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特集2017年2月3日

蝶名林俊(ちょうなばやし しゅん) 気候変動クロス・カッティング・ソリューション・エリア 研究助言局 ヤング・プロフェッショナル~第46回 世銀スタッフの横顔インタビュー

小さな頃からの環境問題に対する興味や、精力的に活動していた学生時代の話を情熱的に語ってくれた蝶名林さん。「就職って、実力だけじゃない」という言葉も。狭き門であるヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)で採用された理由は専門性、経験、バックグラウンドなど「実力以外」のところも大きかったのでは、と語る彼が世界銀行を選んだ理由とは?

Shun Chonabayashi

The World Bank

2015年にヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)(注1)で入行。気候政策チームにて主に研究や技術支援を通して、気候変動対策やレジリエンス強化に取り組んでいる。特にアフリカにおいて世帯調査を行い、気候変動に対するレジリエンスを世帯単位で測定する研究をリード。また、南アジアにおける気候変動の貧困への影響を予測する技術支援にも従事。環境・天然資源グローバル・プラクティスでは、環境や天然資源の貧困との関連性を、ビッグデータを使い地理空間的また計量経済的に分析する業務に従事。世界銀行入行前は、イェール大学森林環境学部の研究員として、気候変動がもたらすハリケーン被害の世界的影響の研究に従事。神奈川県出身。創価大学経済学部卒業後、イェール大学大学院国際開発経済学修士課程を経て、コーネル大学大学院天然資源学博士課程(応用経済学専攻)在籍中。

「ごみの分別」を提案した中学生時代

小学校高学年の時、「地球からのSOS」という題で、工場から排気ガスが出ているところを図工の時間に工作したことを覚えています。その時から環境問題に興味があったんでしょうね。

中学・高校では美化委員会に所属し、委員長を務めました。校内でのごみの分別の実施を提案、導入した際、実際に分別が行われるようになるまで時間がかかり、他の生徒から協力を得ることの難しさを痛感しました。時には放課後、用務員の方々と一緒に、ごみ収集所で分別されていないごみを分別することもありました。分別は地味な作業ですが、様々な環境問題の改善につながる大切な取り組みです。この活動を機に、人があまり意識していないけれども重要な問題に関心を持ち、行動を起こしていかなければ、という気持ちが芽生えたと思います。

気候変動の重要さに気づいた大学時代

大学では経済学を学びました。経済学は人間主義に基づいた、困っている人々の幸福のための学問でなければいけない、という大学の創立者の思想に感銘を受け、それが私の学問の原点となりました。経済学というと、利益を最大化するものというか、それがあるからこそ貧富の差が生まれる、といった印象がありますよね。でもそうではなく、人のための経済学とはどんなものだろう?と考えた結果、環境問題が生じるメカニズムを明らかにし、それらを解決するための対策を考える環境経済学に興味を持ったんです。

The World Bank
環境経済学を学問として勉強する他に、力を入れたのが2つの学生団体での活動です。ひとつは「創価大学国際連合研究会」。数か月にわたり、5人のグループでクルド人難民の研究に取り組み、日本国際連合学生連盟主催のセミナーで発表したり、国連でのブリーフィングに参加し、開発や環境について現場の声を聞くためにニューヨーク、ボストンへの研修団をまとめたりといった活動を行いました。もうひとつは「日本国際連合学生連盟」。2年間理事を務め、国際問題について討議するセミナーの年3回の開催に携わりました。AIDS、防災などの国際会議に参加し、学生の立場から様々な国際問題の意識啓発活動に取り組む中で、AIDSや災害などにも気候変動が影響を及ぼすことを学びました。

また、アメリカの大学院に進むことを考えていたので、4年生のときにはバージニア工科大学に留学し、環境分野での専門性と英語のブラッシュアップに励みました。

持続可能な社会を目指す取り組みを行っている団体である「環境・持続社会」研究センターでも、短期間ですがインターンを経験しました。炭素税の仕組みを学んだり、地球温暖化についてのワークショップの開催を経験したりしました。学問、留学、インターンシップ、学生団体でのさまざまな経験を通して、将来は自分も気候変動問題の解決に貢献したい、という気持ちが強くなりました。

学問の師との出会い、そして世界銀行へ

大学院に行く前に、ハーバードに進んだ大学の先輩に会って話を聞いたんです。アメリカには環境学というものがあって、日本よりも体系的に勉強できると聞き、いくつかそういった大学院に応募して合格もいただいたのですが、結局は国際開発経済学があるイェール大学院を選びました。経済学という自分の専門性を継続できたことは、後になって考えるとよかったと思います。

ここには気候変動経済学で有名なロバート・メンデルソン教授がいらっしゃったので、リサーチアシスタントをさせてくださいとお願いしたところ、2年間共同研究をする機会に恵まれました。世銀のコンサルタントという立場で研究を行うことができたため、世銀の仕事がどんなものかを体験できました。国連と世銀の共同報告書『天災と人災─ 惨事を防ぐ効果的な予防策の経済学』や世銀の報告書『低炭素開発:ラテンアメリカの気候変動対策(仮題)』に特に深く関わりました。自分にとっての学問の師匠に出会うことができたのは、本当に幸せでした。

修士過程在学中に就職という選択肢も考えて、コンサルティング会社などに応募して面接を受けてみたのですが、どうもピンと来なかったんです。それよりももっと自分の専門性を高め、博士号を持っていた方がいいと思い、コーネル大学の博士課程に入りました。在籍中に世銀のYPPを知り、選考に時間がかかるということで早めに応募してみたんです。世銀なら、研究のための研究ではなく、実際に社会に貢献できる研究ができそうだというところに魅力を感じました。

一流の専門家がたくさんいる世界銀行

YPPは競争率が高いと聞いていたので、決まったときは驚きました。ただ、おそらく自分のやっている分野や専門性、実際に世銀で仕事をしていた経験、気候変動を経済学の視点から見ている、というバックグラウンドなどがうまくあてはまった結果だと思います。

現在の主な仕事は、1)気候変動に対するレジリエンス(弾力性、回復力)の世帯単位での測定、強化、2)南アジア地域で、気候変動が貧困に与える影響を20〜30年単位で予測し、報告書を作成、3)貧困と環境がどのように関連しているかについて、ビッグデータを使った分析、の3つを担当しています。3つ目の仕事は、大気汚染や森林など、さまざまな指標を重ねていき、地理空間的にホットスポットを特定します。こちらはデータベースと報告書になる予定です。

The World Bank
ウガンダの各省庁と戦略的気候レジリエンス計画を協議する様子(2015年撮影)
世銀は大きな組織なので、今はいろいろなプロジェクトに慣れるのが課題です。仕事のペースも速いのでついていくのに必死です。国の政策に直接影響を与えることができる仕事ということが醍醐味でしょうか。もちろん、その分責任も大きいです。

また、セクター、地域ごとにあらゆる専門家がいて、一流の専門家と一緒に仕事ができるのも世銀の素晴らしいところだと実感しています。

今の自分はベストを尽くせているか?

これからのキャリアについてはまだ模索中ですが、まずは実務経験を積みたいですね。現在は研究的な仕事が多いので、上司や人事にも「このまま残りたいならもっと現場に近い仕事を経験するように」と言われています。

The World Bank
現在の仕事では、出張は比較的に少ないです。イェール大学のときに出会った妻はプロのバイオリニストで、息子も一人いるので、仕事以外の時間の多くは子育てと家族のために使っています。たまに週末家族でクラシック音楽のコンサートを聴きにいったりもしています。

これから世銀を目指す若い人たちに、私の人生の師匠から頂いた大切にしている言葉を贈らせてください。「何事であれ、私はベストを尽くす!」。今の自分はベストを尽くせているか?と、折に触れて自問自答してきた言葉です。世銀はひとつの組織でしかありません。自分は何をすることが好きか?どのように社会貢献ができるか?どういう職場があるのか?世銀だけで考えるのではなく、自分を掘り下げて、どのように自分は楽しく価値ある仕事ができるのかを考えてみてください。

(注1) 世界銀行ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP):世界銀行の若手専門職員養成プログラム。応募資格は、9月の入行時に32歳以下であること。開発関連技術分野で修士または同等以上の学歴、3年の実務経験または博士号レベルの学歴があること。語学力については、高度な英語力が必要で、さらにアラビア語、中国語、フランス語、ロシア語、スペイン語などが堪能であれば有利。
参考: https://www.worldbank.org/ja/country/japan/brief/careers

 

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