BRIEF

地球環境ファシリティ(GEF)

2024年9月5日



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持続可能な未来への投資

地地球環境ファシリティ(GEF:Global Environment Facility)は、環境保全への投資を通じて持続可能な発展を支援しています。

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地球環境ファシリティ(GEF)について

GEFは開発途上国および市場経済移行国が地球規模の環境課題に対応するためのプロジェクトの実施にあたり追加的に必要な費用を提供する機関です。

GEFは生物多様性条約、気候変動枠組条約、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPS条約:Stockholm Convention on Persistent Organic Pollutants)、砂漠化対処条約、水銀に関する水俣条約、国家管轄権外区域における海洋生物多様性(BBNJ:Biological Diversity of Areas Beyond National Jurisdiction)協定 の6つの国際環境条約の資金メカニズムとして活動しています。

GEFはGEF信託基金のほか、後発開発途上国基金 (LDCF:Least Developed Countries Fund) 、特別気候変動基金 (SCCF:Special Climate Change Fund)、透明性のための能力開発イニシアティブ(Capacity-building Initiative for Transparency)基金、名古屋議定書基金、さらに2023年8月に新たに発足した生物多様性枠組基金 (GBFF:Global Biodiversity Framework Fund)と併せて、国際条約の目標達成をサポートする環境基金を運営しています。

日本を含む先進国はGEFへの拠出を通じて、途上国支援に貢献しています。GEF-8(第8次増資期間:2022年7月から2026年6月)ではガバナンスや政策、イノベーションなどへの投資を通じて構造的変革を支援します。また、政策の一貫性は GEF-8 の中心テーマです。日本はこれまでに、累積でアメリカに次ぐ第二の拠出国として、GEFを通して国際環境支援を行ってきました。GEF-7(第7次増資期間:2018年7月から2022年6月)にはトップドナーとしてGEFへの拠出を行いました。

地球環境に投資する意義

地球を循環する大気や水に国境はありません。また、私たちが毎日利用している電気製品、エネルギー、紙や木材、衣料をはじめとした多くの消費財は、世界各国の様々な自然資源をもとに生産されています。世界の人口が2022年時点の80億人から2050年には97億人へと増加していくなか、自然資源の持続的な活用は、日本の経済や安全保障だけではなく、世界全体にとって極めて重要です。GEFは、環境保全への投資を通じて持続可能な地球環境と経済社会へとシフトしていくための支援を行っています。GEFの各国における支援は持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の取り組みにも貢献しています。

気候変動は紛れもなく、世界の人々にさらなる危機をもたらし、生物多様性から土地劣化、水資源、有害化学物質の利用・拡散に直接的・間接的な影響を及ぼしています。このため、環境問題への対処には総体的な取組みと構造的な変革を図る視点が肝要です。

GEFの実績:GEFは、1991年の設立以来、170ヵ国で5,700件以上のプロジェクトを実施し、247億ドル(約3兆8,148億円)の資金を投資してきました。

GEFの投資効果:GEFの科学的根拠に基づいた革新的な投資は、他国や国際機関、民間企業などの投資を引き出し、約5.6倍のレバレッジ効果があります。


" 私たちはグローバル・コモンズの一員です。私たちが呼吸する空気や飲み水に国境はありません。私たちは、現在と未来の世代のために環境を健全に保つ責任を共有しています。日本はGEFの強力なサポーターであり続けてきました。日本との長年にわたるパートナーシップ、信頼と日本のリーダーシップに感謝しています。 "
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カルロス・マニュエル・ロドリゲス

GEF CEO・議長

GEFが取組む課題



生物多様性

2022年12月に開催された生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)では、2010年の第10回締約国会議で決議された「愛知目標」に次ぐ2030年までの新たな世界目標となる「昆明・モントリオール生物多様性枠組(KMGBF:Kunming-Montreal Global Biodiversity Framework)」が採択されました。KMGBFでは23の目標が設定され、GEFはその目標達成のための主要な原動力となっています。例えば、そのうちの第3目標においては2030年までに陸・海それぞれ少なくとも30%を保護地域および保護地域以外で生物多様性保全に資する地域により保全すること(「30x30」)を目指すことが提唱されています。

GEFはまた、COP15ガイダンスに基づき新たな信託基金を設立し、途上国におけるKMGBFの実施を支援する重要な役割を果たしています。2023年8月にバンクーバーで開催されたGEF第7回総会で生物多様性枠組基金(GBFF) の設立が承認されました。2024年2月の第1回GBFF理事会までに日本を含む5か国 が早期の拠出を表明し、GBFFの運営が始まりました。日本のGBFFへの拠出は、ドバイで開催された気候変動枠組み条約第28回締約国会議で発表されました。GEFのカルロス・マニュエル・ロドリゲスCEO兼議長は、「私たちは、日本政府の長期的なパートナーシップ、信頼、そして自然にとってプラスとなる未来を支援するリーダーシップに感謝しています」と述べ、この誓約を歓迎しました。

GEF-8での生物多様性分野への投資はKMGBFの実施を支援します。GEF-8の生物多様性分野の戦略は生物多様性条約および覚書、またその他の生物多様性に関連する多国間の取り決めに対応しています。GEF-8での生物多様性分野の目標は世界的に重要な生物多様性が保全され、持続的に利用され、再生されることです。

GEF-8における生物多様性分野では(1) 自然環境の保全、持続的な利用、および自然再生、(2)カルタヘナ議定書と名古屋議定書 の実施、そして(3)生物多様性のための国内資金動員の3つを主な目標として支援しています。このほか、GEFでは各国の生物多様性国家戦略及び行動計画策定や生物多様性分野での資金動員計画の支援も行っています。GBFFは既存のGEF信託基金による支援を補完し、資金源の拡充により、途上国におけるより迅速なKMGBF目標達成を支援します。

気候変動

気候変動問題に対応するためには、「共通だが差異のある責任」の原則に基づき、全ての国々で温室効果ガス排出量の抑制に取り組む必要があります。また、海面の上昇、干ばつ、台風、深刻化する自然災害など気候変動による影響は我々の身近にも迫りつつあります。特に影響が顕著で人々の生活や暮らしに直結する途上国、とりわけ対処能力が十分でない後発開発途上国(LDC:Least Developed Countries)や小島嶼開発途上国(SIDS:Small Island Developing States)における気候変動への適応は早急に対応すべき課題です。

GEFは、革新的な低炭素技術の実証・普及・移転や再生可能エネルギーの普及、省エネルギーの実施などの削減対策のほか、途上国における能力開発などを通じて気候変動枠組条約の実施を支援してきました。

適応においては、後発開発途上国基金(LDCF:Least Developed Countries Fund) と特別気候変動基金(SCCF:Special Climate Change Fund)を通して、LDCsやSIDSにおける対策を支援しており、技術革新、技術移転、気候変動適応への民間セクター関与にも重点を置いています。

2015年に採択されたパリ協定を節目に、より野心的で時宜にかなった対策の必要性が広く認識されつつあります。GEFではゼロ・エミッション・モビリティや自然を活用した解決策(NbS:Nature-based solution)といった考えの下で、脱炭素型の交通網の整備を含む持続可能な都市管理、マングローブ林の保全や森林の再生などのシステム介入を通じて気候変動の緩和、適応の双方に貢献しています。

さらに、CBITを通じて途上国における気候変動に係る活動及びサポートの透明性を強化することで、引き続きパリ協定の推進を支援します。

LDCFとSCCFを管理運営するGEFは緑の気候基金(GCF:Green Climate Fund) と緊密に協力しており、5カ国で共同投資計画を推進し、主要な事業を協調支援するとともに途上国からの気候資金のアクセスの強化を計っています。GEFとGCFはこのような基金間の協力関係を土台として、適応基金 (AF:Adaptation Fund)や気候投資基金 (CIF:Climate Investment Fund)など他の多国間気候基金間との協力関係の強化も進めています。

土地劣化

「2050年までに世界の人口は97億人に達し、世界の食糧生産を50%向上させなければ十分な食料を確保することが難しくなるだろう」と言われています。世界の人口が急増するなか、農地や牧草地、森林の持続可能な管理は、食糧の安定供給のためにも重要な課題です。人口増加が顕著なアフリカでは、不適切な農業慣習、政策や技術不足、水資源の不十分な管理などによってすでに食糧不足に直面しています。

GEFは、砂漠化や森林伐採による土地劣化に対応するため、アフリカをはじめ多くの途上国で、持続可能な土地管理を支援しています。また、気候変動などにより年々激化する干ばつの影響を軽減するために、生態系回復の取り組みを支援しています。

GEFでは、2015年10月の国連砂漠化防止条約の第12回締約国会議で合意された「土地劣化の中立性(SDGsターゲット15.3)」という概念の下、環境保全型の農業や牧畜、住民参加型の持続可能な森林管理などを通じた分野横断的な土地利用計画の策定を進めていく中で、水・土壌・生物多様性の保全や、気候変動への適応など、分野横断的に功を奏する包括的な取り組みを進めています。

アフリカのサヘル地域では、GEFは世界銀行などの機関と連携し、アフリカと世界のランドマークプロジェクトとなった「グレート・グリーン・ウォール・イニシアティブ―サハラ砂漠の拡大を防止するために、大陸の東西方向に樹林帯の整備を進める事業―」を支援しています。このイニシアティブへの参加国や国際機関、地域住民はサヘル地域全体へと年々拡大し、土地、食糧の安全保障、雇用機会や人々の生活の安定を取り戻してきています。 GEFとGCFは、グレート・グリーン・ウォールの取り組みへの追加支援を促進するために協力しています。また、GEFは、南部アフリカにおけるグレート・グリーン・ウォール の取り組みも支援するよう要請されています。

化学物質

環境中に残留する化学物質や重金属は、人の健康や生態系にさまざまな影響を及ぼします。メチル水銀を原因物質とする水俣病は、その健康被害の深刻さに加え、一旦環境が汚染されるとその修復には多くの時間と費用を要することを世界に伝えました。GEFでは、このような日本の経験などを踏まえつつ、水銀汚染やポリ塩化ビフェニル(PCB)や有機フッ素化合物(PFAS)など残留性有機汚染物質(POPs)が人の健康や環境に与えるリスクを低減するため、途上国における包括的な取組みを支援しています。

各国の重点分野や優先的に取組むべき事項を特定するにあたっては、各々の国における基礎的な知見やベースとなるインベントリが不可欠です。GEFでは水銀に関する水俣条約を対象とした初期評価 やストックホルム条約における国内実施計画などを通じて、途上国における政策や対応に必要なデータや能力のギャップを埋める活動を支援しています。また、POPS条約に基づくPCBやPFASなどのPOPsの製造と使用の禁止や制限のほか水俣条約の重点分野である水銀の採掘、水銀を使用した製造工程や医療機器などの製造や輸出入の削減に向けた取り組みにも力を入れています。世界的に関心の高いプラスチック廃棄物については、循環型ソリューションの観点から、プラスチック汚染の解決を目指すプロジェクトを推進しています。

また、電子廃棄物、有害性の高い農薬や医薬品を含む懸念化学物質などの分野についても早期の対策を推進しています。

化学物質を適切に管理するには製品の設計・製造から輸送、消費、廃棄に至るまで、製品のライフサイクル全体を俯瞰する視点が肝要です。GEFでは国際的な広がりをもち、環境への影響が大きいとされるファッションなどのサプライチェーンに注目し、パキスタンでの皮革製品の加工における化学物資の利用の削減など、循環型で持続可能なサプライチェーン、いわゆる「ループを閉じる」活動を支援しています。

国際水域

水は、人の生活に必要不可欠な自然資源です。世界中で10億人以上の人々が十分で安全な飲料水へのアクセスがないといわれています。安全な飲料水の不足は、世界の政情の不安定化や紛争を助長することにもつながりかねません。世界の河川のほとんどは国境を越えて流れており、しばしば水利用をめぐる紛争が生じています。GEFは、河川を共有する流域諸国間の協力体制を強化し、持続的な水利用や水質汚染を防止する活動を支援しています。また、世界の主要な海洋生態系では、多国間協定に基づく生態系の保全や持続可能な漁業を推進しています。

また、BBNJ協定は 2023 年 6 月に採択され、世界の海洋の約 3 分の 2 を占める公海の保全と持続可能な管理の道を開きました。GEFは、BBNJ協定の資金メカニズムの一部として指定されました。GEF評議会は、BBNJ協定の採択直後から、GEF-8の資金の一部、3,400万ドルをBBNJ協定に関する活動に使用することを承認し、協定批准支援に向けた最初のガイドラインも2024年2月に承認しました。

GEFでは、世界銀行との協力の下、セーシェル共和国で持続可能な海洋と漁業を支援する、世界で最初のブルー・ソブリン債 の発行を支援しています。この革新的な金融メカニズムによって、セーシェル共和国は持続可能な海洋資源の利用に向けて、金融市場において1500万ドルの資金を調達することに成功しました。

また、GEFではメコン川流域の生態系の保全だけでなく、流域に暮らす人々の生計を向上させる取り組みを支援しています。

SIDSにおけるサンゴ礁や海洋保全を進めていくためには、貴重な農地や産業、都市における水利用や排水管理などの包括的な流域管理を進めていく必要があります。GEFではランドスケープとシースケープをつなぐ流域全体で、地域の人々の持続可能な土地や水、海域の利用を進めていくための取り組みを支援しています。BBNJ協定については、開発途上国におけるこの協定の早期批准と、国の管轄権を超えた地域での生物多様性の管理と保全措置を支援する取り組みを強化しています。

分野横断的な取り組み

複雑さと深刻さを増す地球環境問題、GEFは様々な分野での取り組みを活かして、この地球環境問題に対し、分野横断的で費用対効果の高い効果的な対策を実施できるユニークな立場にあります。特に、重要で迅速な対応が必要な課題として、GEFでは持続可能な森林管理、環境保全型農業、都市環境、プラスチック汚染などの取り組みに力を入れています。多様なステークホルダーの参加、総体的な取り組み、革新は、GEFのイニシアティブ全体における基本原則です。

熱帯雨林や乾燥林をはじめとする貴重な森林が、世界中で急速に失われています。森林は人々の生活に欠かせない多くの自然資源を与えてくれます。また、森林は土地の生産を高め、水を供給するだけでなく、生物多様性を守り、気候変動を抑制する緩和策にもなります。GEFは、メコン川流域やアマゾンを含む複数の環境利益が得られる貴重な森林を保全し、生物多様性の保全、気候変動の抑制、人々の社会経済的な便益の強化を支援しています。

途上国では急速に都市化が進み、温室効果ガスの排出や大気汚染、水不足、交通渋滞、廃棄物処理などの問題が生じています。GEFは、低炭素型で気候変動による影響を受けにくく、生態系にも配慮した緑豊かな都市づくりを自治体と協力して推進しています。

また、GEFはグローバルな食糧システムにおける大きな変革を促すために、民間企業や金融機関と連携して、環境破壊の大きな要因となっている大豆やアブラヤシなど商品産物のサプライチェーン管理を強化し、環境に配慮した新しい開発モデルの実施を支援しています。2023年からは、さらに各国での持続可能な農業、牧畜、漁業の支援を通じて、グローバルな政策、金融メカニズム、持続可能なランドスケープレベルの管理の改革を支援します。

さらに、プラスチックの生産、消費、廃棄は海洋、河川、陸域生態系を汚染し、温室効果ガスを排出し、有害化学物質を排出し、世界の人々の健康や経済、社会福祉を脅かしています。GEFは、循環型経済のアプローチに則って、民間企業と協力し、途上国で主要なプラスチックゴミとなっている食品や飲料の包装容器の問題に取り組んでいます。

また、SIDSに焦点を当てたNbSの促進のほか、グリーンな交通インフラを促進するための国家レベル、ランドスケープレベルの持続可能な計画策定の支援、温室効果ガス排出ゼロを進めるための新しい技術の促進、政府やコミュニティが自然資源から持続可能な利益を得ることができるような野生生物やエコシステムの保全などにも力を入れています。

民間企業との協力と新しい投資メカニズム

気候変動や生物多様性の喪失といったの危機的な地球規模の環境問題に対応していくためには、経済活動の中心となっている民間企業や金融機関と協力して取り組みを進めていくことが重要です。GEFでは、地球規模の環境問題に民間企業や金融機関とともに取り組むことによって、その支援をより効果的で影響力の大きなものにしていくことができると考えています。

また、GEFの支援によって地球規模の環境保全の取り組みにより一層の民間投資を促すブレンドファイナンスによって、地球規模の環境保全への民間投資のさらなる拡大を推進しています。

GEFでは、2020年から気候関連財務情報開示タスクフォース12 に続いて、金融業界のリーダーたちが生物多様性の損失に重点を置いた投資を促進していくための指標となる、自然関連財務情報開示タスクフォース (TNFD:Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)の策定及び、企業や金融機関が自然への依存や影響について評価、管理、報告するための枠組みの策定と普及に向けた支援を行っています。TNFDには日本からも多くの金融業界がフォーラムメンバーとしてTNFDに参加しています。また、GEFはブレンドファイナンスの一環として、世界銀行による野生生物保全債の発行を支援しました。この野生生物保全債によって、南アフリカの2つの保護地区に生息するクロサイの保全と繁殖が支援されます。

 

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