会議報告書 (PDF、英語)
世界銀行はこのたび日本政府の協力のもと、第2回質の質の高いインフラ投資(QII)会議を開催しました。会議には政府や国際機関、民間セクターや学術機関から150名以上の参加がありました。
インフラは経済成長や繁栄の要素であるだけでなく、経済活動を構築し、国や地域、都市の優位性を生み出します。インフラ投資を正しく行えば、貿易、資本や労働力、生産性、可動性の向上を促し、経済成長をもたらします。また、このような利益を得るためには、地域性や行政上の連携および企画が重要になります。
昨年1月に開催された第一回QII会議では、経済の効率性、安全性、環境や社会の持続性、経済や社会への貢献、自然災害に対する強靭性など、QIIの定義や価値について議論が成されました。その議論を受けて、今会議では、QIIを概念から実施のレベルに移すべく、インフラプロジェクトが抱える財政メカニズム、調達フレームワーク、都市の強靭性、社会包摂性及び行政機関・区域を超えたQIIへの課題・取り組みについて話し合われました。
「本会議の主要目的は、QIIの概念を詳細に検討していくことだ。QIIは、インフラの良し悪しを区別するものではない。QIIの選択肢には幅があるもので、質の高いインフラは一つのプロジェクトに着目しても達成することはできない。むしろ関わりのあるインフラプロジェクト全体を総合的に検討する必要がある。」とエデ・ホルヘ・イジャズ・バスケス世界銀行社会・都市・農村開発と強靭性(GSURR)グローバルプラクティス、シニアディレクターが強調しました。
本会議では、QIIにおける国土開発と維持管理についても焦点があてられました。日本は、質の高いインフラ開発を遂げた経験から、これらの分野においても数多くの知見を有しており、需要の高まる途上国への知見共有が期待されてます。
麦島健志国土交通省大臣官房審議官は、国家の開発には一つ一つ段階があり、それぞれの段階には特有の必須要件があることに言及。日本は、社会経済の背景にかなった空間戦略を構築し、官民の連携が日本のインフラ開発の成功の鍵となったことを説明しました。また、日本はQIIプロジェクトの実施と維持の重要性を十分に認識していたことも挙げられました。前川宏一東京大学工学系研究科・社会基盤学専攻教授は、インフラの持続性の重要性をとりあげ、前倒しの取組みがインフラ維持費の大幅な軽減につながると説明しました。
本会議では、QIIイニシアチブの連携を促進するため、国際開発金融機関や政府開発援助(ODA)機関などの対話も行われました。それぞれの機関から課題と取組みが紹介され、二国間及び多国間機関の緊密な連携の重要性が確認されました。
武内良樹財務省国際局局長は、「日本は、戦後急激なインフラ構築とその維持・管理を行ってきた経験を有している。このような経験から、ただ単にインフラを数多く構築するのではなく、質の確保も重要と考える。」と質の高いインフラ開発の重要性を強調しました。
革新的な財政メカニズムや調達フレームワークについても積極的に議論が交わされ、公的金融、官民パートナーシップ、協調融資を使った都市インフラプロジェクトのリスク、課題、取組みなどが共有され、クライアント国が「質」の要素を調達の必要条件や評価の条件に組み込むにあたっての支援の必要性を議論しました。また、QIIにとって重要なのは、市場の理解、効果的なガバナンス、評価、条件の整った調達メカニズムが重要であると話し合われました。
最後に、行政機関・区域を超えたQIIの取組みや社会の包摂性について議論が行われました。行政機関の連携の政府課題が検討され、持続的な人材育成が求められました。QIIはすべての人々に恩恵をもたらすことが必要で、今後の議論には民間セクターの関わりが必要不可欠であることが確認されました。
セッション
プログラム(仮訳)(PDF)
■第1日:2017年2月2日(木)
セッション1 開会の辞 13:30-14:00 (30 minutes) |
開会の辞 当会議の目的と第一回会議からの教訓とスケールアップについて モデレーター:ダニエル・レヴィン 世界銀行グループ シニアオペレーションズ 武内 良樹 財務省 国際局 局長 エデ・イジャズ・バスケス 世界銀行グループ シニアディレクター |
セッション 2 パネル・ディス カッション 14:00-15:00 (60 minutes) |
特別セッション1: 国土開発―インフラ開発の新たな切り口 モデレーター: スミラ・グルヤニ 世界銀行グループ 都市戦略と分析 エデ・イジャズ・バスケス 世界銀行グループ シニアディレクター 麦島 健志 国土交通省 大臣官房審議官 加藤 宏 国際協力機構(JICA) 理事 |
セッション3 パネル・ディス カッション 15:00-15:45 (45 minutes) |
特別セッション2: QIIにおけるインフラ維持管理の重要性 モデレーター: 岡澤 裕子 世界銀行グループ オペレーションズ・オフィサー 前川 宏一 東京大学工学系研究科 · 社会基盤学専攻 教授 森 毅彦 国土交通省 大臣官房参事官(グローバル戦略) |
Coffee Break 15:45-16:00 (15 minutes) | |
セッション4 パネル・ディス カッション 16:00-17:30 (90 minutes) |
貧困削減および包摂的な開発のためのQII モデレーター: フィリップ・カープ 世界銀行グループ 主席知識管理担当官 スミラ・グルヤニ 世界銀行グループ 都市戦略と分析 グローバルリード ポール・クリス 世界銀行グループ 持続可能な都市インフラとサービス バジョール・メフタ 世界銀行グループ 都市管理 グローバルリード カルロス・アルベルト・アルバレス・バレラ メデジン国際協力機構 次長 |
クロージング・ セッション 17:30-17:40 (10 minutes) |
クロージング・セッション ダニエル・レヴィン 世界銀行グループ シニアオペレーションズオフィサー |
レセプション 17:40-19:00 |
Cocktail Hour |
■第2日:2017年2月3日(金)
セッション 5 開会の辞 9:00-9:15 (15 minutes) |
第一日の議論に関して エデ・イジャズ・バスケス 世界銀行グループ シニアディレクター |
セッション 6 パネル・ディス カッション 9:15-10:15 (60 minutes) |
開発パートナーのQIIへの取り組み モデレーター:カルメン・ノナイ 世界銀行グループ プラクティス 山下 直樹 財務省 国際局 開発機関課 課長補佐 小林 秀弥 国際協力機構(JICA) 企画部参事役 木村 知之 アジア開発銀行(ADB) 戦略政策局 次長 アバヨミ・ババロラ アフリカ開発銀行(AfDB) 交通ICT 局第1 課課長 |
セッション7 パネル・ディス カッション 10:15-11:15 (60 minutes) |
QII のための多様なファイナンス モデレーター:笹森 早苗 世界銀行グループ グローバル・インフラストラ ジェイソン・ルー 世界銀行グループ グローバル・インフラストラクチャー 西崎 隆太郎 国際協力銀行(JBIC) インフラ・環境ファイナンス部門 社会 三宅 仁司 三井住友銀行 ストラクチャードファイナンス 営業部 副部長 |
Coffee Break 11:15-11:30 (15 minutes) | |
セッション 8 パネル・ディス カッション 11:30-12:30 (60 minutes) |
QII実現のための調達フレームワーク モデレーター:大森 功一 世界銀行グループ 上級広報担当官 クリストファー・マーク・ブラウン 世界銀行グループ チーフプロキュ マモハン・パルケシュ オペレーションサービスファイナンス管理部門 |
Lunch Break 12:30-13:30 (60 minutes) | |
セッション9 パネル・ディス カッション 13:30-14:30 (60 minutes) |
QIIと防災レジリエンス モデレーター:澁谷 なほ 世界銀行グループ 東京防災ハブ 防災専門官 ヨランタ・クリスピン-ワトソン 世界銀行グループ 主席防災専門官 クレダン・マンドリ-ペロット 世界銀行グループ インフラファイナンス 野田 由美子 PwC アドバイザリー合同会社 パートナー インフラ・PPP |
Coffee Beak 14:30-14:45 (15 minutes) | |
セッション 10 パネル・ディス カッション 14:45-16:15 (90 minutes) |
行政機関・区域を超えたQIIの実現 モデレーター: スミラ・グルヤニ 世界銀行グループ 都市戦略と分析 マッツ・アンダーソン 世界銀行グループ コンサルタント 石垣 和子 国土交通省 総合政策局国際政策課 総括国際交渉官 ヘンリー・マイナ・カマウ 首都圏開発長 交通・インフラ・住宅・都市開発 |
セッション 11 パネル・ディス カッション 16:15-17:15 (60 minutes) |
QIIにおける社会包摂性 モデレーター:カルメン・ノナイ 世界銀行グループ グローバルパートナー キャサリン・C・オファレル 世界銀行グループ リードインフラ専門官 藤田 隆永、康 絢順 株式会社ミライロ デザインコンサルタント |
セッション12 閉会の辞 17:15-17:30 (15 minutes) |
クロージングセッション 石垣 和子 国土交通省 総合政策局国際政策課 総括国際交渉官 |
東京開発ラーニングセンター(TDLC)について 東京開発ラーニングセンター(TDLC)プログラムは、日本政府と世界銀行のパートナーシップ・プログラムです。TDLCは、開発効果を最大化することを目的に、世界銀行と開発途上国が、日本の自治体やパートナー機関と共に、共同研究、知見共有、能力開発を行い、途上国における個別案件において日本とグローバルな専門領域をつなぐ機会を提供しています。本プログラムは、都市計画、都市社会サービス、都市整備、社会開発、防災、地方財政の分野に焦点を当てたグローバルなプログラムであり、質の高いインフラ投資(QII)の主流化は、TDLCの新しいテーマです。 |