BRIEF

日本と国際開発協会(IDA)

2016年10月3日

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国際開発協会(IDA)は世界銀行のグループ機関で、世界の77の最貧国政府(うち39カ国はアフリカ諸国)に対する資金援助を行っています。1960年に設立されたIDAは、貧困削減に向けた経済成長促進、生活水準向上のため、インフラ、保健・教育、気候変動・防災等の分野で、超長期・低利の融資及び贈与を行っており、融資期間も最長 40 年(内、据置 10 年)に渡ります。

日本は累積出資額ではアメリカに次ぐ第2位のドナー国であり、同時に政策面においても、例えば、インフラ、保健、防災分野の支援強化をリードするなど、IDAの進展に大きく貢献しています。

IDA第18次増資交渉

IDA の活動は、 主として加盟国からの出資金で賄われてきています。3年に一度、必要資金の補充のため増資を実施しており、2016年3月から2016年12月にかけてIDAの第18次増資交渉(IDA18)が行われています。資金計画は3年単位で立てられ、2017年度から2019年度の期間における支援方針では、全体テーマに「成長、強靭性(レジリエンス)および機会への投資」、特別テーマに (1) 気候変動、(2) ジェンダー、(3) 脆弱性・紛争・暴力、(4) 雇用ならびに経済的変革、(5) ガバナンスと組織・制度の構築、を選定し、自然災害やパンデミック等の危機に対する予防、備え、対応の強化など、日本の優先課題とも方向性を共にした支援が行われる予定です。また、IDAを通じて日本の知見を途上国の貧困削減と持続的な開発に役立てるため、日本人職員の採用に力を入れています。

世銀が掲げる「貧困の撲滅」と「繁栄の共有」という2大目標と持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた最貧国の活動を支援するため、IDAは新たな資金源として、1960年の設立以来初となる債券市場からの資金調達をドナー国に提案し、2016年9月、格付け会社であるムーディーズ社とスタンダード&プアーズ社により、同機関初の格付けとしてAaa/AAAを付与されました。この格付け取得によりIDAは、支援の原資を資本市場からも調達できるようになります。

 

IDAの取組例


テーマ

インフラ

世界全人口の約2割を占める約13億人がいまだ電力へのアクセスがなく、約7億人以上の人々が清潔な水を入手できず、約25億人に適切な公衆衛生インフラが用意されていません。エネルギー、水、交通、都市化等への対応は喫緊の課題です。2011~15年度、IDAはインフラ分野に全体金額の年間平均で38%をコミットしています。

インフラ分野での取り組み

ミャンマー:民政化後のミャンマーにおいて、地方コミュニティの人々自身が、道路、水道、学校等、自らに必要なインフラを決定し、整備する取り組みを支援。本事業は、日本政府が世銀内に設置している日本社会開発基金(JSDF)も共同支援。

ベトナム:2016年4月、約25万人を洪水から保護するため農村部の道路と橋の建設・整備プロジェクトを承認。

 

グローバル・ヘルス

IDAは、 最貧国においてもすべての人々が保健、教育、社会的保護といった基礎的サービスにアクセス可能とすること、そして政府機関のガバナンス構築に向けた努力を支援しています。特に、若年層の雇用、緊急援助への支援等を優先としています。

グローバル・ヘルス分野での取り組み

エボラ危機:ギニア、リベリア、シエラレオネを支援するため、医薬品や感染防止機具一式の供与、接触者追跡、災害手当・死亡給付金、看護従事者へのトレーニング、戸別の公衆衛生教育等に資金を提供。

エチオピア:2012~14年、妊婦健診を受けた妊婦の割合が43%から58.5%に増加、助産専門家の立合いの下で行われた出産の割合が50%以上増加。

ネパール:2010~15年、保健医療機関で出産前医療を受診した女性の数が約260万人から約600万人に増加。同期間に予防注射を接種した子供の数が約58万人から約130万人に増加。

ベトナム:貧困層の健康保険普及率が、中北部(人口1,000万人)で2010年の10%から2015年の92%に、北東部および赤河デルタ地帯(人口1,500万人)で3.5%から99%に増加。

 

気候変動と防災

2011~15年、IDAは、気候変動適応策として年間平均21億ドル、また気候変動影響緩和策として年間平均22億ドルを支援しています。「防災の主流化」は世界銀行グループにとって重要な課題であり、IDAにおいても、気候変動リスクに対し最も脆弱な途上国が、自然災害リスクに対して強靭な社会を構築できるように各国の取り組みを支援しています。

気候変動と防災分野での取り組み

ネパール:2016年8月、大地震後の道路や橋の再建計画支援のため、5,500万ドルの融資を承認。将来起こりうる災害に十分耐える強度の道路や橋が建設される予定。

太平洋島嶼国:2007年以降、日本等がパイロット案件として支援してきた太平洋自然災害リスク保険(PCRAFI)に対し、太平洋地域の災害リスク管理強化支援の一環として、IDAが2015~18年の太平洋島嶼国(バヌアツ、サモア、マーシャル諸島、トンガ)の保険料を支援。

エチオピア:2016年、エチオピアで続く深刻な干ばつへの対応に向け、IDAを通じて1億ドルの支援を承認。干ばつの被害を受けた800万人の貧困層に現金や食糧が支給される他、災害に対する強靭性の向上を通じた貧困削減が目的。

 


地域

世界の貧困の約95%がサブサハラ・アフリカ、南アジア、東アジア・大洋州の3地域に集中しており、IDAの支援は約95%がアジア、アフリカに対して行われています。IDAは支援終了国(卒業国)が持続的に成長を続け、開発効果が損なわれ貧困国に逆戻りしないよう幅広い取り組みを支援しており、これまで約30カ国がIDAを卒業しています。

 

アジア

IDAはアジア(東アジア、南アジア)地域の23カ国(東アジア地域:小島嶼国8カ国を含む15カ国、南アジア地域:8カ国)に対して支援を行っています。2015年度のIDA承認額は、東アジア地域に対して18億ドル、南アジア地域に対して58億ドルです。

アジア地域における取り組み

モンゴル:2007~11年、家庭で必要な電力を供給できる携行可能な住宅用太陽光発電システムが手頃な価格で導入され、50万人の遊牧民の生活が大きく改善。同時に1.1万トン以上の二酸化炭素の大気放出を防止。

 ラオス:2013~15年、森林管理協議会(FSC)が設定する森林の環境保全に配慮、地域社会に貢献する森林の面積が806平方キロから約1,300平方キロに拡大。同期間に、スマートフォンを用いた違法伐採等の通報ツールが開発されたことで、違反件数が744件から390件に減少。

バングラデシュ:2014年、子供たちの栄養状態の改善に取り組むプロジェクトを開始。最貧困層の母親約60万人に条件付現金給付を行い、5歳児未満の子供の栄養状態と知能発達を測定。

 

アフリカ

IDAはアフリカで、電気の通っていない地域に住む数百万人へのクリーン・エネルギーの提供、そして、自然災害や、エボラ出血熱のような感染症が発生した国々への緊急援助から復興支援に至るまで、幅広い支援を行っています。

IDAは、2005~15年度に、サブサハラ・アフリカ地域で1,065件のプロジェクトに対して、782億ドルを提供しました。IDAの支援を受けたサブサハラ・アフリカ諸国では、1日1.90ドル未満で生活する最貧困層の割合は2012年の43%から2015年は35%に減少しました。

アフリカにおける取り組み

南スーダン:2013~16年、診療所、学校、井戸の建設など、29件のコミュニティ・インフラ・プロジェクトの恩恵を約8万人が享受。

シエラレオネ:2008~13年、密漁を取り締まり、地場の小規模漁業者専用の水域を設定するプログラムにより、漁業セクターからの正規収入が、90万ドルから380万ドルへと、5年間で322%拡大。

「西アフリカ農業生産性プログラム(WAAPP)」を通じて、コートジボワールの収穫量が大幅に増えるとともに、農民約80万人の収入が22%向上。受益者のほぼ半数が女性。