世界銀行グループは、2030年までに極度の貧困を撲滅すること、そして世界中で繁栄の共有を促進することを2大目標として掲げ、途上国支援に取り組んでいます。その実現のための最も重要な開発課題としてヘルス分野が挙げられます。
現在、基礎的保健医療サービスにアクセスできない人は4億人に上り、医療費の自己負担が原因で極度の貧困に陥る、又は貧困が一段と深刻化する人は低中所得国の全人口の6%に達しています。こうした中、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成が極めて重要な課題となっており、先般採択された持続可能な開発目標(SDGs)においても目標の一つとして盛り込まれました。世界銀行と日本政府は、日本の国民皆保険制度50周年の機会を捉え、UHCの導入から実施に至る諸段階にある11か国が有する経験について、共同で事例研究を実施するなど、UHCの達成に向けて協力して取り組んでいます。
また、世界銀行グループは、西アフリカ地域におけるエボラ出血熱の流行に対応するため、約16億ドルの資金を動員するなど、国際社会と連携して支援を行っています。世界的な感染症の流行は人間の安全保障への重大な脅威です。世界銀行は現在、将来的な感染症の流行に備えるため、途上国における強固なヘルス・システムの構築を支援すると共に、各国政府やWHO、民間企業等と協働し、より迅速な資金調達や支援チームの動員を可能とする「パンデミック緊急ファシリティ(PEF:Pandemic Emergency Financing Facility)」の設置について検討を行っているところです。
10月24日(土)に開催される東京大学主催シンポジウム「持続的開発目標・ヘルス・人間の安全保障」では、塚越保祐 世界銀行駐日特別代表がパネリストとして登壇し、こうした世界銀行のヘルス分野における取り組みをご紹介します。ぜひご参加ください。
プログラム
基調講演
「持続可能な開発目標における健康と人間の安全保障の意義」武見敬三(参議院議員)
● 第一部:2030年に向けた新たな開発目標と人間の安全保障
尾池厚之(外務省・地球規模課題審議官)
戸田隆夫(国際協力機構・人間開発部長)
近藤哲生(国連開発計画・駐日代表)
塚越保祐(世界銀行グループ・駐日特別代表)
《パネルディスカッション》
● 第二部:健康と人間の安全保障の現場から
「緊急救援と人間の安全保障」 上野梨香(日本赤十字社)
「ハンセン病制圧」 南里隆宏(日本財団、跡見学園女子大学)
「母性保護サービス強化プロジェクト SMPPフェーズ2と人間の安全保障」吉村幸江(国際協力機構)
「保健における公平性への挑戦」 加藤朱明子(日本ユニセフ協会)
「精神医療・ウェルビーイングと人間の安全保障」 井筒節(東京大学)
《パネルディスカッション》
参考:シンポジウム 「持続的開発目標・ヘルス・人間の安全保障」 (PDF)