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プレスリリース2022年11月30日

世界的な逆風の中、2022年の本国送金は5%拡大

ワシントン、2022年11月30日 — 2022年の低・中所得国(LMICs)への本国送金は、世界的な逆風にもかかわらず、5%増の6,260億ドルに達するとみられるが、伸び幅は2021年の10.2%増を大きく下回る、と世界銀行の報告書「移住と開発」の最新版は分析する。

送金は、LMICsの世帯収入の重要な財源であり、貧困削減と栄養状態改善に加え、不利な立場にある世帯での出生時体重の増加や就学率向上とも結びついている。調査によると、送金は、家屋の修繕などを通じた強靭性強化や、災害後の損害対応などに役立てられている。

2022年の途上国向けの送金フローには、いくつかの要因がある。コロナ危機収束に伴う受入国の経済活動再開が、出稼ぎ労働者の雇用の追い風となり、本国にいる家族支援の継続に貢献した。一方で、物価高騰は出稼ぎ労働者の実質所得に悪影響を与えている。さらに、ルーブル高により、ロシアや中央アジアからの送金のドル換算額を高めている。反対にヨーロッパでは、ユーロ安により、北アフリカなどへの送金のドル換算額が下がっている。外貨準備高が乏しく複数の為替レートのある国の場合、より有利な為替レートでの経路に流れるため、正規ルートでの送金フローは減少となった。

「出稼ぎ労働者は、受入国の労働市場逼迫の緩和に貢献しつつ、送金を通じて本国の家族を支えている。包摂的な社会的保護政策は、労働者がコロナ危機により不安定化した所得と雇用を乗り切るのを支えてきた。そうした政策は、本国送金を通じて世界的なインパクトをもたらしており、今後も継続する必要がある。」と、世界銀行のミハウ・ルトコフスキ社会的保護・雇用グローバルプラクティスのグローバル・ダイレクターは述べた。

地域別に見ると、重複する危機で最も深刻な状態にあるのがアフリカで、過酷な干ばつ、世界的なエネルギー・食料価格の高騰に苦しんでいる。サブサハラ・アフリカ地域への送金の伸び幅は、昨年の16.4%から今年は5.2%にとどまったとみられる。ヨーロッパ・中央アジア地域向けの送金は、通貨高に加え、原油価格高騰とロシアでの出稼ぎ労働者の需要拡大がプラスに働き、推定10.3%増となった。ウクライナへの送金は、当初の予測を下回る推定2%にとどまった。これは、ウクライナ国民向けの支援が彼らの受入国に送られたことと、現金の携行が増えた可能性があることによる。その他の地域への送金フローは、ラテンアメリカ・カリブ海地域向けが9.3%、南アジア地域向けが3.5%、中東・北アフリカ地域向けが2.5%、東アジア・太平洋地域向けが0.7%、それぞれ増えたとみられる。2022年、インドは一国として初めて年間送金額1,000億ドル以上を受け取る勢いである。

今回の報告書最新版は、気候による移住について特集を組み、気候変動の圧力が高まると、国内の出稼ぎ労働が増え生計を脅かすことになると分析している。特に最貧困層は、適応や移住に必要な資源を持たないことが多いため、最も影響を受けやすい。調査の結果、例えば、災害からの避難をはじめ被災家庭への支援を通じ、移住が気候変動の影響への対応に一定の役割を果たす可能性があると指摘されている。気候関連の移住という難題に取り組むには、国際的な法律基準や制度的枠組みの変更が必要かもしれない。特に、小島嶼国にみられる国境を超えた移動においてはその傾向が強い。

「人は昔から、生き延びるために移住することで、厳しい気象状態に対応してきた。被災地域からの立ち退きと受入れ先コミュニティへの人々の流入を管理するには、適応戦略の一環として安全な正規移住の計画立案が求められるようになるだろう。」と、本報告書の主任執筆者で「移民と開発に関するグローバル・ナレッジ・パートナーシップ(KNOMAD)」の責任者を務めるディリップ・ラーサは述べた。「国や地域の開発戦略には、気候変動による移住の観点を取り入れる必要がある。」

同報告書はまた、世界送金コスト・データベースによると、2022年第2四半期にLMICs向けに国外から200ドルを送金する際のコストは送金額の平均6%と高いままだったとしている。送金コストが最も低いのは携帯電話事業者を通じた送金の3.5%だが、オンライン送金は取引額全体の1%にも満たない。デジタル技術の発展により、これまでより格段に速く安い送金サービスが登場している。ただし、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策を遵守する負担が、新たなサービス事業者による取扱銀行へのアクセスを引き続き阻んでいる。こうした規制はまた、出稼ぎ労働者によるデジタル送金事業者へのアクセスも制限している。

 

地域別に見た送金の傾向

東アジア・太平洋地域:2022年の送金額はこれまで2年間の減少から0.7%の増加に転じ、1,340億ドルになるとみられる。2022年は、高所得国のホスピタリティ産業と保健産業における人材不足に加え、湾岸協力理事会(GCC)加盟国にプラスとなる原油価格高騰が、労働者需要を高め、送金の伸びにつながった。ただし、中国への送金は、コロナ関連政策により労働者の海外出稼ぎが制限されたことで、4%近く減少したとみられる。国内総生産(GDP)比で見た受取額が大きかったのは、トンガの50%とサモアの34%だった。2023年の送金は、出稼ぎ先の国々の景気後退を受け1%減少するとみられる。同地域に200ドルを送金するためのコストは、2022年第2四半期に、前年同期の5.8%から平均6.2%に上昇した。

ヨーロッパ・中央アジア地域:2022年の同地域への送金フローは、10.3%増え720億ドルに達したとみられる。原油価格高騰と出稼ぎ労働者への需要拡大が、ロシアから中央アジア諸国への送金額を伸ばした。ルーブルがドルに対して上昇したことで、ロシアから中央アジアへの送金のドル換算額が増加した。GDP比で見た受取額は、キルギス共和国とタジキスタンが30%を上回った。2023年の同地域への送金額は、主要な送金元の国の見通し軟化により、さらに小幅の4.2%増になるとみられる。同地域に200ドルを送金するためのコストは、2022年第2四半期は平均6.4%にわずかに上昇した(ロシアからの送金区間を除いたデータ)。

ラテンアメリカ・カリブ海地域:2022年の同地域への送金額は、9.3%増えて1,420億ドルに達したとみられる。2022年1-9月期のデータによると、ニカラグアが45%、グアテマラが20%、メキシコが15%、コロンビアが9%、それぞれ受取額を増やした。米国においてラテンアメリカからの出稼ぎ労働者の雇用がより順調であることが送金額増加に貢献した。メキシコと中央アメリカへの送金額増加には、出稼ぎ先に移動中の労働者に対する本国からの送金も貢献した。エルサルバドル、ホンジュラス、ジャマイカ、ハイチでは送金額がGDPの20%を超えている。2023年の送金額は、米国、イタリア、スペインの景気悪化見通しのため、4.7%の増加に減速する可能性が高い。2022年第2四半期に同地域に200ドルを送金するための平均コストは6%で、前年同期の5.6%を上回った。

中東・北アフリカ地域:域内途上国への送金は、前年の10.5%増から2022年は2.5%増に減速し630億ドルになったとみられる。マグレブ地域での干ばつや、小麦輸入価格の高騰など厳しい状況の中で本国での送金需要が高まったにもかかわらず送金額の増加が鈍化したのは、ひとつにはユーロ圏での実質賃金低下と結びついている。GDPに占める割合で見た受取額は、レバノンが38%、ヨルダン川西岸地区・ガザ地区が19%で特に大きかった。2023年の同地域向け送金額は2%増が見込まれる。同地域に200ドルを送金するためのコストは、2022年第2四半期は平均6.3%だった。

南アジア地域:2022年の同地域への送金は、3.5%増の1,630億ドルになったとみられるが、インド(今年の受取額は1,000億ドルに達する見通し)の12%増やネパールの4%増からその他の域内諸国全般の10%減まで、国によって予想値は大きく異なる。送金額減少は、パンデミックの間に送金を呼び込むため一部の国の政府が導入した特別インセンティブの終了や、より有利な為替レートを適用する非正規な経路が好まれたことを反映している。インドへの送金額は、米国をはじめとするOECD諸国での賃上げや労働市場の活況により増加した。出稼ぎ先である湾岸協力理事会(GCC)加盟国では、政府が直接的な支援策により低インフレ率を維持したことが、出稼ぎ労働者の送金継続を可能にした。同地域に200ドルを送金するためのコストは、2022年第2四半期に平均4.1%と、前年同期の4.3%を下回った。

サブサハラ・アフリカ地域:世界的な危機の影響に最もさらされた同地域への送金は、前年の16.4%増(主にナイジェリアとケニアへの高水準の送金による)から2022年は5.2%増の530億ドルになったとみられる。2023年の送金は、世界全体と送金元となる域内諸国において厳しい環境が長引く中、3.9%増に減速するとみられる。GDP比で見た受取額が大きい国としては、ガンビア(28%)、レソト(21%)、コモロ(20%)が挙げられる。2022年第2四半期に同地域に200ドルを送金するためのコストは、前年同期の8.7%を下回る平均7.8%だった。域内で送金コストが最も低い送金区間のコストは平均3.4%だったが、最も高い区間では25.2%である。

「移住と開発」報告書は、移住関連の持続可能な開発目標(SDG)の内、GDPに占める送金額の拡大、送金コストの減少、採用コストの減少の各指標について推移を分析している。

プレスリリース番号: 2023/036/SPJ

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ワシントン:
Rebecca Ong
東京:
開裕香子
+81 (3) 3597 6650

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