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プレスリリース 2021年5月11日

インフォーマル性の広がりが途上国における新型コロナウイルス感染症からの回復の足かせに

経済活動の3分の1はインフォーマル・セクターとの調査結果

ワシントン、2021年5月11日—世界銀行はこのほど、報告書「インフォーマル性が落とす長い影:課題と政策」を発表し、新興国・途上国(EMDEs)では労働者と企業の内、際立って多くがインフォーマル・セクターに属しており、政府がインフォーマル・セクターの抱える課題の解決に向けて包括的な一連の政策を導入しない限り、新型コロナウイルス感染症からの復興が妨げられる可能性が高いと指摘している。

同報告書は、世界銀行がインフォーマル性の現状と、環境に配慮した強靭で包摂的な開発を長期的に支える経済の回復にもたらす影響を総合的に分析した初の試みである。同報告書は、EMDEsでは全労働者の70%以上がインフォーマル・セクターでの労働に従事し、その規模はGDPの3分の1近くを占めるとしている。こうした国々では、この高いインフィーマル性のために、危機の際に経済を下支えする財源を確保し、効果的なマクロ経済政策を実行すると共に、長期的な開発に不可欠な人的資本を構築することが困難になっている。

広範なインフォーマル性を抱える国では、他の国々と比較した場合、深刻な景気後退への対策とその後の回復支援において政府が投入できる資金が限られている。平均を上回るインフォーマル経済を抱えるEMDEsの歳入は、対GDP比で約20%と、他のEMDEsの水準を5~12%ポイント下回っており、歳出もまた、対GDP比で実に10%ポイント低かった。さらに、広範なインフォーマル性と連動して金融システムの整備が遅れているために、中央銀行が十分に経済を支えることができていない。

「インフォーマル労働者の大半は、スキルを持たない女性と若者が占めている。新型コロナウイルス感染症危機において、彼らは、失業や収入の大幅な減少といった問題に直面しても社会的セーフティネットに頼ることができず、取り残されることが多い。」と、世界銀行のマリ・パンゲストゥ開発政策・パートナーシップ担当専務理事は指摘する。「本報告書は、研究が進んでいない分野での知識不足を補うと共に、政策担当者が改めてインフォーマル性の問題に取り組めるよう支援するもので、今後、環境に配慮した強靭で包摂的な開発を目指すに当たり極めて重要な意味を持つ。」

インフォーマル性の度合いが高い国では、新型コロナウイルス感染症の流行を抑え込み経済成長を促進するための政策措置に大きな効果を期待することはできない。インフォーマル労働者は多くの場合、社会的セーフティネットへのアクセスが限定的であるがゆえに、外に出て働かざるを得ず、人との距離を維持することができない。EMDEsでは、インフォーマル企業がサービス部門の72%を占めている。

また、インフォーマル性の広がりは通常、開発成果の乏しさにつながる。インフォーマル・セクターの規模が大きい国では、そうでない国と比べ、国民一人当たり所得が低く、貧困率が高く、所得格差も大きい。さらに、金融市場が整備されておらず、投資が低迷するなど、持続可能な開発目標(SDGs)の達成が一段と困難な状況にある。

EMDEsにおけるインフォーマル・セクターの規模は、国や地域で大きく異なる。例えば対GDP比は、サブサハラ・アフリカ地域が36%と最も高く、中東・北アフリカ地域は22%と最も低い。インフォーマル化が進行した理由は、南アジア地域とサブサハラ・アフリカ地域では主に、人的資本に乏しく、農業部門が大きいことにある。一方、ヨーロッパ・中央アジア地域、ラテンアメリカ・カリブ海地域、中東・北アフリカ地域では、規制面・税制面の負担が大きい上に組織・制度が脆弱であることが大きな要因となっている。

同報告書は、EMDEsがインフォーマル性に対処することは可能だとしている。実際、インフォーマル経済の規模は、依然として大きいものの、新型コロナウィルス感染症の流行前には30年間にわたり縮小傾向にあった。1990~2018年、インフォーマル・セクターの規模は平均すると、対GDP比で約7%ポイント縮小し32%となった。その背景の一つとして政策改革がある。過去30年間に多くのEMDE政府が、フォーマル・セクターへの参画の恩恵拡大、またはそのためのコストの削減に向けた政策改革として、税制改革、金融アクセス拡大のための改革、ガバナンスの強化等を実施した。

同報告書では、EMDEsの政策担当者に向け5つの一般的な提言をしている。第一に、包括的なアプローチが必要である。インフォーマル性は、開発が広範囲にわたり遅れていることの表れであり、単独で対処できるものではない。第二に、国によりインフォーマル化の原因は大きく異なることから、国の状況に応じた措置を採るべきである。第三に、教育、市場、金融へのアクセスを改善しなければならない。これにより、インフォーマル・セクターの労働者と企業の生産性が十分に高まり、フォーマル経済への移行が可能になる。第四に、ガバナンスとビジネス環境の改善を進め、フォーマル・セクターの発展を促す。第五に、税制の簡素化を進めることで、フォーマル・セクターでの事業コストを引き下げると共に、インフォーマル・セクターでの事業負担を重くすべきである。

詳細はウェブサイトwww.worldbank.org/informal-economyをご覧ください。
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プレスリリース番号: News Release 2021/146/EFI

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