貯蓄口座の成人利用者数、伸びは過去10年で最大の伸び
ワシントン、2025年7月16日 — 低・中所得国で銀行など金融機関に口座をもつ成人の数が過去最多となり、金融機関での貯蓄急増につながっている、と世界銀行の報告書「グローバル・フィンデックス・データベース2025」が指摘している。金融包摂のこの気運は、新たな経済機会を創出している。貯蓄急増には携帯電話技術が大きな役割を果たしており、途上国の成人で携帯電話口座で貯蓄する人の割合は、2021年から5%ポイント増の10%にのぼる。
2024年、途上国で金融機関の口座に貯蓄した人は成人の40%となり、2021年から16%ポイント増加し、この10年余りで最大の伸びとなった。銀行などの金融機関での個人貯蓄の増加は、投資、イノベーション、経済成長のために使える資金を増やすため、当該国の金融システムにとって追い風となる。サブサハラ・アフリカ地域では金融機関に貯蓄する成人の比率が12%ポイント増加し、35%となった。
「金融包摂は人々の生活と経済全体を変革する可能性がある」とアジェイ・バンガ世界銀行グループ総裁は指摘する。「デジタル金融にはこの可能性を現実にする力があるが、幾つかの条件が必要となる。世界銀行グループはそのすべてに取り組んでいる。まず、人々が新たに、または改善されたデジタルIDを取得できるよう各国を支援している。また、困窮する人々に直接資金を届けるデジタル現金給付システムを備えた社会的保護プログラムの構築を進めている。さらに、人々と企業がイノベーションと雇用創出に必要な資金を確保できるように、決済システムの最新化と規制障壁の撤廃を支援している」
グローバル・フィンデックスの支援者の1人であるゲイツ財団のビル・ゲイツ会長は「女性とこれまで取り残されていた人を含め、かつてないほど多くの人々が、自らの将来に投資し、経済的強靭性を構築するための金融ツールを手にしている。これは実に大きな前進であり、包摂的金融システム、デジタル公共インフラ、デジタル接続に投資すべきであることは明白である。すべての人に機会を開く道であることはすでに証明済みである」
グローバル・フィンデックスは決済から貯蓄、融資に至る世界の金融サービスへのアクセスに関する最も信頼できるデータであり、金融包摂は大きな節目を迎えたと強調している。世界で金融口座をもつ成人が2011年の50%から80%近くへと増加したのである。とはいえ、なお13億人の成人が金融サービスへのアクセスをもっていない。携帯電話はこの状況を解消するための助けとなり得る。金融口座をもたない約9億人が携帯電話を所有し、うち5億3,000万人はスマートフォンを持っているからだ。
インドのUPIやブラジルのPIXなど即時送金を可能にするシステムに投資することで、金融活用拡大の後押しとなる可能性がある。消費者保護の枠組みの強化や、携帯電話や口座の安全性向上も同様の効果が期待できる。
報告書はまた、デジタル金融サービスが口座開設における男女格差の縮小にも貢献するとしている。世界全体で口座開設率は、女性が77%であるのに対し、男性は81%となっている。低・中所得国での女性の開設率は、2011年の37%から2024年は73%へほぼ倍増した。
報告書は初めて、個人の携帯電話所有状況とインターネット利用状況のデータを取り上げている。「グローバル・フィンデックス・デジタル・コネクティビティ・トラッカー2025」によると、世界全体で成人の86%が携帯電話を持ち、うちスマートフォン所有者は68%である。ただし、デジタル送金のための携帯電話利用の増加には新たなリスクが伴う。低・中所得国で携帯電話を所有する40億人の成人のうち、携帯電話保護のためにパスワードを設定している人はわずか半数程度にとどまっている。
途上国全体で、携帯電話やカードを使って取引の決済を行う成人も増えている。低・中所得国で実店舗またはオンライン取引でデジタル決済を行った成人は、2021年の35%から2024年には42%に増えた。政府からの給付を受け取る成人の4分の3、そして賃金労働者の半数が、受取りに金融機関口座を利用しており、これが窃盗を減らし、資金が対象者本人に確実に届くことに役立っている。
地域別ハイライト:
東アジア・太平洋地域:デジタル接続と金融サービス活用は世界トップで、成人の86%がスマートフォンを所有し、83%が金融口座を開設。
ヨーロッパ・中央アジア地域:インターネット使用とソーシャルメディア活用が世界の途上国でトップ。携帯電話所有率も94%。
ラテンアメリカ・カリブ海地域:成人の約70%が金融口座を開設、うち半数以上がカードまたは携帯電話によるデジタル決済を利用。
中東・北アフリカ地域:口座開設率は2021年の45%から53%に上昇。金融機関口座で貯蓄する人の割合は2021年の11%から2024年は17%に上昇。
南アジア地域:成人の80%近くが口座を開設しているが、この高い比率は、男女とも90%が口座を開設し、65%が携帯電話をもつインドによるもの。
サブサハラ・アフリカ地域:域内で口座をもつ成人の割合は2021年の49%から58%に上昇。携帯電話口座の利用率は世界最高水準。