世界銀行は2024年10月13日、新報告書「低所得国における財政の脆弱性:進化・要因・政策」(Fiscal Vulnerabilities in Low-income Countries: Evolutions, Drivers and Policies)を発表しました。
世界の最貧国26カ国では全人口の約40%が1日2.15ドル未満で暮らしています。同報告書では、これらの国々では現在、2006年以降で最も債務が深刻化し、自然災害やその他のショックに対してますます脆弱になっていると指摘しています。他方で、国民総生産(GDP)に占める国際援助の割合は20年ぶりの低水準にまで減少しており、多くの国々が厳しい条件での資金調達を余儀なくされています。
同報告書は、1人当たり年間所得が年間1,145ドル未満の最貧国における慢性な財政の脆弱性の原因を初めて体系的に評価しています。それによると、世界の他の地域はおおむね回復しているにもかかわらず、最貧国は現在、新型コロナウイルス感染症拡大前よりも平均して悪化しています。政府債務は現在、平均してGDPの72%に達しており、18年ぶりの高水準に達しています。これらの国々のほぼ半数(2015年の2倍)が債務危機に陥っているか、債務危機に陥るリスクが高く、低リスクの国はありません。
一方、低所得国の低コスト融資を呼び込む能力はほぼ枯渇しており、GDPに占める政府開発援助の純額は、データが入手可能な最新の2022年には21年ぶりの低水準である7%に低下しました。このため、こうした国々にとっては、世界銀行グループの国際開発協会(IDA)が国外からの低コスト融資の唯一の最大の供給源でした。 IDA は、世界で最も脆弱な77 か国にグラントとほぼ無利子の融資を提供しており、最貧国 26 か国にとっては極めて重要です。2022 年には、IDAによる資金は、これらの低所得国が多国間機関から受け入れる開発援助全体のほぼ半分を占めました。
今回のモーニングセミナー(第204回)では、同報告書を執筆したジョセフ・マウェジェ世界銀行開発経済総局見(DEC)見通しグループ エコノミストが、同報告書の主なポイントを日本の皆様に向けてオンラインでご紹介しました。
スピーカー
ジョセフ・マウェジェ
世界銀行 開発経済総局 見通しグループ エコノミスト
現職以前は、マクロ経済・貿易・投資グローバルプラクティスで東部・南部アフリカ担当を担当。それ以前は、ウガンダのカンパラで、経済政策研究所、民間セクター財団で勤務。
発表資料
Fiscal Vulnerabilities in Low-income Countries: Evolutions, Drivers and Policies(英語、PDF)