提供する主要な保健システム強化学習プログラムです。フラッグシップ・コースは基礎的な教育、政策対話、能力開発に重点を置く一方、JLNは取り込んだ知識を現実の課題に適用するために、各国の担当者同士の学びあいと現実世界における問題の解決に注力しています。

本日、G7保健大臣会合に続く形で、保健システムに関する重要な学習拠点である長崎大学で本シンポジウムを開催できることは、ここに集まる全員が、グローバルヘルスにコミットしていることを示すものです。日本政府からの継続的な政治的・財政的支援なしには、グローバルヘルス分野での成果は達成し得ませんでした。G7の保健大臣たちは、コミュニケから明らかなように、UHC達成に向け、保健システム強化を図ることへのコミットメントを改めて示しました。世界銀行グループは、グローバルヘルス分野における日本のリーダーシップに全面的に協力し、長崎大学との新たなパートナーシップを育んでいくことを楽しみにしています。

こうした基調講演で、世界銀行の同僚に感謝を述べるのは一般的ではないかもしれませんが、世界銀行東京事務所の米山代表とそのスタッフに特別な感謝とお礼を述べずにはいられません。舞台裏では、米山氏と彼のチームがこのイベントの準備に尽力してくれました。

世界銀行グループは、保健システムの強化、UHCの達成、パンデミックや気候変動などのグローバルヘルスの諸課題において、各国への支援に取り組んでまいります。長崎大学やJLNのような尊敬すべき機関とのパートナーシップを通じて、世界中の健康状態の改善につながるような知識交換とイノベーションを促進していきます。

本シンポジウムの開催とフラッグシップ・コースの開始に当たり、全世界の人々、特に最も弱い立場の人々のニーズに応える、強靭的で公平な、且つ持続可能な保健システム構築への決意を新たにしたいと考えます。2030年までに保健関連のSDGsを達成するため、私たちは一緒に、目に見える進歩を遂げることができると考えています。

ご清聴有難うございました。実り多く、また、様々な着想を得られるようなシンポジウムとなることを祈念いたします。

 

関連項目

長崎大学・世界銀行グループ主催 G7長崎保健大臣会合開催記念 国際シンポジウム~ 長崎から世界へ:国際保健課題の解決に向けて~

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