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第15回防災セミナー「災害に強い学校づくり:学校施設耐震化の大規模な取り組み」
第15回防災セミナー「災害に強い学校づくり:学校施設耐震化の大規模な取り組み」
2016年11月2日東京


防災セミナー・シリーズ:世界銀行東京事務所、世界銀行東京防災ハブ 共催

世界銀行東京防災ハブは、日本の防災に関する知見を世界で共有するためのプログラム「知見共有プログラム」を実施しており、この中で災害に強い学校づくり、特に、公立学校施設の耐震化に関する経験および途上国への教訓をナレッジ・ノートとしてまとめ、その完成を記念してセミナーを開催しました。

まず世界銀行の防災専門官が災害に強い学校づくりを進める上で、途上国が直面する課題と世界銀行による取り組み、さらに日本の経験から学ぶべき教訓について発表しました。続いて、文部科学省の防災推進室 室長補佐より、日本における公立学校耐震化の主な取り組みの内容について紹介いただきました。最後に、トルコ共和国教育省次官補より学校施設の耐震化に関する国家レベルの取り組みについて発表いただきました。

 

世界銀行の取り組みと課題

塚越保祐 世界銀行グループ駐日特別代表は、開会挨拶の中で、自然災害により、教育が中断されると共に、学校の復旧に多大なコストが掛かる事態を引き起こした事例を挙げ、教育現場の保全と教育機会の保護の重要性を述べました。また、世界銀行による試算によると、学校の耐震改修により、大災害が発生した場合の平均的な現状回復コストが45分の1に、また、予想最大損失も6分の1に減少すると述べました。

ヴィカ・ボガーツ 世界銀行社会・都市・農村開発・強靭性グローバルプラクティス防災専門官は、日本-世界銀行防災共同プログラムが支援するペルーの事例を取り上げ、限られた予算を踏まえた投資対象の優先順位付けが重要であり、また段階的アプローチなど、各国の状況に応じた政策づくりが必要であると述べました。こうした課題に応えるため、技術支援以外の取り組みとして、世界銀行のプロジェクト担当者や途上国政府担当者を対象にガイダンス・ノートやナレッジ・ノートを作成する取り組みを紹介しました。

この中で、日本の公立学校耐震化の経験を取りまとめたナレッジ・ノートの内容から、政策実施を担う地方自治体に対する国の積極的な支援と働きかけが中核にあったこと、その中でも、特に、次の3点が途上国にとって重要と考えられると述べました。

  1. 投資対象の優先順位づけに関する考え方
  2. 技術面および予算面での一体となった支援 (資金支援スキームやガイドラインの整備など)
  3. 進捗状況の一般への公開

 

日本の経験から学ぶ

木村哲治 文部科学省大臣官房文教施設企画部施設企画課防災推進室室長補佐からは、2002年に40%台であった公立学校の耐震化率を2016年春までに、ほぼ100%まで引き上げた成果と、耐震化の実施を担った地方自治体の動機づけや負担軽減のための取り組みを紹介いただきました。その上で、阪神淡路大震災や東日本大震災などの災害被害を踏まえた継続的な取り組みの見直しにより、学校施設の構造躯体の耐震化から、非構造部材対策、避難所としての機能拡充、多様な災害種への対応などに発展していったことが説明されました。

 

トルコにおける学校施設の耐震化

世界銀行は途上国における災害に強い学校づくりを支援していますが、直面している課題は各国で異なります。過去10年にわたり、建物の耐震化を進めてきたトルコでは、学校など、政府の建物を優先に成果を挙げてきました。ムスタファ・チョラコール トルコ共和国教育省次官補は、これまで大都市を中心に進めてきた取り組みを踏まえ、特に子供の安全と教育の機会を確保するため、学校施設の耐震化を全国規模で進める計画を説明しました。特に、全寮制の学校など、子どもの生活の場としての機能を持つ学校を優先的に耐震化する方針を述べました。また、限られた予算の中での取り組みとして、国際金融機関との協力の他、民間資金や、都市部から郊外への移転による土地売却益の活用など、独自の解決策が紹介されました。

トルコからは、世界銀行が協力したプロジェクト「イスタンブール地震リスク軽減・地震事前準備プロジェクト (Istanbul seismic risk mitigation and earthquake preparedness project: ISMEP)」のプロジェクト・ディレクターにも議論に参加していただき、都市レベルの取り組みから国家レベルへの取り組みに発展させていく上で、活用できる技術的知見の蓄積やプロジェクト管理体制について述べられました。また政府の継続的なコミットメントが機動力となっているとの説明がありました。

セミナー当日は、政府、民間セクター、学術・研究機関、NGO等から多くの方々にご参加いただき、日本の公立学校耐震化の経験と開発途上国への教訓について、質疑応答が行われました。これらの議論は知見共有プログラムの今後の活動に反映される予定です。


自然災害は、しばしば学校施設を損傷・破壊し、教育の機会を脅かすとともに子どもたちの生活を危険にさらしています。2008年の中国・四川大地震では、6,898校が崩壊し、2万人近い子どもたちが犠牲となりました。こうした被害の軽減を目的とし、防災グローバル・ファシリティ (GFDRR) では、「災害に強い学校づくりのためのグローバル・プログラム (GPSS)」を通じ、災害に強い学校づくりを支援しています。本プログラムでは、災害による学校施設への被害を軽減し、教育への負の影響を最小限に抑える取り組みを推進しています。

世界銀行東京防災ハブは、文部科学省の協力を得て、日本における公立小中学校施設の耐震化に関する経験をナレッジ・ノートとして取りまとめました。対象となった日本の公立小中学校施設の耐震化事業は、2002年時点で50%以下だった耐震化率を、2016年4月時点でほぼ100%に達成しました。ナレッジ・ノートでは、短期間でこのような飛躍的成果を挙げた日本の取り組みに注目し、革新的な資金調達スキーム、政策、技術的な解決策を紹介するとともに、これらを踏まえた教訓を取りまとめました。本ノートは、セミナー当日に発表され、同様の課題に取り組む途上国への提言として役立てられます。

 

プログラム

開会挨拶

塚越 保祐
世界銀行グループ 駐日特別代表

講演

ヴィカ・ボガーツ
世界銀行 社会・都市・農村開発・強靭性グローバルプラクティス 防災専門官
「災害に強い学校づくりのためのグローバル・プログラム」PDF (英語)

木村 哲治
文部科学省 大臣官房 文教施設企画部 施設企画課 防災推進室 室長補佐
「Disaster Management Measures to School Facilities」PDF (英語)

ムスタファ・チョラコール
トルコ共和国 教育省 次官補

モデレーター

金田 恵子
世界銀行 防災グローバル・ファシリティ 東京防災ハブ 防災専門官

(敬称略)

❖ このセミナーは録画されます。

スピーカー紹介

セミナー報告

 

塚越 保祐
世界銀行グループ 駐日特別代表

2013年8月現職に就任。日本の政府、CSO、企業、研究機関等と世界銀行との協力関係強化を使命とする。就任以来、世界銀行東京事務所内に設置された東京防災ハブの設立にも参画。現職就任前、2008年から2011年には米州開発銀行理事として同行の融資案件の審議と政策決定に関与。1988年から1991年にはアフリカ開発銀行理事としてコートジボワールに駐在。また、1994年から1998年には国際金融情報センター・ワシントン事務所長として米国の政策決定過程等につき調査。1980年4月大蔵省 (現:財務省) に入省。

 

ヴィカ・ボガーツ
世界銀行 社会・都市・農村開発・強靭性グローバルプラクティス 防災専門官

 

木村 哲治
文部科学省 大臣官房 文教施設企画部 施設企画課 防災推進室 室長補佐

2015年12月より現職。学校施設の耐震化や津波対策の推進、避難所としての機能確保など、防災機能の強化を担当。地震や津波だけでなく、竜巻や噴火、土砂崩れなど様々な自然災害から子供たちの安全を守り、地域住民の避難所としての機能も発揮できるよう取組を進めている。本年4月に発生した熊本地震においては、学校施設の被害状況の収集を行ったほか、被災地から得られた教訓を有識者とともに緊急提言としてとりまとめるプロジェクトに携わった。このほか、これまでに学校施設内での転落事故や衝突事故などの事故防止対策や、学校施設の老朽化対策の一貫として長寿命化改修等を推進するための制度構築に従事。神戸大学大学院建築学専攻修了。

 

ムスタファ・チョラコール
トルコ共和国 教育省 次官補

 

金田 恵子
世界銀行 防災グローバル・ファシリティ 東京防災ハブ 防災専門官

防災専門官として、2014年より世界銀行東京防災ハブに勤務。「日本-世界銀行防災共同プログラム」を通し、国・地域別の技術支援プログラム、および日本の防災の知見を活用し開発途上国と共有するプログラムの形成や管理を行う。途上国において防災を主流化するため、世界銀行の地域ごとの防災チームとともに、多様なセクターとの連携案件形成を支援する。過去の災害復興事業従事の経験を踏まえ、2015年に壊滅的被害を被ったネパールやバヌアツにおける被害調査、ならびに世界銀行による復興プロジェクト形成に従事。世界銀行入行前は、国連開発計画事務局 (UNDP) および国連人間居住計画 (UN-Habitat) インドネシア事務所、国連難民高等弁務官事務所 (UNHCR) 南スーダン事務所、国際協力機構 (JICA) モンゴル事務所にて、約10年間にわたり、住宅再建を中心とした自然災害・紛争後の復興事業、事前対策、気候変動適応、都市開発などに携わる。京都工芸繊維大学大学院修士課程修了、工学修士。現在、京都大学大学院 工学研究科 建築学専攻にて博士後期課程履修中。

 

(講演順、敬称略)

セミナー概要

セミナー報告

 


イベント詳細
  • 日時: 2016年11月2日 (水) 午後4時30分~午後6時
  • 場所: 世界銀行東京事務所 東京都千代田区内幸町2-2-2 富国生命ビル10階
  • 言語: 英語・日本語 (同時通訳付)
  • お問合せ: 世界銀行東京防災ハブ TEL: 03-3597-1320
  • drmhubtokyo@worldbank.org

日本-世界銀行防災共同プログラム







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