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プレスリリース2023年4月4日

南アジア地域、財政状況悪化の中、成長が鈍化

ワシントン、2023年4月4日—南アジア地域では、財政状況悪化の中、成長見通しに陰りが生じ、財政政策の余地が乏しく準備金が枯渇しつつあるため、大半の国に大きな下振れリスクがある、と世界銀行は半期ごとに発行する「南アジア経済報告(SAEF):機会の拡大:包摂的成長を目指して」で指摘している。報告書は、コロナ危機の際に導入された措置による市場の歪みを解消し、同地域の潜在性を制約し消耗させている社会経済格差に対応する必要性を強調している。

本日発表された報告書最新版は、2023年の地域平均成長率を2022年10月の予測からわずかに下方修正して5.6%と予測している。2021年にはコロナ後の当面の回復として8.2%の成長率を記録したが、2024年には5.9%と2023年に続き緩やかな成長になるとみられる。

南アジア地域の見通しは、世界経済における望ましい展開とそうでない展開の両方が反映されている。一次産品価格の下落、サービス部門の力強い回復、バリューチェーンの混乱減少が南アジア回復の追い風となっている一方で、金利の上昇や金融市場の不確実性が域内各国への下方圧力となっている。

「南アジア地域諸国はこの3年間、重複する極端なショックにより大きな打撃を受け、まだ回復には至っていない。各国は、エネルギー価格の下落と貿易収支の改善という機会を捉え、ショックへの対策として実施された燃料補助金や輸入制限など場当たり的な措置を撤廃し、強靱性強化と中期的な成長促進に必要な改革に集中すべきである。」と、世界銀行のマーティン・レイザー南アジア地域担当副総裁は述べた。

今回、ブータンを除く域内すべての国について下方修正が行われた。南アジア最大の経済大国であるインドでは、高い借入コストと所得の伸び悩みが消費を抑え、2023/24年度の成長率は6.3%に低下するとみられる。パキスタンは、昨年の壊滅的な洪水の影響になおも苦しんでいる上、サプライチェーンの混乱、投資家心理の悪化、借入コストや投入コストの上昇に直面しており、国際通貨基金(IMF)プログラムで合意に至ったとしても、今年の成長率は0.4%にまで低下するとみられる。スリランカでは、債務がもたらすマクロ経済危機への長期的影響を反映して、今年のGDPは4.3%縮小すると予想され、先月のIMFプログラム承認を受け、今後の成長見通しは債務再編と構造改革が大きく鍵を握る。モルディブネパールでは、観光と移住の再開が成長を支えてきた。しかし、膨大な対外債務と世界的な金融環境の悪化は、モルディブの財政・対外収支にリスクとなり、ネパールでは外的ショック、国内の輸入規制、金融引締めが成長を妨げるとみられる。

南アジアのインフレ率は、今年8.9%まで低下し、2024年には7%を下回る見込みである。しかし、通貨安と国内価格調整の遅れが、インフレ率低下が予想通り進まない要因となっている。世界全体と国内で共に食料価格が高騰しているため、食料が所得に占める割合の高い域内貧困層の食料不安を悪化させている。

南アジア地域は、回復から持続的成長へ向かうために、包括的な経済開発を進める必要がある。この地域の機会格差は、世界でも特に深刻である。域内の格差全体の40〜60%は、出生地、家庭環境、カースト、民族、ジェンダーなど、個人ではなすすべのない状況によるものである。また、世代間の階層移動も世界で最も低い部類に属する。報告書に掲載されたデータによると、両親の教育レベルが低い人のうち、上位25%の教育レベルに達する割合は9%未満にとどまる。こうした格差は、雇用へのアクセス、収入、消費、福祉の格差につながるため、再分配政策が求められる。

「南アジアにおける著しい社会経済格差は、不公平であると共に非効率である。優秀な人材が社会に貢献する機会を奪い、人的資本への投資意欲を減退させ、長期的な経済成長を阻害している。こうした構造的な問題を解消することが、この地域が潜在性を最大限発揮するために不可欠である。」と、世界銀行のハンス・ティマー南アジア地域担当チーフエコノミストは述べた。

具体例として報告書は、初等教育の質の継続的向上と中等・高等教育へのアクセス拡大、「機会の乏しい」グループを対象とした優遇措置政策の評価と強化に加え、恵まれない人々の雇用機会の大半を占める中小企業のビジネス環境改善に向けた政策を提言している。さらに、都市部では社会階層間の移動の機会が多い傾向にあるため、労働力移動の障壁を削減すれば、格差是正に大きな効果が期待できる。

世界銀行は、バングラデシュ、インド、モルディブ、ネパール、パキスタン、スリランカの開発に関する報告書最新版も本日発表した。

バングラデシュ、インド、モルディブ、ネパール、パキスタン、スリランカの開発に関する報告書最新版

出所:World Bank Macro Poverty Outlook、職員による算出t

注:=(e)=推定値、(f)=予測値。GDPは2015年の価格と市場為替レートで測定。パキスタン(*)は要素費用で表示。アフガニスタンは2022年8月以降、国民経済計算統計を作成していないため、データは表から除外。暦年の地域集計を推計するため、四半期GDPデータのないバングラデシュ、ブータン、ネパール、パキスタンについては、2015年恒常ドルでの連続する2会計年度の平均をとり、会計年度データを暦年データに変換。予測年の暦年南アジアGDP成長率の算出には、新しい方法を採用。2022年10月の2023年および2024年GDP成長率予測は、この新しい方法を用いて更新。

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ワシントン:
Diana Chung
(202) 867-8079
東京:
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